【ゲスト回】真山仁さんご出演!クリスティーが必読な理由とは?『長尾一洋 ラジオde経営塾』1/2(月)放送
あけましておめでとうございます!
日頃よりたくさんのご聴取をいただき誠にありがとうございます。
今年も当番組では経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、悩めるビジネスマンのご相談にビシバシ回答して参ります。
記念すべき2023年第1回目放送はゲスト回!
大ヒット作『ハゲタカ』シリーズをはじめ、社会に鋭く切り込む作品の数々で知られる小説家の真山仁さんにご出演いただきました。
真山さんと長尾社長、松尾アナの3人のトークの一部をご紹介します。
※テキスト化にあたり、発言に一部、省略や再構成を加えています。
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■長尾社長がはじめてアガサ・クリスティーを読んだ理由は…
真山仁さんプロフィール
1962(昭和37)年、大阪府生まれ。 同志社大学法学部政治学科卒業。 新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。 同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。〈新潮社HPより引用〉
松尾アナ:
真山さん!長尾社長が初めてアガサ・クリスティーのミステリを読むにいたりました!
真山さん:
初めてはびっくりですね!
でも大変幸せな方だと思います。これからたくさんの楽しみが待っているので、羨ましいですね。
トークが始まるや、話題は突然アガサ・クリスティーのミステリ作品へ。
なぜクリスティー?…というのも、長尾社長がクリスティーを初体験したのは、実は真山さんの著書『“正しい”を疑え!』(岩波書店)がきっかけだったから。
長尾社長:
『“正しい”を疑え!』の中に正しいを疑うためには小説が大事で、中でもアガサ・クリスティーなんだ…というふうに書かれていたので読みましたよ。
松尾アナ:
私もその部分を子供に朗読しました!
子供は今アガサ・クリスティーにはまって、毎日図書館で本を借りてくるようになりました。
長尾社長はどんな作品を読まれましたか?
長尾社長:
『葬儀を終えて』という作品です。
真山さん:
渋いですね!素晴らしい。
ファンの中では名作ですが、ドラマ化はされていますけど映画化は一度も無い。大体映画化された作品を読みがちですよね。
松尾アナ:
映画もありますが、やはり小説を読むべきですか?
真山さん:
そうですね。映画は映像があるので、どちらかというと受動的に観ちゃうんですけど、小説は文字が並んでいるだけで、自分で登場人物をイメージしたり、さらに自分で読み進まないと全部の場面も体験できませんよね。
結果的に感情移入していくので、失敗も成功も登場人物と一緒にやれる。逆に言うと、没入すればするほど登場人物と一緒に騙されていく。
クリスティーを薦めるのは、ファンになってほしいのもあるんですが、読み終わっていただくと「実はそれはですね…」っていうお話ができるようになるので。
なぜ「”正しい”を疑え」と言うのかというところにポイントがあるので。
松尾アナ:
『“正しい”を疑え!』にもありましたけれども、アガサ・クリスティーの作品って、みんな本当に上手に嘘をつくんですよね。
真山さん:
そうなんですよ。まず日本人は、嘘は悪意が前提と捉えがちですが、胸に手を当てて考えると、自分にもうっかりついてしまう嘘とか、つかなければいけない嘘、他人の嘘に乗ってさらに嘘をつくみたいなこともたくさんあるんです。
たいていの人は「昨日なにやってた?」と聞かれても正直に言えないことが結構あったりするじゃないですか。
イギリスはミステリの宝庫ですが、”ほぼ全員が嘘つき”という作り方においてクリスティーの右に出る人はいないですね。
■小説を通して疑う力を鍛える
さらに話題は『“正しい”を疑え!』の内容へ。第八章のタイトル『小説があなたを鍛える』について、詳しくうかがいました。
真山さん:
感情移入するということは、ある意味他人の人生を生きること。
「人生経験が乏しいから自分はうまくいかない」と感じている人は多いじゃないですか。
普通は体験して痛い目に遭っておぼえるんですけど、小説は読めば読むほど登場人物の数だけ色々体験ができるんですよね。例えば恋愛が上手になりたければ一生懸命恋愛小説読めばいい。
もう1つ、クリスティーもそうですが、視点を持ち感情がわかる登場人物がたくさん出てくると、価値観の違いなどが(わかる)。
例えばこうやって、私が松尾さんとおしゃべりしている。
最初は私視点で語り、次に松尾さんの視点でみたら、実は(このおじさんよく喋るわね…)と思いながら「いやあ、大変面白いですね!」と言っていたり。
人間って実は思っていることと言葉が違うんだ…という。日本人はこれがなかなかわからないんですね。
どうしても日本は同一性を求める。「わかるよね?」って聞いて「わからん!」という人は「じゃあちょっと帰ってくれませんか」という文化なので。
イギリスの小説って登場人物の内面を描く場面が大変多いので、楽しげにしている人でも腹のうちは全然楽しくないこともあるんだな…ということを疑似体験でき、だんだん身についていくんですよね。
そうすると、いつも自分が好かれているか嫌われているか…と思わなくてよくなるんですよ。
松尾アナ:
生きやすくなりそうですね。
真山さん:
生きやすくなります。ただあんまりやると疑い深くなるところがあるので、それがちょっと副作用なんですけどね(笑)
長尾社長:
『葬儀を終えて』も、まんまと騙されました。
真山さん:
そうですね(笑)。クリスティーの登場人物には完璧にいい人はほぼいません。完璧にいい人に見えて悪い人もいるし、悪そうな人なのに根は弱いだけだったという人もいるし。
人間ってそういうもんじゃないですか。
■光量子コンピューター開発をめぐる2国の駆け引きが描かれる新刊『タングル』
次に話題は真山さんが2022年11月に上梓されたばかりの新刊『タングル』へ。
長尾社長もすでに読破したという大注目の1冊です。
長尾社長:
もちろん読みましたよ!なかなかテーマが難しい。
松尾アナ:
光量子コンピューター開発をめぐるシンガポールと日本の駆け引きというテーマですね。
真山さん:
まあコンピュータのことが難しいだけの話なんで、小説全体の話をすると、まあよくある話ですよね。
2つの国が共同開発すると、大体どちらの国が儲けられるか交渉が始まり、当事者たちはそれに巻き込まれながら、開発の結果を出さなきゃいけなくなる…みたいな。
正直、実際に一番大変だったのは光量子コンピューターをどう説明するかということ。いまだに説明しろと言われてもほとんどできないですけど(笑)。
長尾社長:
そもそも量子コンピュータについていくのがね(笑)。さらにその先なので。
真山さん:
「もうそういうもんだと思えばいい!」と専門家に言われました(笑)。
簡単に言うと、あなたはスマホを分解して全部説明できるか?と。
今の我々の社会で全ての構造を理解して使っている人はほとんどいないと思います。
どういう目的でやっているのか、昔よりどうよくなったかくらいは知っている人はいるでしょうけど。
(光量子コンピューターについての理解も)今までと全く違うコンピューターがこれから新しく生まれようとしていること、その背景や意味みたいなことは知っておかなければいけないですね。
松尾アナ:
なぜこのテーマだったんですか?
真山さん:
シンガポールでお世話になったこともあり、「シンガポールと日本を結ぶような物語を」というオファーがあって。
いろいろ考えたんですが、最終的に”金融大国”であるシンガポールと、だいぶダメになりましたが”ものづくり大国”と自分で思っている日本と。
共同開発って、持っているものと足りないものを1つにするのが一番成功する可能性が高いじゃないですか。
シンガポールはものづくりにすごく興味があるんですが、あんまりガマンができない印象があるんですね。お金も観光も投資すればすぐにリターンが返って来ますが、ものづくりはやはり最低10年はかかるじゃないですか。
逆に日本はその10年を続けられるお金がなくなっているんです。特に先端は。
半導体が気づいたら競争からほとんど脱落してしまっている理由も、研究費がなくなっていること。
それで日本で(そのような状況に当てはまる)研究を探していた中で出てきたのが量子コンピューター。
東大にもともとやっていた超伝導の量子コンピューターではない光量子コンピューターをやっている、ちょっと変わった研究室があったので、直接メールでお願いをしました。
大変良い方で、快くお手伝いいただいてそこから二人三脚です。
原稿を見ていただいて「こういう解釈でいいですか?」ということをしながら、なんとかたどり着いた感じですね。
長尾社長:
シンガポールから依頼を受けて書き始めたのに、案外微妙なところを突いているというか。悪いところというか、そういう面も描写されていますね。
真山さん:
最初イイ話を書こうとしたら「そうだったらあなたに頼まない」って言われたんです。
「ハゲタカとかで日本を批判しているように、あのスタンスでシンガポールを見てほしい」「我々はPRのためにあなたに頼むわけではない」と。
そういう意味ではあの国の自国に対して世界に知ってほしいという考え方の奥行きというか、懐の深さは日本とは比べ物にならないですね。
長尾社長:
そういうのも含めて知ってほしいという狙い?
真山さん:
そうじゃなきゃあなたに頼まないと言われたんです。
もし「シンガポールってパラダイス!」っていう(作品が欲しいなら)他の人に頼むと。
そしてもう1点、『タングル』には長尾社長も大喜びのステキなポイントがあります。
長尾社長:
出ましたよ、鷲津が!!来たー!出たー!と思って。
…そう、『タングル』には、長尾社長が大好きなハゲタカシリーズの主人公「鷲津政彦」が登場するんです!
真山さん:
しばらく出ていないので、ちょっとだけ顔出しを。
松尾アナ:
真山さんの小説では「おひさしぶりです!」みたいな人物に各所で会えるのが楽しいですね。
■『ハゲタカ』シリーズ続刊も!真山仁さんの2023年
せっかくのお正月ということで、真山さんの新しい1年の抱負もおうかがいしました。
真山さん:
2023年は新しい連載が2ヶ月おきくらいに始まるんですね。
2月にはパンデミックの小説を。我々はコロナで何を学んだか。
5年くらい先に今度はもっと大変なパンデミックが起きた時に、我々はちゃんと学んだ上で対応できるか?みたいなことをやろうと思っています。
また春ごろを目標に、鷲津の『ハゲタカ』シリーズを久しぶりに始めましょうと思っていて、今は仕込み中な感じです。
■リスナーの皆様に、真山仁さんからの新春メッセージ
番組の最後には、真山さんから当番組をお聴きいただいている皆様へ、新春を寿ぐメッセージをいただきました。
真山さん:
ずっとコロナが大変だったり、遠い国で戦争があったりという2022だったんですけど。
今年こそは是非、1年に1つ自分で目標を立てていただいて、地道でも何か前へ前へ進める。
ムードもそうなっていくのかな?という予感もあるので、俯かないで、スマホばっかり見ないて、たまには空を見上げて前へ進んで、皆で少し元気になる1年になればいいなと。
私も思いますし、皆さんもぜひそうしてほしいと思います。
長尾社長:
『タングル』読んでからのアガサ・クリスティー読んで、空を見上げるというね!
今回テキストでご紹介した部分以外にも番組内では、イギリス人と日本人の共通項や、「正しい」を押し付けるSNSへの警鐘、さらには松尾アナが実は一番怖い疑惑などなどなど、興味深いお話がたくさん飛び出しました。
お聴き逃しの際はぜひradikoやSpotifyなどからお楽しみください!
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