「日本点字への愛着」

番組制作担当の塚本です。

「こぼれ話」の欄では、先週末以来、1890年11月1日に、石川倉次が考案した点字が正式に採用されることが決まったことをお伝えしてきました。

今日は「点字の父」と言われる石川倉次が眠る墓を守っていこうという視覚障害者の人たちの動きを紹介します。

この運動のメンバーの一人である全日本視覚障害者協議会の藤野喜子さんに、話を聞きました。

藤野さんは先天性の緑内障で、6歳の時にほぼ視力を失い、盲学校で勉強を続けてきました。

そこで初めて点字に触れた藤野さんの印象は、「点字を書くのはすぐに出来るが、指先で点字を読むのは大変だ」というものでした。

「特に大人になってから視力を失った中途失明者が点字をマスターするのは、相当に難しいのではないか。指先が固くなってしまう前に、点字を覚えてしまわないと苦労が多いだろう」という事でした。

音声パソコンやスマホの普及で、最近は音声を通じて情報を得る機会が増えていますが、こうした傾向について藤野さんは、「私も小説などは音声で聞いているが、難しい本を読んだり、勉強したりするときは、点字でないと無理だと思う」と話していました。藤野さんは趣味でピアノを弾きますが、楽譜は点字楽譜を使っています。ただ、その点字楽譜も最近は新たに出版されるものが、少なくなっているという事です。

藤野さんにとって、日本点字の父と言われる石川倉次の存在は、とても大きく、足を向けては寝られないほどの人だということです。

倉次の眠る都営霊園の墓が荒れているという話を聞くにつけ、藤野さんは、「倉次は日本の偉人だと思うので、何とか墓をきれいにして、点字が考案された11月1日には、みんなでお墓参りをしたい」と語っていました。

「点字をなくしてはいけない。個人的に愛着が深い」。藤野さんの思いです。