震災から12年で「風評ほぼなくなった」　そして今、処理水の海洋放出に福島県の人が思うことは？

邦丸「明日3月11日土曜日で東日本大震災から丸12年になります。ということで今日のくにまる食堂は特別編です。コロナ禍で断念した年もありますが、「邦丸ジャパン」、「邦丸ジャパン 極」時代から、震災以降はほぼ毎年、東北にお邪魔してきました。岩手に行きました。宮城に行きました。福島に行きました。茨城も行きました。2023年、今回の「くにまる食堂」は、福島の漁業の今にスポット当てます。先週の金曜日と土曜日、浜通りと呼ばれる地域にお邪魔して、まずは福島県相馬市「浜の駅　松川浦」を案内していただきながら、店長の常世田 隆さんにお話を伺いました。」

――ここから福島での取材音声。浜の駅の商品を見て回る邦丸アナ――

邦丸「これ、生のメヒカリが半額ですよ。225円で何匹入っていると思います？20匹は入ってる。あとすごいのは平目。常磐ものの寒平目が160グラムで527円。こんだけ身が厚めで常磐ものだったら東京だと倍どころじゃないですよね。」

常世田「そうですね。ここは魚港から200メートルしか離れてないんです。東京まで持ってこうとしたら物流のコストがべらぼうにかかっちゃいます。それが魚に乗っかっちゃうんですよ。相馬は震災前から活魚で潤ってたところなんですね。生きたまま当時は築地に持って行ってしまうから、あんまり水産加工っていうのは多くないんですよ。あるのは干物とか海苔の佃煮ですね。松川浦で海苔の養殖をされてますので、何種類もこちらにございます。

邦丸「この松川浦のアオサ、ちょっと味噌汁に入れるだけで極上ですよね。しかも量が半端じゃない。」

常世田「震災前はキロ5000円ぐらいで東京の方だと取引されてたみたいです。それだけ評判が良かったんですよね。」

邦丸「常磐ものっていうと平目もそうだけど高いんですよね、ものがいいから。だけど震災後、原発の事故以来もう市場に出せなかったり、出せても売れなくて、もったいないことしてたんですよね。」

常世田「水揚げ量は今でも震災前の3分の1ぐらいですね。適正価格で流通するかどうか、そこらへんも含めて試験操業をやって、今はそれが終わって本格稼働に移る前の拡大操業ということです。それでもまだまだ昔のようにはね…。」

――政府は東京電力福島第一原発で1日に90トンたまり続ける、いわゆる処理水の海洋放出を今年の夏頃までに開始する方針を表明している。最後にこの海洋放出について、常世田店長の思いを伺った――

常世田「この店がオープンしてから、お客さんは今でも続々と増えています。それはやはり先ほどご覧いただいたような生の魚を食べたいからなんです。お客さんからは「これ生でいけますか？」「刺身でいけますか？」とよく聞かれます。店内の食堂でも生魚をメインに出していて、行列もできるんです。それだけ「生」を求めるということは、要は新鮮さを求めて来ていただいているわけです。もうほぼ「風評はなくなったかな？」っていうのが今の現状なんですね。ですから処理水の放出は微妙です。国が言うように本当に安全だとは思います。僕も何度も視察しています。放射線とかも勉強しましたので、安全性は確保できている。沖合1キロまで地下トンネルを掘って、その先から流すということなんで、大丈夫だとは思いますが、立場上「風評の再燃が懸念される」という風に申し上げないといけないのかなと。福島県が反対してるんだから「やっぱりやばいんじゃない？」っていう外からの見方もあると思うんですよね。世界のスタンダードは海洋放出なわけですし、震災前にも流していたわけです。つまり「震災前に戻るんだ」「世界のスタンダードに並ぶんだ」と、当初から発信していれば、多分こういうことにはならなかったのかなというふうに思います。」

「くにまる食堂」は平日朝11～13時、文化放送（AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko）で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。