「文化放送ディレクター・白石仁司インタビュー①」

番組担当の目黒です。

今回は、文化放送ディレクター・白石仁司(しらいし・ひとし)のインタビューをお届けします。

白石ディレクターが会議室で座っている写真です。

白石ディレクターは、1967年生まれ。1991年に文化放送に入社。人間ドッグ受診をきっかけに、39歳で緑内障が分かり、「ロービジョン」をもっと多くの人に知ってほしいという想いから、2022年9月に特別番組「知っていますか? ロービジョン~0と1の間」の初回を放送しました。以降も番組は回を重ね、2025年3月には第6弾を放送しています。

今回は、そんな白石ディレクターに、私目黒が今改めて聞きたいことについてインタビューしました。



——最近の見え方について、改めて教えてください。

見え方の説明は本当に難しいのですが、最近よく使っている表現は、全体的に霧がかかっている、レースのカーテンみたいなものがかかっている感じです。加えて、視野がどんどん欠けていて、レースのカーテン越しにみえているものの何分の一かが欠けている感じです。

例えばスマホで電話をかけるときに、キーパッドの5に焦点をあてると、456と3だけが見えます。他の数字は見えません。症状が進むにつれて見える数字がどんどん減っています。急に見えなくなるということはなく、少しずつ数字が見えづらくなっていく感じです。

——最近、仕事や日常生活で特に気になっている困りごとを教えてください。

まずは、人が区別できない度合いがどんどん大きくなっていることですね。今はほぼすべての人が「人」としか分からず、誰かが分からないんです。服装、髪型なども、以前は見えていたけど、今はかなりぼんやりしています。目に見える人の特徴がどんどん狭まってきている感じです。もっと言えば、それが人かどうかも分からないことも増えてきました。

そうすると、こちらから用事があるときに、その人が自分の話しかけたい相手で合っているかどうかが判断できずに困ります。仕事だったら、番組の生放送や収録などで、スタジオフロアにたくさん人がいるときに、誰がゲストかが分からなくて困るといった感じですね。日常生活でも、お店に入った時にどの人が店員さんか分からないなど、その人の立場が分からないんです。

あとは、細かい表情も見えないし、話しかけるときに、相手がイヤホンをしているかどうかとかも分からないので、話しかけて反応がないとき、イヤホンをしていて聞こえなかったのか、話しかける相手が違ったのかも分からないです。

それから、信号が見えにくくなりましたね・・・。命に直結することなのですが、最近は勘で渡るしかないかなということも増えてきました。

——困ったときに、周りの人に助けを求めることにハードルを感じる方もいると思います。白石さんは、そのハードルは感じますか?

感じます。僕はなかなか助けを求められないですね・・・。特にロービジョンだと、なんとなくできるけどなんとなくできない、ということが多いし、しかも助けを求めるにしても、なぜそれができないのかをいちいち説明しないといけない煩わしさがあります。

最近はリュックにヘルプマークをつけ始めたので、そのマークを理解している人は、少なくとも僕に何かの不自由があるんだなということは分かってくれるかもしれないのですが、実際は、正直なところ頼みづらいですね。

ただ、お店など、接客のある場所に行った時は、「視覚障害なので〜してもらえませんか」と言えるようになってきました。それは、ハードルはあれど、こちらの注文や要求などを伝えるために、言うしかない、という感じです。



私目黒がこれまで担当したインタビューを通して感じているのは、いかに自分にとっての当たり前が狭いものか、ということです。人は、他者の環世界をそっくりそのまま体験することはできません。けれど、だからと言って、一緒にいられないということではありません。自分がロービジョンである、近くの人がロービジョンである、街中でロービジョンの人に出会った、記事を読んだ、どんなきっかけでも、それぞれがそれぞれの環世界で生きているということにはっとするとき、私はあり得た無数の”もう一人の私”の存在に気づきます。今生きているあなたや私の環世界は、決して当たり前ではなく、偶然なのだということ、ものすごい確率の掛け合わせで今が構成されていることを思います。

それは途方もなく、考えるほど呆然としますが、だからこそ、「あなたは私であり得たかもしれない」「私はあなたであり得たかもしれない」という想像をあきらめないこと、それを練習することが、この社会をいっしょにつくるために大切なのではないかと思います。

次回も引き続き、白石ディレクターのインタビューをお送りいたします。