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3月13日(月)〜3月17日(金)
今週は新宿区上落合・妙正寺川沿いの染色工房 「二葉苑」、四代目当主の小林元文さんを訪ねました。
「落合は神田川と妙正寺川が合流する場所、落ち合う場所で “落合” という地名なんです。蛍の名所として江戸百名所にも数えられた水がきれいな場所で、祖父から聞いた話ですが、この川で仕事していた染め屋は300軒ほどあったそうです。川で糊を洗い落とすんです。違う色や模様を重ねるには、染めたくないところを糊でカバーするんです。染め屋とはいいますが、染めたくないところを、いかに奇麗に残すかという防染の技が染め屋の腕の見せどころなんです。更紗ですと平均で30パターン、多いと100パターン以上の型紙を重ねて染めを繰り返すので、防染が本当に大事なんです。」
「昔は注文の量も多かったので、職人さんが気づかずに川に反物を流してしまうこともあったそうです。すると、下流の染め屋さんが拾って、そのまま持ってくるんじゃなくてキレイに洗って熨してから届けてくれたんです。そういう場合は、この業界のおきまりみたいなもので、一升瓶のお酒をお礼に渡したそうです。そういったわけで、職人さんが上流から流れてくる反物を見つけると “酒が流れてきた” といって喜んだそうです。この川は度々水害を起こしていたんで、高度成長期に護岸されまして、染め屋が使えないようになりました。その後は工房内の大きなプールで反物を洗っています。私は川で反物をさらしている光景は見たことがないんです」
高校時代からイギリスへ留学していた小林さんは、語学を生かして旅行会社へ就職し、しばらくは家業と無縁のサラリーマン生活を送っていたそうです。
旅行会社では、主にトルコやインドに添乗。ある日、インド旅行の添乗を終えて帰国した小林さんが目にしたものは、それまでほとんど気にしたことがなかった江戸更紗の反物。何千キロも離れたインドで千年以上染められてきた柄と、自分の家で染めている図柄がほとんど同じことに気づいたんです。
“うちの仕事はスゴイ” と鳥肌が立つほどの感動を覚え、すぐに家業を継ぐ決心をして会社を辞めたそうです。
とはいえ、国際派の四代目。4年ほど前から、新しい染め製品を開発して、海外の見本市に出品するなどして、江戸更紗や小紋を世界に紹介しています。
アクリルの板に更紗や小紋を挟んだ髪留めやブレスレット、コップやお皿などがあります。海外では、見たことがあるようでいて欧米にはない柄と、なかなか好評のようです。見本市ではプロのバイヤーが詳しい説明を求めてくるそうです。例えば江戸小紋の柄を見て 「このデザインは誰?」 という質問に、「江戸小紋は、武士の正装 裃(かみしも)の模様がルーツになっています。裃は武士のフォーマルウェアなので、現代でも江戸小紋はフォーマルに着られます」 といった具合に、日本の文化もあわせて紹介しているとか。
「二葉苑」 は、新宿区のミニ博物館の指定を受けていまして、工房の見学もできますし、有料で染めの体験をすることもできます。
染色工房 「二葉苑」
電話番号 03−3368−8133
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