「そこそこの給料」払っているつもり…意識のズレに要注意『長尾一洋 ラジオde経営塾』11/14(月)放送
約9,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答。
今回はパート従業員の相次ぐ退職に悩む経営者の方からのご相談。長尾社長はどのようにアドバイスしたのでしょうか。その一部をご紹介します!
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■今年に入って3人も退職者が…
ご相談者はラジオネーム”総務課長”さんです。
ご相談:
今年に入り1年以上勤めた従業員が3名も退職しています。
みんな子持ちの主婦です。
一人はおばの介護、もう一人は母親が事故に遭い入院のため。それに続き先月にパートから社員にしてほしいと自分から言ってきた従業員が来月いっぱいでやめます。2年半勤めた方です。
理由は母親が祖父母の面倒を一人で見られないためだそうです。
退職理由、みんな本当ではない気がします。
私は30代です。
女性の経営者で子どもがいるので、従業員が子どものことで休む、早く帰る、土曜に休みたければ休みをあげる、納期に間に合っていなかったり仕事が終わっていなかったりしても残業もめったにさせません。融通が利く環境です。
なのに、なぜこんなにも退職者が続くのか…。
受注に対して人材不足で仕事の量が多いのは理解しており、私自身も自分の仕事より現場の仕事優先で、一日中現場に出て仕事をしています。
従業員には何かしらの不満があるのでしょうか。
辞めていく従業員に共通しているのは、仕事に当事者意識がないということです。納期に間に合わなくても社長がどうにかするんでしょうという感覚。
働きやすい環境を作っても辞めていくのであれば、今の緩い環境をもっと厳しくするべきかとも考えているのですが…。
長尾先生、どのようにしたらいいでしょうか
詳細にお悩みを書いて送ってくださったラビットさん。ご相談をいくつかのポイントに分けて、長尾社長に回答してもらいました。
【ご相談のポイント】
・親の介護などを理由に退職者が続いているが、その理由に疑いがある。
・子供のいるパート従業員さんにはさまざまな融通をきかせており、良い職場環境だと思っているのに、何が不満なのかわからない。
・従業員に当事者意識が無いため、納期に間に合わなくて社長に負担が掛かっている。
■疑ってもしょうがない!今後、介護理由の退職もあり得ると想定を
まずはじめは退職の理由が本当ではないような気がする…という点について。
長尾社長:まず相次ぐ退職の理由として介護などが多いと。ラビットさんは「嘘じゃないか?」と疑っておられるわけですね。
疑わざるを得なくなる背景がわからないので、なんとも言い難いんですけども。
ただ一般に介護の問題はいろいろなところで出てきている。介護は本当にいつ始まるかもいつ終わるかもわからないものです。
ラビットさんはまだ30代で、どちらかというと子育ての方に意識が向いているかもしれませんが、40・50代になると家族の介護が実際に切迫感を持って起こっていることはあり得るのではないかと。
疑う理由も、まあ何かしらがあるとは思うんですけども。
そういう意味で言えば今後、介護などでの退職者が出ることも考えておかなければいけないんじゃないかと思いますけどね。
松尾アナ:あまりここは疑心暗鬼にならないほうがいいですかね?
長尾社長:疑ってもしょうがないし、まあ「そうなのか」と思っていればいいんじゃないでしょうか。
■やっぱり「給料」が重要なファクターに
次に長尾社長がアドバイスしたのは「何が不満かわからない」という部分です。
長尾社長:介護が理由なら不満があったわけじゃないでしょうけども。
「本当じゃないのでは」と思うということは、ラビットさんもなんとなく違和感を感じておられるのではと思います。
何かしら不満があるとすると、まあ”給料”でしょう。
松尾アナ:お金ですか?
長尾社長:今は最低賃金がどんどん上がっておりまして。
今までは最低賃金というと「こんな安い給料でいいんかいな?」くらいの基準という意識の経営者の方が多かったと思うんですけども。これがかなり高くなってきているんですよね。
そうすると時給をそこそこ出しているつもりの会社さんでも、最低賃金に近くなっていたり。下手したら最低賃金を割っているから上げなきゃいけない…というところに差し掛かっていたり。
そういう企業が、今は非常に増えているんです。
最低賃金に近い時給で雇っている状況で、「土曜日も仕事があるよ」とか「仕事がいつも忙しいよ」となれば、「もうちょっと高いところもあるね」となりかねない。
そういう面もあるんじゃないかと思いますね。
■経営者リスナーの皆さんに意識してほしいこと
この最低賃金の上昇については、ラビットさんだけではなく、経営に携わるリスナーの皆さまに意識してほしいと長尾社長は話します。
長尾社長:まあパートの人で時給が少し高い安いで動く人はあまりいないですけども。
ラビットさんに関わらず、お聞きいただいている企業経営者の皆さんにも世間全体の相場が上がっていることはぜひ意識していただきたいと思います。
2002年では最低賃金は663円で、その時点でも「低すぎるだろ!?」くらいの基準が最低賃金だった。今はグッと上がって961円かな?東京なんかもう1072円とか。
最低賃金って言ってもそこそこ高くなっているんです。
ここのところ3%ずつ上げているので、毎年30円ずつくらい上がっているんですよ。
3%の賃上げを大企業がああだこうだ言っている間に、実はパート・アルバイトの比重が高い中小企業さんの賃金レベルが3%ずつせり上がって来ているということなんです。
だから根本的に言うと、それに見合う付加価値が上がる商売をしていく必要がある。
「賃金なんか上げろって言っても上げられないよ」じゃなくて、もう上げざるを得ないわけだから、発注元に交渉して値上げしてもらうとか、客先を分散させていく、新規開拓をして新しい仕事を取っていくなどで、給料が上がってもきちんと払えるという努力をしていかなければいけない。
そういう状況にあるということを、世の多くの経営者の方に考えてもらいたいですね。
■給料の多寡は当事者意識やプライドに反映される
話題は「従業員の当事者意識」について。こちらのお悩みもまた、給料の問題に帰結すると言います。
長尾社長:冷静に考えれば、時給1000円だと1日8時間で8000円、20営業日で16万円ですよね?
実は正社員でも地方なんかでは「基本給16万円」とか結構ある。
だけど逆に言うと最低賃金というのは、その程度の給料なわけです。
ラビットさんも当事者意識を持ってもらいたいとお考えなんですが、社員さんにプライドを持って、前向きに仕事をしてもらうには、当事者意識を持つに足る、プライドを持って仕事に取り組める給料をやはり払っていかなきゃいけない。
最低賃金は1,000円だけど「私は評価されているから1,100円もらってますよ」と思うから当事者意識も湧いてくるし、プライドも持てるわけであって。
「あなたは正社員並みの仕事っぷりで素晴らしいわね!」っていくら褒めたところで、時給が最低賃金では「あらら…」となるわけ。
ところが、これがまた経営者があんまり悪気が無いわけなんですよ。それが問題。
社員を安くこき使おうと思っている本当のブラッキーな経営者であればしょうがないですが、そうじゃなく「そこそこ払っているよね?1,000円オーバー払ってるじゃん?」と。でも実はそれは最低賃金でした…というミスマッチに気を付けてもらいたいですね。
ここ2~30年、日本の人件費は上がっていないと言われているんですが、それは全体の平均値であって、下はせり上がって来ている。
団塊の世代の給料の高い人たちがリタイアして、全体の平均値が上がっていないので「給料が上がっていない、上がっていない」と散々マスコミとかで言っていますが。
実際には上がっているので、そこに見合った付加価値を会社が産んでいかなければいけないということですね。
■『ラビット』さんへの回答まとめ
・退職理由を疑う背景もあるかもしれないが、考えてもしょうがない!
・世代によっては介護は切迫した問題。今後、介護理由の退職もあり得ると想定しよう。
・最低賃金が年々せり上がっていることを意識しよう。会社がそこそこ払っているつもりでも、世間をみるとそうではない場合も。
・当事者意識やプライドを持って仕事してもらうためにも、給料の額は重要。
・上がっていく賃金を払っていけるよう、値上げ交渉や新規開拓など、付加価値を上げる経営を目指そう。
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