鍼とマッサージの「ピットイン」・小泉貴さんインタビュー②

番組担当の目黒です。

今回も引き続き、東京下町で、鍼とマッサージの「ピットイン」と言う治療院を開業している、小泉貴さんのインタビューをお届けします。

小泉さんの顔写真
小泉さんは、埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンターを2023年春に定年退職した元教官。

網膜色素変性症という目の疾患を患い、全盲の視覚障害者で、難聴もあり、補聴器もしていらっしゃいます。

大好きなモータースポーツにちなんだ「ピットイン」という店名に、生まれ育った地域の方々の心身の調整や修理を行える場所への願いを込めています。



——施術はどんな風に行うのですか?

手の感覚と声を感じながら行います。メンタルマップが頭に入っていて、動けばここにベッドがあるとかは分かります。あとは実際に患者さんの身体を触って、私も名人ではないですが、触ればぴたっと痛いところに止まります。鍼を刺したら、中はもう見えないわけなので、あとはもう手の感覚です。あんま・鍼灸を視覚障害者がやってきたのは、手の感覚が鋭かったからじゃないかなと思いますね。使っていない感覚があるだけで、自分も見えているときはそんなに分からなかったのですが、目が見えなくなった時には、いつもの患者さんの声の感じが違うなとかも分かるんですね。あとは、鍼を打つとき必ず東洋学的な見方で脈を見るのですが、脈を見ると、腰痛いの?とか、お腹痛いの?とかも分かります。


——大手のネット予約サイトを設定されたとのことですが、大変だったのはどんなことですか?

30年、40年開業している先生には勝てないので、他の人と同じことをやってたらだめだと思ったんです。それから、視覚障害で開業している人は、まだまだ儲かっていない方も多い。そういう現状を変えていきたいんです。開業して1年半だからこそできることをやってみています。

大手ネット予約サイトのホットペッパーが一昨年から鍼灸院も扱うことになって、開業してすぐ営業の方が勧誘に来ていました。最初はやらないつもりだったのですが、すでに視覚障害者の先生が一人やっていると聞いて、挑戦しようと思いました。視覚障害者用につくられているわけではないので、細かくて大変なのですが、営業の方といっしょにやりながら、なんとか進めましたね。

今後の課題は、電子マネーです。現在うちは現金のみなんですね。だんだん電子マネー使えないんですか?という患者さんが増えてきたので、考えているところです。でも、今のところ音声対応の支払い機械がないんですね。ただ、ホットペッパーはクレジット事前決済ができるので、それは今度やろうかなと思っています。

——普段使用している道具や機械はありますか?


だいたい一人でやっていますので、音声で反応する扇風機や赤外線で喋る機械を用意しています。それから、問診票などは、アメディア製品の「よむべえ」で読み上げています。今は手書きの文字も結構読めるようになったので、それをテキスト化してパソコンに入れたりもしています。

そういった道具や機械の情報は、教官だったこともあって、お知らせが来て知ることもあります。あとはメーリングリストなどで情報を取るようにしています。なるべく頭を柔らかくして、新しいものも取り入れなきゃと思っています。



次回も引き続き、小泉さんのインタビューをお送りいたします。