「風になってください―視覚障害者からのメッセージ」①

番組担当の塚本です。

先日、この欄で全盲の松永信也さんという方が、ご自身のホームページ上のブログをまとめた「あきらめる勇気」という本を紹介しました。

松永さんは他にも著書を出版しており、今回は「風になってください―視覚障害者からのメッセージ」という2004年に出された本を紹介いたします。

松永信也さんは、1957年生まれ。35歳の頃に見えにくさを感じ始め、40歳の頃にはほぼ失明をしました。

この本は、失明から数年後に書き溜めたエッセーをまとめたものです。印象に残った作品の一節を、以下、書き記していきます。

海に落ちる夕日<目がみえなくなって>
見えないこと、それは決して楽しいことではありません
個性と言いたいのですが、そこまでの悟りもありません
やっぱり悲しいことかもしれない
でも、人間同士の交わりの中で、見えないことを忘れていることがあります


飛行機雲
そうそう、結局あの家族は
誰も僕が見えない人間だということを気付かなかった
それはそうだろう
本人の僕が忘れていたんだから


林檎
帰る途中で、いつかのどこかの小学校の児童の質問を思い出した
「見えなくなって よかったことってありますか」
勿論その時は、「君たちは見えなかったら可哀想って思うだろう でも見えても見えなくても 人は生きていれば 悲しいこともあるけど 楽しいこともいっぱいあるよ」って答えた
人間ってやっぱりいいな


目くらさん(バスの中で)
突然、老人の手が僕を引っぱった
「目くらさん こっち(の席)があいてるよ」
暖かなぬくもりのある声だった
「目くらさん」それは差別用語として姿を消しつつある
でも少なくとも、今日の僕には
それは人のぬくもりのする血の流れた言葉だった
冷ややかな無言が進行しているこの社会は、いったいどこへ向かっているのだろう
考えさせられたバスだった


次回も「風になってください―視覚障害者からのメッセージ」の中からご紹介します。