「戦後80年~視覚障害者と戦争」⑤

番組担当の塚本です。
シリーズ「視覚障害者と戦争」5回目の今日は、昨日に引き続き東京・九段下にある「しょうけい館」(戦傷病者史料館)の図書室に所蔵されている「視覚障害者と戦争」(板東一義編)という書籍をもとに、戦争を体験した視覚障害者の手記を紹介します。
今日紹介するのは、橋本時代さんという女性の手記です。
昭和20年2月、女学校に通っていた橋本さんは、勤労学徒として舞鶴の海軍工廠に派遣され、特攻隊員が使う人間魚雷の部品作りに当たっていました。
昭和20年7月28日、仕事を終えて仲間の女生徒と一緒に海に遊びに行った橋本さんは、真っ赤な夕陽が海に映える光景に見とれました。
その夕陽の光景が、橋本さんにとって、自分の目で見ることの出来た最後の夕焼けとなってしまいます。
翌7月29日、空襲警報が鳴るのとほぼ同時に激しい爆撃に見舞われ、橋本さんは気絶したまま病院に運ばれましたが、その時既に両目の視力は失われていました。
終戦の翌年の2月、橋本さんは両目に義眼を入れる手術を受け、全盲となります。
中途失明のため、どこへも出かけることは出来ず、「目が見えないことは、目に見えない縄で縛られているのと同じだ」と悲嘆にくれる日々を過ごしていたという事です。
昭和22年4月、周囲の反対を押し切って、橋本さんは盲学校に入学します。
盲学校で出会った仲間が、予想外に明るく自由に歩き回っている姿に、橋本さんは心が救われる思いがしたということです。
「盲人は私一人ではない。私にも生きる道はあるのだ。負けるものか」と初めて希望を持つことが出来た橋本さんは夢中で勉強に励み、あんま師の資格をとり、治療院に就職することが出来ました。
その後、橋本さんは耳も聞こえなくなり落ち込みましたが、「まだ何かがある。幸い点字の読み書きも出来る。身体の他のところは健康だ。精一杯生きなければ、これまでの苦労が水の泡だ」と自らを鼓舞し、橋本さんはその後の人生を過ごします。
戦争を振り返って、橋本さんは、「二度と戦争はいやだと誰もが言います。しかし本当に戦争を憎んでいるのは、肉体を傷つけられ、人生を変えさせられた私たち戦傷者ではないでしょうか」という言葉を手記の最後に記しています。「視覚障害者と戦争」というタイトルの書籍から紹介させて頂きました。
尚、東京・九段下にある「しょうけい館」では、8月13日(水)~15日(金)まで、語り部による集中講話会が開催されます。
時間は14時半~15時半までです。
13日と14日には「戦時を生きた視覚障害者」をテーマにした講話が行われます。
詳しくは「しょうけい館」のホームページをご参照下さい。
※「こぼれ話」は、来週はお盆休みで休ませていただきます。
シリーズ「視覚障害者と戦争」5回目の今日は、昨日に引き続き東京・九段下にある「しょうけい館」(戦傷病者史料館)の図書室に所蔵されている「視覚障害者と戦争」(板東一義編)という書籍をもとに、戦争を体験した視覚障害者の手記を紹介します。
今日紹介するのは、橋本時代さんという女性の手記です。
昭和20年2月、女学校に通っていた橋本さんは、勤労学徒として舞鶴の海軍工廠に派遣され、特攻隊員が使う人間魚雷の部品作りに当たっていました。
昭和20年7月28日、仕事を終えて仲間の女生徒と一緒に海に遊びに行った橋本さんは、真っ赤な夕陽が海に映える光景に見とれました。
その夕陽の光景が、橋本さんにとって、自分の目で見ることの出来た最後の夕焼けとなってしまいます。
翌7月29日、空襲警報が鳴るのとほぼ同時に激しい爆撃に見舞われ、橋本さんは気絶したまま病院に運ばれましたが、その時既に両目の視力は失われていました。
終戦の翌年の2月、橋本さんは両目に義眼を入れる手術を受け、全盲となります。
中途失明のため、どこへも出かけることは出来ず、「目が見えないことは、目に見えない縄で縛られているのと同じだ」と悲嘆にくれる日々を過ごしていたという事です。
昭和22年4月、周囲の反対を押し切って、橋本さんは盲学校に入学します。
盲学校で出会った仲間が、予想外に明るく自由に歩き回っている姿に、橋本さんは心が救われる思いがしたということです。
「盲人は私一人ではない。私にも生きる道はあるのだ。負けるものか」と初めて希望を持つことが出来た橋本さんは夢中で勉強に励み、あんま師の資格をとり、治療院に就職することが出来ました。
その後、橋本さんは耳も聞こえなくなり落ち込みましたが、「まだ何かがある。幸い点字の読み書きも出来る。身体の他のところは健康だ。精一杯生きなければ、これまでの苦労が水の泡だ」と自らを鼓舞し、橋本さんはその後の人生を過ごします。
戦争を振り返って、橋本さんは、「二度と戦争はいやだと誰もが言います。しかし本当に戦争を憎んでいるのは、肉体を傷つけられ、人生を変えさせられた私たち戦傷者ではないでしょうか」という言葉を手記の最後に記しています。「視覚障害者と戦争」というタイトルの書籍から紹介させて頂きました。
尚、東京・九段下にある「しょうけい館」では、8月13日(水)~15日(金)まで、語り部による集中講話会が開催されます。
時間は14時半~15時半までです。
13日と14日には「戦時を生きた視覚障害者」をテーマにした講話が行われます。
詳しくは「しょうけい館」のホームページをご参照下さい。
※「こぼれ話」は、来週はお盆休みで休ませていただきます。