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2月20日(月)〜2月24日(金)
浅草仲見世の扇専門店・文扇堂四代目扇師・荒井修さんを訪ねました。
文扇堂は、浅草に永く続く店ですが、扇専門店になったのは明治以降のこと。扇専門といっても職人ではなく商店で、先代までは扇を作ったことはなかったとか。荒井修さんは昭和23年生まれ。お父様からは「店を継ぐものが職人の修行などしなくてもいい」と反対されたものの、大学在学中に、扇職人の弟子にはいりました。
「子供の頃から歌舞伎だとか踊りなんかは大好きで育ってますから、家の大人が代わる代わる歌舞伎、踊り、新派、新国劇、女剣劇、美術館、寄席、長唄、清元なんかに連れていってくれたのね。そういったものを見ているうちに、舞台の世界に引き込まれていって、出物や時代によって衣裳や道具のデザインに違いがあることが分かるようになって、素人さんの踊りなんか見てると、扇の使い方が気になっちゃうんですよ。その扇はその踊りに合わないよ、とかいいたくなるわけね。そのまま言っちゃうとお客さん怒らせちゃうよね。でも、イヤなものはイヤ、合わないものは合わないんだね。それなら紙と骨を相手にして、扇作る方がいいよね。それで、うちに品物納めてる職人の親方に弟子入りしたわけ。職人にとっちゃいい迷惑だよね」
その扇職人の親方にしてみれば、「若旦那の道楽で、すぐにねをあげるだろう」と思っていたのかもしれませんね。ところが、生まれたときから扇に囲まれて育っている人って、やっぱり違うんですね。修行を終え独立しますと、みるみるうちに才能が開花しまして「いい扇子を作る新進気鋭の作家がいる」と評判になって、30代の中頃には、名だたる歌舞伎俳優から舞台用の扇子を注文されるようになったんですね。「板東玉三郎」「中村勘三郎」「市川団十郎」などが常連さんです。
荒井さんはこんな事をおっしゃっていました。
「侘び・寂び・粋などを表現するときは “見立て” が大事なんですよ。日本の伝統デザインの原点は “見立て” 。何かを表現するとき、そのものの始まりから終わりま流れているテーマやエピソードをや裏側にあるものまでを理解して、それを分かった上で、比喩表現を上手いこと使うのね。こういうのは、人生で見てきたものが自然と出てくるものだと思います。見つけたり表現したりっていうのは大変だけど、好きなことなら本気になれるし徹底できるんですよね。」
少しでも時間ができると、歌舞伎や踊りなどにも出かけていくそうです。演目や出演者が同じでも、東京の舞台だけでなく全国を飛び回って舞台をみるらしいんです。その理由は、、、、
「私たちは歌舞伎座を基本に扇を作るんです。劇場によって照明の具合が違うでしょ。明るめ、暗め、青っぽい赤っぽい。どこの劇場でも栄えるように箔つけや色つけをしたいよね。役者さんもこだわるし。それから扇ってのは役者のパーツの一つでしかないわけ。衣装もパーツ、床山さんもパーツ、扇子もパーツ。それぞれが出過ぎちゃだめなんだね。バランスっていうのかな、目立ちゃいいってわけじゃないんだよね。そのバランスが上手くいってるか気になるから、いろんなところに出かけて舞台をみるわけ。」
ちなみに、扇子は7世紀頃に伝来した “うちわ” を、折りたためるようにした日本の発明品。あおぐというだけでなく、和歌を書いて贈ったり、花をのせて贈ったりと儀礼や贈答としても用いられてきました。「和」を表現する最高の小道具ですね。女性でも男性でも、出先で扇子をすっと出して涼をとる仕草、品が良くて素敵ですよね。
文扇堂 http://www.asakusa.gr.jp/nakama/bunsendo/01.html/
電話番号 03−3481−0088
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