「盲目のビデオジャーナリストの半生」

番組制作担当の塚本です。

点字毎日新聞には「図書室」という欄があって、本が推薦図書のような形で紹介されている。
そこで紹介されていた「あきらめるって素晴らしい」という書籍について触れたい。

著者は栃木市に住む石川孝一さん(76歳)。
あんこ製造を家業とする家に生まれ、20歳で網膜色素変性症を発症し、60歳で完全に失明した。
石川さんは、視力が徐々に低下していく中でも精力的に行動し、或る時は市民運動に関わり、また或る時は街おこしのイベントに取り組み、更に自らの信念に従って各種の選挙運動にも身を投じ、現在は盲目のビデオジャーナリストとして、YouTubeに様々な動画をアップしている。

あんこ製造の家業を継いで、社長に就任した後は、事業の拡大と後継者育成のため新工場を建設したが、建設に当たっては、金融機関から「全盲の社長に融資はしない」と断られた事もあった。
しかし、この時は金融機関の姿勢に激しく反発し、行政から「障害を理由に融資を断ってはならない」という通達を出させる事にも成功した。

幾多の困難に直面しながらも、あきらめることなく生き抜いてきたように見える石川孝一さんだが、この本のタイトルは、「あきらめるって素晴らしい」。
一見、矛盾するようだが、石川さんの説明によると、「諦めるという言葉は、本来はネガテイブな言葉ではない」という。
辞典には、「諦めるという言葉の意味は、つまびらかにするとか、色々な観察をまとめて真相をはっきりさせること」と記されているそうだ。
石川さんは、「諦めるということは、現実を受け入れることから始まり、自分は何のために生きているのかを明らかにしていくということで、本来はポジテイブな言葉だ」と記している。

そのように解釈するならば、「あきらめるって素晴らしい」というこの本のタイトルは、網膜色素変性症という難病で失明した石川孝一さんの人生をありのままに表現したものと言えるのではないだろうか。

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