【世界一諦めの悪いチームの中で最も諦めの悪い男】 第99回箱根駅伝 帝京大学取材後記

【世界一諦めの悪いチームの中で最も諦めの悪い男】 第99回箱根駅伝 帝京大学取材後記

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12月15日、メディア向けに開かれた帝京大学駅伝チームの共同会見。
16人のエントリーメンバーの中で、4年生が4人と例年より少なくなったことについて、中野孝行監督は「帝京らしくないメンバー構成になったが、4年生が弱いというわけではなく、下級生に力があるということ」と話した。

「帝京らしくない」
確かに今季の帝京大学はコツコツコツコツと鍛錬を積み上げてきた4年生中心のチームではない。だが、【世界一諦めの悪いチーム】らしくないわけでは決してない。

その帝京大学の象徴を体現する代表格が新井大貴(4)だ。

新井大貴選手(樋口主務撮影)

この新井大貴、1年生からずっとエントリーメンバーに名を連ねているが、箱根路を走ったことは無い。これまでは5区のリザーブ。ケガの影響もあり、強い先輩の壁を越えることができなかった。

文化放送では箱根駅伝の直前だけではあるが、新井大貴に1年生の時から取材をさせてもらった。コメントを紹介しよう。

▼1年生時 第96回大会/5区は平田幸四郎(4)で区間18位
「坂に自信があります。登りが好き。襷をかけて箱根を走ることにずっと憧れを抱いてきました。小さい頃からの憧れの舞台にあと一歩です。走れたら一生の思い出になる。将来的には帝京のエースと呼ばれるようになりたい」

▼2年生時 第97回大会/5区は細谷翔馬(3)で区間賞
「1月に右ハムストリングスの肉離れ。ごまかしながら練習してしまっていた。今は調子は上がっている。希望区間は今回も5区。城西大学に入学した弟(颯人)と、もしかしたら同じ区間になるかもしれない。母(ちとせさん。埼玉銀行で競技経験)は兄弟でエントリーメンバーに入ったことに大喜びしてくれた」

▼3年生時 第98回大会/5区は細谷翔馬(4)で区間賞
「去年は肉離れで満足な練習が出来なかった。無茶したところがあった。治ったり、悪化したりを繰り返して精神的にきつかった。そんな時、支えになったのが母からもらった言葉でした。【枯れても腐るな】。根っこが腐らなければ、いずれ来る春に花は咲くという意味です。母は陸上経験者で一番理解してくれている人です。(97回大会で4区にエントリーも当日変更で外れたことについて)走ったとしてもチームに迷惑をかけてしまうような状態でした。当日変更されてしまうんだろうなと分かっていました。今回も希望区間は5区です。細谷さんがいるので、日々参考にさせてもらっています」

そして、今回。
新井大貴は明るかった。

「夏合宿、怖いくらい順調でした。対策が実って右ハムの痛みは全く出ていません。チーム内5区争いのライバルですか・・・そうですね、カッコいいことを言っちゃうと自分自身です(笑)。今回はラストチャンス。箱根駅伝に対する思いは帝京大学の中で自分が一番強いと思っています。母からもらった【枯れても腐るな】という言葉、その言葉があるから、自分は今ここにいます。感謝の言葉を表現することができないくらい本当にすごい言葉をもらえました。自分の原動力です。弟(城西大3年・颯人)は今年、肺気胸を患ってメンバーに入れませんでしたが、『僕の分も頑張って』と言ってくれました」

1年生からずっと夢見てきた5区出走。ラストチャンスにかける意気込みを聞くと、新井は筆者の目を見てしっかり答えてくれた。
「走るからには細谷さんの記録に泥を塗らないよう、区間賞を獲りたい。自信はあります」

新井大貴は卒業後、競技から離れる。
この4年間、ケガに苦しみながらも決して諦めなかった。
腐りかけたが、よりたくましく成長した。

【世界一諦めの悪いチームの中で最も諦めの悪い男】
最後のチャンスで花を咲かせる準備はできている。

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