「戦後81年の夏に戦盲歌を聞く」③

「戦後81年の夏に戦盲歌を聞く」③
番組担当の塚本です。8月15日(土)放送のNHKラジオ「視覚障害ナビラジオ」には、盲教育史研究家の岸博美さんも出演されていました。戦盲歌についての感想として、岸さんは「戦場で一瞬にして失明してしまったことへの絶望感と、お国のために役立てなくなってしまったことを嘆く気持ちが表れており、これらは戦時中に失明した人たちに特有の考え方だ」と話しています。また、傷痍軍人という言葉は昭和13年から使われた言葉で、それまでは「廃兵」という言葉が使われていたということです。ただ、この「廃兵」という言葉は、全く役に立たない人という意味に捉えられかねず、変更されたようです。
戦時中は、「失明軍人教育所」という施設があって、そこではしんきゅう、あんまなどを教えるほか、「もう一度、お国の役に立ちなさい」という事も教えられていたようで、これは一般の盲人に対してはなかった教えだったと、岸博美さんは指摘しています。
戦後しばらくの間、街中の繁華街には白い装束の傷痍軍人の人たちが、道路に膝間づいて物乞いをしている姿を、よくみかけたものです。私自身もその光景は今でも覚えています。その人たちには道行く人から心無い言葉が浴びせかけられていました。「視覚障害ナビラジオ」の番組では、昭和19年に戦争で左眼を失明し、その後、シベリア抑留中に右眼も失明した男性の言葉が録音で紹介され、その人は「このまま帰っても親に会わせる顔がない。郷里には帰らなかった。つらい日々を重ねるだけだった」と話していました。あまりにもむごい現実ではないでしょうか。
番組の締めくくりに佐佐木頼綱さんは、「戦盲の短歌は、今を生きる我々への問いでもある。これらの作品を我々がどう受け止めるかだ」と話していました。