「医療と福祉の連携」

番組制作担当の塚本です。

眼科医が患者の困りごとを聞いて、その相談に乗ってくれそうな様々な団体を紹介する一助として、スマートサイトというリーフレットが眼科医からもらえるという話は、昨年9月に放送した「知っていますかロービジョン」の番組の第三回目の放送で、武蔵浦和眼科クリニックの江口万祐子先生が紹介してくださいました。

また、昨年3月の第二回目の放送では、井上眼科病院の若倉雅登先生が、眼科医と看護師とソーシャルワーカーなど様々なスタッフが一緒になって患者に接する「目の相談室」というシステムを作り上げた事を紹介しました。

そしてこうした試みは、徐々にではありますが、他の眼科医院にも広がっているようです。

昨年3月に日本視覚障害者団体連合がまとめた「失明の可能性の告知を受けた人の早期支援体制の構築に向けた調査研究」という報告書に、山梨県甲斐市の田辺眼科の取り組みが紹介されていました。

それによりますと、2012年に或る女性患者から「職場を解雇されたので何とかして欲しい」という相談がありました。

最初、田辺眼科では「それは医師に相談する話ではない」と返答しましたが、その女性は「大病院でも断られたので、ここで断られたら死ぬしかない」と切羽詰まった状況を説明しました。

このため、田辺眼科では、視覚障害者の就労を支援する山梨県内外の施設などに50件のメールを送りましたが、首尾よい返事は無く、唯一、就労支援団体の「タートルの会」から、「仕事ができるはずだ」との回答があり、最終的にこの女性は、障害者手帳を取得し、障害者就労の枠で、山梨県内の一部上場企業に就職できたということです。

このケースがキッカケとなって、眼科医が治療だけではなく、まだできることはあると感じた田辺眼科では、患者の相談室を立ち上げました。

そこでは、医師が患者の困りごとを聞き取って、その内容に応じて、視能訓練士、歩行訓練士、盲学校の教師などに患者を紹介しています。

地方の眼科医でも、工夫次第でまだまだやれることはあるものだと感じた次第です。