「視覚障害者にとっての復興とは何か」

番組制作担当の塚本です。

今週は、関西学院大学の金菱ゼミのメンバーがまとめた、1995年の阪神・淡路大震災で被災した視覚障害者への聞き取り調査の内容を紹介してきました。

今日はその最終回として、視覚障害者は震災からの復興を、どのように感じていたのかについて取り上げます。

災害からの復興は、行政主導で行われますが、それは単にその地域を元どおりに戻すということではなく、再開発を伴うものです。

白杖をついて歩きながら、自分たちの住む街のたたずまいを頭に叩き込んで暮らしてきた視覚障害者にとって、町の様相の変化は、否応なくそれまでの記憶を消し、新たな地図を覚えることを余儀なくされます。

学生の聞き取り調査に対して、大震災発生当時すでに全盲だった或る視覚障害者は、「生活面とか町とかは復興しているが、心の傷とかの面を考えたら、復興していない。震災の記憶を話したくない人がいる限りは、復興はない」と話していました。

調査に当たったゼミ学生は、一連の聞き取りを終えて、「今現在の復興は、視覚的に感じ取ることのできる晴眼者にとっての復興であり、視覚障害者にとっての復興には至ってない」と締めくくっています。

ご興味をお持ちの方は、「五感でとらえなおす阪神・淡路大震災の記憶」(関西学院大学出版会)をお読みになってみてはいかがでしょうか。名古屋ライトハウス情報文化センターが点字データを作成中との事です。