「視覚障害のある友人・タツミンさんとMarkさんインタビュー①」

番組担当の目黒です。
今回は、私がとある詩の朗読会でお知り合いになった、タツミンさんとMark(マーク)さんのインタビューをお届けします。
<タツミンさんのプロフィール>
2000年生まれ、東京都出身。小学校から高校まで盲学校に通い、自立訓練や就労移行支援、訓練学校などを経て、現在は建設資材のディーラー事務として勤務。入社3年目。視覚障害者就労相談人材バンクでボランティアもしている。
<Markさんのプロフィール>
1998年生まれ、東京都出身。小学校から高校まで盲学校に通ったのち、院も含めて8年間一般大学に在籍。途中でロンドン留学も経験。お仕事はマーケティング関係で、入社1年目。株式会社ePARA(イーパラ)の業務委託社員として、通訳やアクセシビリティレビュー(監修)も担当。
お二人は同じ中学校で出会い、友人同士です。
——タツミンさん・Markさんの見え方について、今までの変遷を教えてください。
タツミンさん:
先天性の病気で、視力は数値としては全く測れないのですが、なんとなく物が動いているとか、人がいるとか、正面にあるものが見えているくらいの見え方です。車1台の縦の長さくらいの距離で、大きいものが見えています。昼間は、電柱や車は見えるので、障害物は、頑張って避けようと思えば避けられます。夜は、物は見えにくくなるのですが、逆にライトは見えるので、信号は音がならなくても見えていて、色の識別ができている感じです。
同じ見え方の人でも、全盲なのかロービジョンなのかは人によって解釈が変わると思います。私は、公的な書類上は全盲扱いということになってしまうのですが、自分の認識ではロービジョンだと思っているので、最近では、自己紹介をする時に、全盲寄りのロービジョンと表現をしています。
Markさん:
私は、生まれつきの全盲、といつも話しています。眼球が実質ないという状態で生まれてきているので、光や色などは認識できず、視力はゼロという状態です。ただ、3歳くらいまでは頑張って光を認識しようとしていた記憶があります。お天気雨や虹、薄日がさすのがすごく苦手で、苦手だったということはつまり認識できていたのではないかと思っています。今はシンプルに全盲です。
——視覚障害者ではない人にも知ってほしい、日常生活の困りごとはどんなことですか?
タツミンさん:
いっぱいあります。よくある話ですが、タブレット注文やセルフレジが導入されたお店だと、たどり着けたとしても、注文や会計が自力でできないことが、外出先で困ることです。お店の人がやってくれることもあるのですが、基本的にはそれをやらないためのシステムなので・・・。それに、誰に声をかけていいのかも分かりません。スマホで注文するシステムだと、自分でメニューが見られるので、それがもっと普及してほしいなと思います。
それから、白杖を持って歩いていると、いろんな方に声をかけてもらえることが多いのですが、特に東京にいると気になるのが、いきなり触ってくる方が多いということです。電車に乗るときやエスカレーターに乗るときなど、後ろから押そうとしたり、引っ張り上げようとしたりしてくださるのですが、見えている状況でいきなり人に接触するシチュエーションってあまりないですよね。基本的にはない方がよいと思うのですが、それは我々も同じです。どう声をかけていいか分からないとか、何かの事情で声を出すことができない方もいらっしゃると思うのですが、触る前に何か一言喋ってほしい、というのが、私が一番お伝えしたいことです。それから、白杖を掴まれたり、「危ない!」とだけ言われたりもしますね。行先を聞かれることも多いです。安易に行先って教えない方がいいかなと思うので・・・。「何か探していますか?」とか、「何かお困りですか?」と聞いていただけると、困っていないときはNOと言えるので、ありがたいです。
Markさん:
そうですね。これもよく言われることなのですが、自販機で飲みたいものが買えなかったり・・・。切実に困っていることで言うと、トイレ問題ですね。まず、トイレの場所を見つけるのが面倒だったり、見つけられなかったりするときがあります。見つけられても、男子トイレ・女子トイレ・多機能トイレがそれぞれどこなのかが分からなかったり・・・。それから、個室はまだまだ課題が多いですね。入ってトイレットペーパーがないとか、あるけどどこか分からないとか、流すボタンが見つからなくて、緊急ボタンを間違えて押してしまうこともあります。見える方は日常生活の一部としてやっていると思うのですが、当事者にとっては切実ですね。女性やお年寄り、車椅子の方だとさらに大変だったりもすると思います。
今まで使って良かったのは、家庭用トイレみたいなものがあるお店です。使い方に慣れているので、安心できるなと思います。それと、駅のトイレは、少し汚いことが多いことを除けば、音声案内があるので良いですね。
タツミンさん:
それで言うと、私の家の隣駅の多機能トイレは100点に近いですね。広さがあって、立てばセンサー流れる、操作部分に「流す」と点字で書いてあって探せる、トイレ内音声案内で、「今鍵がかかったよ」などを言ってくれる、ドアの扉の操作部分が光る、石鹸もある、サニタリーボックスも、利用する方には座って手の届く位置にある・・・など、使い勝手が良いです。
それと、これもぜひ言いたいのですが、時々多機能トイレのボタンの役割を知らない方がいて、中でボタンを押すと鍵がかかるけど、外で押すと鍵はかからないんですね。大体十数分経つと自動でロックが解除されると思うのですが、閉まっているときに、今本当に中に人がいるのかな、間違えてロックした人がいないかな、と心配になることがあります。多機能トイレのボタンの使い方は、正しくみんなが知っていてほしいですね。
——どんなお仕事をされていますか?
タツミンさん:
建設資材のディーラー事務として勤務して、3年目です。
業務内容は、書類を作成したり、エクセルの集計機能を使ってデータを取りまとめたり、会議の録画データをもらって文字起こしをしたりしています。一番のメインになってしまっているのは、書類をシュレッダーにかける作業ですね。こういう仕事をしている視覚障害者はたぶんあまりいないとは思うのですが・・・。あとは、製品関係の印刷物の補充、新入社員研修の会社説明なども担当しています。今後は、障害の当事者として、障害とともに働く同僚の方のメンターのような役割もできたらいいなと思っています。
Markさん:
マーケティング関係で、1年目です。
業務内容は、2025年4月に入社したばかりで、現在研修中です。マナー研修やスキル研修などを受けています。今のところ一般の方と同じような扱いを受けていて、今後は自分のポテンシャル次第ですが、例えばマーケティングだったら、会議に出て分析したり、書いたり、マーケティング系の部署がやりそうな業務を担いそうだなと期待しています。
——いまのお仕事はどのように探されましたか?
タツミンさん:
今の職場は、3年前に1年間通っていた訓練校に来た求人で、訪問した際に「どんな工夫をしたら働けるか」という話を面接官として、じゃあ採ってみよう、ということで採用されました。その職場では、私と視覚障害の同期の2人が、視覚障害者として初めて採用されました。
周りでは就活に苦労する人が多いですね。私も、オンラインのエージェント含めて50社くらい売り込みをしたのですが、ほとんど書類で返されました。障害者の合同面接もあるのですが、そこに出展する会社も、視覚障害者を採用したいという雰囲気はあまりなくて。私はたまたま拾われた、というのが正直なところです。
Markさん:
自分は、もともと就職する気があまりなくて、教職か博士課程しか考えていなかったのですが、留学中に周りの友人たちがたくさん就活をしていて、「研究職はあこがれるしいつかそうなってもいいけど、一旦働くか」となって、そんな感じだったので就活をしっかりやる気にもなれず・・・。一社決まったらそこでいいやという気持ちでした。視覚障害の方って、今でも「一社決まればいい」と言われているので、一社決まって無理に続けてもしょうがないなと思っていたら、ありがたいことにインターンから面接を受けて受かることができました。大所帯の会社で、視覚障害者の採用実績はあるけど、部署では初めての採用でしたね。
タツミンさん:
採用する側として、付き合ったことがないと、何をやらせていいのかが分からないんですよね。こちらがプレゼンをしないと、どんなふうに仕事を振って良いのかが全く分からなさそうで。例えば私は、面接のときに、パソコンでメモをとっていた方にお願いをして、「エクセルを開いて、F5キーを押してください。縦にC3:C8と入れてエンターを押してください。」と言ってやってもらったんです。「今、縦に5行選択されましたね。私たちはこうやって、マウスを使わないでエクセルの操作ができます。」「読み上げソフトを入れてもらえれば、メールも書けます。」と、環境さえ整えてもらえればやることの幅は広がるということをプレゼンしました。それで「おー!すごい!」といちいち驚かれるみたいな(笑)。そういう本当に基本的なことを聞かれますね。私は面接では志望動機すら聞かれませんでした。何ができるかが分からない人は、企業にとっては言ってしまえば「お化け」なんですよね。
Markさん:
自分は、会社の方に会ったときに、点字のタブレットでメモをとっている姿を、敢えて目立つ感じで見せたりしています。点字のタブレットは、携帯ともつながるもので、これがあれば、言ってしまえばなんでもできるんだよ、と。スマホに関しては、デフォルトで読み上げ機能などが入っているので、人事の方などに実際に体験してもらったり・・・。自分の場合は内定が決まってから、会社の方に心配を減らしてもらうために伝えていました。ロービジョンの方だったら特に、見え方がばらばらなので、こんな環境があればこれができる、ということを伝えるべきだし、人事の方は知った方がいいかなと思います。まずは土俵に立たせてほしい、というのが、特に伝えたいところですね。
それでも、入社した後に、入ったけど仕事がない、何もやらせてくれない、と悩む人も多いです。最近は定着支援ということで、見守ってくれる就労移行の事業所なども少しずつ増えてきましたが、人によっては入ってからの方が、いろいろと考えないといけない事態になることもあるのかなと思います。上記は、タツミンさんが使っている、「ケージーエス株式会社」の点字タブレット「ブレイルメモスマート」の写真です。
上記は、Markさんが使っている、「有限会社エクストラ」の点字タブレット「ブレイルセンスシックス」の写真です。
次回も引き続き、タツミンさんとMarkさんのインタビューをお送りいたします。