「心眼~大東亜戦争失明軍人歌集」②

番組担当の塚本です。

昨日に引き続き、先の戦争で失明した元兵士が、帰国後、入院先の東京第一陸軍病院で、歌人の佐佐木信綱氏らから短歌の指導を受け、創作した短歌集「心眼」について取り上げます。

東京第一陸軍病院では、日中事変勃発当初において、入院中の傷兵のために、修養部を設置し、短歌、俳句、漢詩、書道、絵画、彫刻などの修得を通じて、日本精神の高揚と再起再生の精神力を養おうと努めていた。

このように傷兵のために、精神的な療養の場を設けることは、当時、世界の軍の病院には例のないこととされた。

著名な短歌の作者として知られていた佐佐木信綱氏による短歌の指導は、昭和13年9月以来、隔週で行われていたという。

指導を受けた傷兵の多くは、短歌の初心者であったが、その率直な作風は万葉の防人の作品にも、相通じるものがあったとされている。

また、稚拙な作品であっても、読者に深い感動を与えるものが多かった。傷兵らの多くは、退院してからも短歌を作り続ける者が多かったという。

失明した傷兵は、目の前にあるものを見ることすらできず、一人では出来ないことが多かった中で、短歌を詠むという営みは一人でも出来るだけに、そこに大きな喜びを感じていた。

多くの失明軍人が、短歌によって精神の安らぎを得て、退院していく姿を見て、医師たちも短歌の力が大きいことに驚いていたという。