【相談】「早く退勤を」と言ってはいるけれど…人事マンのお悩み『長尾一洋 ラジオde経営塾』3/6(月)放送
約9,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答。
今回は人事部で働く方からのご相談です。
長時間労働是正を掲げつつ、人員も仕事量も変わらない職場の状況。それを十分認識しながらも、立場上は「早く帰ってください」と促さざるを得ないご相談者のお悩みに、長尾社長はどのようなアドバイスをしたのか、その一部をご紹介します。
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■人員も受注量も変わらず、勤務量だけ減らせる?
ご相談者は、ラジオネーム”暇ナッツ”さんです。
ご相談:
メーカーの人事部で働いています。
弊社では、長時間労働が常態化していて『なるべく早く退勤できるようにしてください』と、人事部からは注意するのですが…。
受注量と人員が変わらないなら、勤務時間も変わりようがないよなぁと、言いながら思っています。
そこで疑問なのですが、人員も受注量も変わらない場合、どのようなアプローチで勤務量を減らすことができるでしょうか?
長尾社長:
そうきましたか!
これ、逆に現場の人が「人事がうるさいんだけど、どうすればいいんですか?」みたいなご相談なら「なるほど」なんだけど、人事の人なんだよね。あんたが言ってんじゃん、みたいな(笑)。
言ってるけど、どうかな…と思っていると。微妙だけど、いいご質問ですね。
■まずは現状を可視化しよう
ちょっと珍しい人事マン側からの長時間労働についてのご相談。長尾社長がまずアドバイスしたのは、改善のための可視化についてです。
長尾社長:
人員も受注量も変わりません、なのに勤務時間を短くしろと。「できるわけないじゃん」ということになりますね(笑)。
やはり何かしらの改善をしなければいけないでしょう。
会社の規模感や業種はわかりませんが、やはり製造現場なので日々のコストダウンや生産性向上への意識が非常に高く、いろいろな改善をなされているとは思います。
それが不十分であれば、まずは現状を可視化すること。
今おっしゃっておられるのも、非常にアバウトな感じですよね。
じゃあ長時間労働というのは誰が何時間しているのか。
受注量、業務量がどういう状況なのか。
機械の稼働状況はどうなっているのか。
人員の配置がどうなっているか、とか。
こういったところをちゃんと把握する、見える化する。
製造業だと必ず”空き時間”みたいなものがあると思うんです。ラインを組み替えたり、段取り時間みたいなものですね。
それが今どうなっているかを洗い出して、本当に時間が足りないのか(検討する)。
まずはそこらへんの現状を認識していくことですね。
■機械化やDXで変えていく
現状を見える化することで、本当に効率化できる余地がないのか検討する…。それでも時間が足りない場合にはどうすればいいのでしょうか。
次に長尾社長が提案したのは、機械化やDXによる業務の効率化です。
長尾社長:
それでもどうにもならないなら、「早く帰れ」って言ったって帰れないわけです。
今のご時世で残業時間を減らすなら、やはり人員よりも機械化。もしくは流行りのDX。
デジタルの力を使って変えて行くようなことですね。
現状を可視化するのも、たとえばIoTセンサーなどを付けて機械の稼働状況をリアルタイムにデジタルで把握すれば、手間もかからず、改善した後もずっとモニタリングをし続けることができます。まず簡単に言うと、こういう取り組みができますね。
人員を増やせない会社でも、デジタル活用によって効率を上げることができるとのこと。
長尾社長は、製造ラインだけでなく前工程もデジタルで把握することで、さらなる改善ができると話します。
長尾社長:
暇ナッツさんの会社の受注形態はわかりませんが、メーカーの現場が仕事をする手前には、必ず見積もりや受注などの前工程があります。
その前工程の動きをデジタルでちゃんと掴む。
すると生産量や部材の発注量とかが推定できることになりますよね。
たとえば今までは『受注が入り→現場に作業指示が出て→段取りを始める』という工程だったものが、途中の段階で見積もりの提出量を見ながら需要予測ができるような感じですね。
それで発注や生産の段取りが変わると、少しプロセスが変わって業務の効率を上げていけます。
そんなDXも改善の方法としてあるんじゃないかと思います。
でもそのためには営業部門とか他部署の協力も必要になってきますね。
■現場も人事も、お互いに正しく現状を認識すべし
松尾アナ:
これから受注量が増えるぞ…という時がわかれば、人事部も「早くかえりなさーい!」と言うタイミングかどうか判断できるようになりそうですね。
長尾社長:
“お互いが現状を正しく認識していく”ということですね。
もちろん必要な残業もあるだろうけど、それが現場の裁量に任されていると、現場で勝手に就労時間をコントロールしていいんですか?ということにもつながるんですね。
やはりこれはよろしくない。
メーカーさんなんで「●●業務だから△時間かかる」みたいなことは、ある程度決まっているはず。それに向けお互いが正しく認識して、「今日の業務量は必ずこうなるんで、いつもは5時までだけど今日は7時までやってほしい」というように決定する。そうすると早く帰れもクソもないわけで(笑)。
特に製造の現場で言うと、そんなふうにしていくことが大切じゃないですかね。
■業種を問わず、改善は可視化から!
今回のご相談は長時間労働をどう改善すべきかというご質問でしたが、当番組には同じように「変えたいことがあるが、やり方がわからない」というお悩みが多く寄せられます。
最後に長尾社長から、あらゆる業種に共通する改善のポイントについてのアドバイスがありました。
長尾社長:
今日も何度か言いましたが、可視化することですね。見える化していく。
ありがちなのは業務のプロセスを書き出したり、ポストイットに書いてペタペタ貼って行ったり。そうすると業務の流れが明らかになりますよね。
実際やってみたら、○◯さんは”A→B→C→D”というやり方でやっているけど、■■さんは”A→B→D→E→C”で「違うじゃん!」「あれ、そうやってるの?」みたいなこともあったりね。
書き出せば、どこで時間かかるかとか、どこで待ち時間が生じているかも分かりやすくなります。
これは製造現場だけじゃなく、どんな業務でも言えることです。
どこのプロセスに改善の余地があるのかを見て、全員の認識も手順も、なるべく共通のものにしていく。
皆が勝手にやっていると、当然バラツキが出る。チャッチャとやる人はいいんだけど、やっぱりとろっちい人がいた場合はもったいないので、チャッチャとできる人に合わせて業務を変えていくとか。
属人的にできる/できないがあるのなら、どうすればできない人ができるようになるかを考えたり、そのプロセスを無くして機械化やデジタル化したらどうなるかを検討したり。
まずは現状を見える化する、可視化することから入るのが、どんな改善においても重要だと思います。
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