見どころ&注目のランナー
学生3大駅伝第2弾、全日本大学駅伝は前回大会でシード権を獲得した6校+全国の厳しい予選を勝ち抜いた19校+東海学連選抜の合計26チームで争われ、『真の大学日本一決定戦』と呼ばれる大会です。
全行程44.5kmという出雲駅伝から距離がぐっと伸びるこの全日本大学駅伝は愛知県名古屋市の熱田神宮西門前をスタート、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮宇治橋前までの8区間106.8km。各区間それぞれ距離にバリエーションがあり、出雲駅伝以上に区間配置の妙が現れます。
ただ、今年の出雲では全区間でトップが交代するというスリリングなレースが展開されましたが、近年、この全日本では終盤の逆転劇はほとんど見られていません。最終にして最長区間・8区での逆転Vは駒大・神屋伸行が山梨学院大・尾崎輝人を抜き去って栄光のゴールテープを切った10年前の1999年、第31回大会にまで遡ります。
選手配置を含めた総合力が如実に表れるという意味においても、まさに『真の大学日本一決定戦』と言えるかもしれません。
今大会、最も注目を集めているのが史上3校目の4連覇を目指す駒澤大学。
昨季出雲2位、全日本Vで挑んだ大学駅伝最終章・箱根駅伝で、13年ぶりとなるまさかのシード落ちを経験した駒大は今季、5日後に控える箱根予選会を見据えて出雲ではベストメンバーを組めず、10位という結果に終わりました。
しかし、絶対に落とせないその予選会で"駅伝王者"駒澤の存在感を充分に発揮しました。
駒大の総合タイムは2006年早大がマークしたコース記録10時間06分53秒を3分以上も更新する10時間03分39秒。深津、高林、宇賀地の4年生トリオが揃って60分切りで一桁順位。もう一人の主力4年生、故障明けで距離に不安があった星が全体の50位とまとめたほか、期待のルーキー上野が1年生では東海大・村澤に次ぐ2位、全体の16位でゴールするなど、総合力の違いを見せつけました。
大八木監督自身、「全日本は4連覇を目指します」と公言しているように、全日本では優勝しか知らない4年生が力を発揮すれば、優勝に最も近い存在となるでしょう。
「打倒・駒大」、14年ぶりの優勝を目指すのは、前回大会7区で逆転を許し、2位に甘んじた早稲田大学です。
前回、アンカー区間8区で一時はトップ駒大まで手が届きそうなところまで追い上げながら、深津に逃げ切られた尾崎は4年生となった今夏、故障で満足な練習をこなせなかったと語っていました。しかし、出雲駅伝までに間に合わせた上、3区を走って区間2位の好成績。渡辺監督が信頼を寄せる"安定感"を高い水準でキープしています。
さらにスピードランナーが揃う2年生の中にあって、矢沢、八木が好調。今季出雲で大学駅伝デビューを果たした1年生2人にも注目です。4区を走った佐々木は区間賞を獲った東洋・川上から遅れることわずか1秒の区間2位、エース区間の6区を走った平賀は区間4位という堂々たる成績を残しました。
過去2校しか達成したことがない全日本4連覇。そのうちの1校は、くしくも渡辺監督が現役時代の早大です。駒大の4連覇の前に立ちはだかる最も大きな壁が早大だと言って良いでしょう。
もちろん、今季出雲駅伝で2連覇を達成した日本大学も優勝争いに絡んでくるでしょう。
前回大会、日大は出雲Vで勢いをつけて伊勢路に乗り込みましたが、序盤の出遅れが大きく響き、優勝の駒大から約5分遅れの6位に終わりました。距離が長くなることで脆さが出た昨季の日大。しかし、もう一人のケニア人留学生ベンジャミンが加わったことで、ウィークポイントは解消されました。さらにルーキーの佐藤が好調をキープ。大学駅伝デビュー戦となった出雲では、準エース区間の3区を走り、区間4位という結果を出して自信をつけました。
ベンジャミンを前半の要所に配置し、今季絶好調、出雲6区でも自身の区間記録を更新する走りを見せたダニエルで勝負する、出雲駅伝同様の戦略がはまれば、4年ぶりの優勝も見えてきます。
駒大包囲網を形成するのは早大・日大だけではありません。
『新・山の神』柏原を擁し、前回の箱根を制した東洋大学、コスマスを中心に今季出雲で東洋に先着、2位に食い込んだ山梨学院大学、大学史上最強と謳われながら、出雲では主力のケガに泣いた明治大学
上記チームが力を発揮すれば、近年希に見る大混戦となるかもしれません。
2009年、真の大学日本一の栄冠を手にするのは、果たしてどのチームでしょうか。