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PART2 東京散歩 ラジグライブニング
ONAIR REPORT
10月17日(月)〜10月21日(金)
今週は台東区谷中・鼈甲(べっこう)細工の銘店の「赤塚べっ甲店」のご主人赤塚博(あかつか・ひろし)さんと御子息の顕(あきら)さんにお話をうかがいました。
鼈甲は赤道付近に生息する海亀「タイマイ」の甲羅を使った細工物。1頭分の甲羅が大小合わせて13枚。意外にも大変薄い素材で、CDよりも薄いぐらいのものです。イメージ的に「眼鏡フレームよりは厚みがあるものなんだろう」と思いこんでましたが、実は違う。何枚かの素材を貼り合わせて(生地を積もる、というそうです)、眼鏡フレームやブローチの厚みにしているわけです。
歴史は古く、正倉院にも収められていますが、鼈甲細工が盛んになったのは江戸時代のこと。長崎の出島にオランダ船によってもたらされ、長崎から江戸に入った材料を、江戸の飾り職人が扱うようになり「江戸鼈甲細工」ができました。江戸の鼈甲職人の凄かったのは、「貼り合わせ」という技法を発明したことなんです。
水をつけて熱をかけて万力で圧力をかけると、まったく合わせ目が分からなくなるんです。この技法が確立したのは元禄時代・17世紀末のことです。この発明で、製品の幅が飛躍的に広くなったんです。ちなみに、時代劇などよく見る花魁が髪に飾っている何本もの大きな鼈甲のかんざし。“シャモジ”や“さい箸”のような大きいやつ。あれは、馴染みのお客さんが花魁にプレゼントしたものらしいんですが、、、当時、百両〜二百両のもの。今の価値に換算すると、高級乗用車1台分ぐらい。たいへんな贅沢品だったわけで、幕府は贅沢禁止の御触れを何度も出しました。しかし、女性心理を突いた道具屋さんが考えたんですね「これはタイマイではなく、鼈(スッポン)の甲羅です。御禁制ではありません。」それまでタイマイ細工と呼ばれていたものは、鼈甲(スッポンの甲羅)細工と呼ばれるようになったわけです。
「鼈甲模様」といいますと、焦げ茶色と飴色の模様ですが、「高級」とされるのは、甲羅がおなかの内側に巻き込んでいる部分(縁側)は、薄い飴色がキレイで、とれる量が少ないことから「高級」。最高級品は、量が少ない薄い飴色だけの部分で色むらが出ないように造った鼈甲。(逆に、真っ黒も同じような意味でなかなかの高級品)
材料の「タイマイ」は、10年以上前からワシントン条約によって輸入できなくなっていて、現在は以前輸入したストックを無駄が出ないように大事に使っている状態です。
輸入禁止が決定したときは、多くの職人さんが仕事を変えたそうですが、赤塚さんのところでは、御子息・赤塚顕(あかつか・あきら)さんが技を継いでいます。
顕さんがこの道に入ったのは23才の時。すでにタイマイの輸入が禁止されていて、世間では「鼈甲細工は滅びるだろう」といわれていたんですね。「鼈甲細工が不遇の時代に入ったからこそ、父の技をきちんと継いでおかなければいけないと思った。」顕さんはそうおっしゃいます。そして「素材から自分で造るっていうのは一番面白いですね。生地を何枚も貼りあわせるんで、注文があった色に仕上げるように、どうやって生地をつもるか考えます。元の色をどう生かすか、いい材料をどう生かすか。同じものを造るにしても、材料は毎回違うんです。」
天然の鼈甲には、奥の深い光沢と柔らかい肌触りがあり本当に素敵です。材料自体が貴重品のわりには、オーダーメイドの眼鏡フレームが10万ぐらいから作れるっていうのは、意外と安いような気がします。鼈甲の眼鏡フレームをオーダーメイドしたい方、赤塚さんに相談してみてください。それから、赤塚べっ甲店では「鼈甲細工」の体験教室も開催しています。ブローチやネックレス、携帯ストラップなどを2時間ほどで作ります。費用は3000円からで、1人〜4人まで。電話で希望日時を予約してください。

赤塚べっ甲店
東京都台東区谷中 7-6-7
電話番号 03−3828−7957












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