番組担当の目黒です。
今回も前回に引き続き、私がとある詩の朗読会でお知り合いになった、タツミンさんとMark(マーク)さんのインタビューをお届けします。
<タツミンさんのプロフィール>
2000年生まれ、東京都出身。小学校から高校まで盲学校に通い、自立訓練や就労移行支援、訓練学校などを経て、現在は建設資材のディーラー事務として勤務。入社3年目。視覚障害者就労相談人材バンクでボランティアもしている。
<Markさんのプロフィール>
1998年生まれ、東京都出身。小学校から高校まで盲学校に通ったのち、院も含めて8年間一般大学に在籍。途中でロンドン留学も経験。お仕事はマーケティング関係で、入社1年目。株式会社ePARA(イーパラ)の業務委託社員として、通訳やアクセシビリティレビュー(監修)も担当。
お二人は同じ中学校で出会い、友人同士です。左側がMarkさん、右側がタツミンさんです。
——その他、ご活動について教えてください。
タツミンさん:
私がボランティアをしている「視覚障害者就労相談人材バンク」は、全国に会員が150人くらいいて、地域ごとに派生組織もあったりします。会員はほとんどが視覚障害者ですが、晴眼者の方もいらっしゃいます。銀行に勤めているなど、色々なお仕事をされている方がいて、それぞれの就労事例をもとに、お仕事について悩まれている方の相談に乗ったり、講師の方を呼んでオンラインで交流会をしたりしています。普段は個別にオンラインで相談を受けるかたちですが、昨年から「SJB就労相談合同マッチング」というイベントを夏に開催しています。私の友人がこの組織に入っていて、昨年イベントのお手伝いをしていたので、私も参加して、それがきっかけで加入しました。今年は私も「SJB就労相談合同マッチング」でご相談を受ける側になる予定です。今年の開催は2025年7月20日(日)11時から16時で、予約制、場所は支部局がある大阪の、「社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター」です。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください。
「https://shurojinzaibank.com/index.php」
ご予約は、2025年6月10日(火)まで、こちらのURLから受け付けています。
「https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScoyfWpRX75-d5qQv3RIn8ugrbY8RUWWZcQ-gMMfzD0JPJOcQ/viewform」
ぜひ、全国どこからでも、お越しください!
Markさん:
株式会社ePARA(イーパラ)「https://epara.co.jp/」は、eスポーツを通じて、障害のある方々を中心に、社会で活躍する場所づくりや雇用促進をしているスタートアップです。社員は7~8人しかいないのですが、eスポーツチームとつながりがあったり、就労支援事業所をM&Aしていたりしています。自分は4年くらい前からインターンをしていました。初めはアクセシビリティレビューや、実際に大会に出てゲームの実演をしたりしていたのですが、留学を挟んだので、海外向けのSNSの運用も担当することになりました。それから、海外のゲーム関連の会社と商談があった時には、通訳で入ることもさせていただいています。eスポーツについて、ePARAのコアメンバーがよく言っているのは、「ゲームがそれなりにできる人はITスキルがある」ということです。ITスキルがあるってことは、オフィスソフトなどの初期操作もできるよね、という感じで、eスポーツを通じて機械に触り慣れることができます。就労支援については、利用者として入りながらも、当事者や、JR東日本などパートナー企業の人事の方向けに就活のお話をしたりしています。「障害当事者」は社会課題のキーワードだと思うのですが、「スタートアップと視覚障害」や「スタートアップと障害」にコアなところで入っている事例はなかなかないので、その意味ではよい例なのかなと感じています。
それから、去年ePARAをAFP通信に取材していただき、ChatGPTに道案内をしてもらって、駅からePARAのイベント会場まで行けるか、という実験かつインタビューのようなプロジェクトをやりました。記事はこちらから読めます。
「https://epara.jp/activities/240711-03/」
よろしければぜひ!
——視覚障害があることで落ち込んだ時期はありましたか? 今落ち込んているという方に向けて、メッセージはありますか?
タツミンさん:
視覚障害以外の要素も絡んではいたのですが、中学校・高校時代は人間関係に悩んだり、現代の価値観に合わなかったりして、高校で入り直したマッサージのコースを退学した経験があります。就職活動では退学経験について聞かれることも多く、自粛期間も重なって行き先がどこにも決まらないときに、寝られない時期がありました。それでも、今こうしていられるのは、友人のMarkを含め、オンラインで繋がっている人がいたからだと思います。なかなか外に出られない方、人とつながるのが難しい方もいらっしゃると思うのですが、そういう方が一番欲しているものは、希望につながる、この世とあの世の間をつなぐ「その世」の兆しだと思うんです。自分の好きなことや得意なことを把握しておいて、それをアイデンティティとして、何かにつながるきっかけになるような環境があるといいなと思います。私にとってはその一つがラジオでした。ラジオじゃなくてもいいのですが、オンラインでもいいから何かつながれるものを見つけてもらえたらいいなと思います。その意味で、途中で見えなくなった方、外が怖い方、「どうしよう」と思っていらっしゃる方に、この記事が届けば嬉しいです。
Markさん:
自分は学校に行けなかった時期とかはなかったのですが、最近は当たり前ってないと思います。これはアドバイスになるか分からないのですが、まずは開き直った方がいいかなと思っていて。はっきり言ってしまうと、障害者って「分かり合う」のは難しいと思うんです。それよりも、「分かり合えない」からこうしよう、と後ろ向きな状態を受け入れた上で前向きになることが必要かなと思います。とりあえず一回後ろに下がりきってから、「じゃあ」何ができるかな、と考える。自分に何も残っていないってことは絶対にないと思います。生きているだけでも意味があると思うので、そういうことについて考えてほしいです。あとは、多くを求めすぎずに毎日を楽しむこと。その価値は人によって違って当たり前なので、「今日楽しかったんだよ」って自分が言えればいいと思います。自分も心から楽しいと思える瞬間をつくっていきたいし、周りもつくっていってほしいなと思います。
タツミンさん:
下がり切ったところにある、その状態を受け止めてくれる居場所が持てるといいですね。
Markさん:
そうですね。居場所でも、人、食べ物、ベッドとかでもいいのですが、下がり切った時に、「あ、いけそう」って思える瞬間があると思うので。「大丈夫でしょう、今日楽しかったから」って思えたら、もう行けます。特に中途視覚障害の方だと、なかなかいきなりは難しいと思うのですが、よく言われるのは「見えなかったからこそ見えたことがある」とか、そういう事例もあるので、ちょっとずつ見つけていけば行けるはずだし、行ってほしいなと思います。
それから、当事者同士の「分かり合う」「分かり合えない」の話では、私はタツミンと一緒に歩いていて、少し目を借りる時があって。それが自然にできる人、お互いがお互いのポジションをスイッチできるような関係値だと、「分かり合う」「分かり合えない」が薄くなるのかなとも思います。
——夢はありますか?
タツミンさん:
私は本当にラジオが好きで、ラジオの仕事がしたいなと思ったこともめちゃくちゃあります・・・。自分でも、企画を考えて原稿をつくって、曲を考えて、配信みたいなことをやっていた時期もあって。やっぱり、夢は地上波のラジオに出ることです! 最近Markとは、小さいオフラインイベントもやりたいなって話しています。あとは、話すのが好きなので、学校とかに呼ばれて色々なお話をしたいですね!
Markさん:
自分の死ぬまでのコンセプトで、「つなぐ人でありたい」というのがあって。自分はいろいろやってきたのですが、飛びぬけた何かがあるわけではないと思っているんです。でも、誰かに「すごいな」って言われなくても生きている人はいっぱいいて、それは、「誰かと誰か」や「時代と時代」、「物と物」などをつないでいるからかなと思います。具体的に言うと、自分は言葉と音が好きなので、そういうものをつかって、仕事をしながらやっていきたいです。実は、目黒さん(聞き手)が出ていた朗読会の次の日から、ほぼ毎日詩を書いていて! 一日一日、書くと結構すっきりするんです。それがいつか実になればいいなと思います。
もう一つ、野望は「スパイになること」です!(笑) 「脳家」になりたい、というコンセプトをつくりまして・・・。脳を使った仕事がしたいんです。知識は誰にもとられないので、それをつかって人をつなぎつつ、実は裏でちょっとお金をもらっている・・・みたいな(笑)。そんな人生を送りたいなと思っています。
詩についてタツミンと言っているのは、自分たちの声で詩を読める場をつくりたいな、ということですね。仕事が落ち着いてきたら取り掛かりたいです。
タツミンさん:
今はMarkも私も、noteに詩を書いているので、noteと連動して、書いた詩を自分で読んでYouTubeにあげようと思っています。
Markさん:
将来的には、画像や音楽もつけたいですね。あとは、詩はどんな人にでも書けるんだなと思ったので、ぜひ色々な方に参加してもらえる場所にしたいなと思います! いつか文化放送ロービジョンプロジェクトともコラボして、「じゃく(弱・寂)詩ラジオ」なんてどうでしょうか!?
2回に渡って、タツミンさんとMarkさんのインタビューをお届けしました。
視覚障害のある方が生きている日常を、そうではない人がいかに知らないか、ということを、改めて痛感したインタビューでした。
タツミンさんとMarkさんの今後のご活躍に、ぜひご期待ください!
※2025年4月28日(月)~2025年5月6日(火)までは、ゴールデンウィーク期間のため、「こぼれ話」の更新をお休みさせていただきます。