「視覚障害者の災害対応力」

番組制作担当の塚本です。

能登半島地震の復旧はまだまだ時間がかかりそうであることは、連日の報道で容易に想像がつきます。

特に災害弱者と言われる高齢者、障害者にとっては、過酷な日々を過ごされているかと思います。

そんなことを考えているときに、「点字毎日という新聞を読んでいましたら、「五感でとらえなおす 阪神・淡路大震災の記憶」(関西学院大学出版会)という本が紹介されていましたので、早速読んでみました。

この本は関西学院大学社会学部の金菱清教授のゼミに所属する13人の学生が、被災者に聞き取り調査し、大震災から29年経って、当時の記憶がどんな形で残っているかについての調査結果をまとめた一冊です。

その中に、
視覚障害者についてまとめた章がありましたので紹介させていただきます。

阪神・淡路大震災は1995年1月17日午前5時46分に起きましたが、当時44歳だった全盲の男性は、その時を振り返って、次のように話しています。

「地震発生前の5時30分に飼い猫が激しく鳴いた。そのことは今でもはっきり覚えている。その後、激しい揺れに襲われ、その時の音は、とにかくすごかった。屋根瓦の落ちる音、ガラスの割れる音。これで私の命は終わったと思った。」

このように語ったこの男性は、指定された避難所が、ふだん選挙の投票で行っていた施設だったので、道に迷うことなく、白杖と足の感覚を頼りに歩いていくことは出来たということです。

また、震災当時37歳だったという全盲の男性は、盲老人ホームで、宿直中に震災を経験しましたが、この男性から聞き取り調査を行った学生は、「聴覚や触覚で起きていることを感じ取っていたはずだが、まるで実際に見たことのように話していた。いかに視覚障害者が、他の五感を使って視力を補っているかがわかる。」と記しています。