ウクライナ・ロシア戦争はいつ終わる? 専門家が今後の3つのシナリオを解説
ロシアの軍事安全保障の専門家である小泉悠さんが、ウクライナ情勢の今後のシナリオを3つ解説しました。
大竹まこと「この戦争はいつまで続くのか。そしてどんな形で終わるとお考えでしょうか?」
小泉悠「この戦争がどうなるか、はっきり言うことはもちろんできないんですけども、大まかに「エスカレーションするシナリオ」と「戦闘が止まるシナリオ」と「ダラダラ続くラシナリオ」があると思います。」
- エスカレーションするシナリオ
小泉「これは核を使うとか、または総動員をかけて何百万人も人間を導入して戦うというシナリオです。やろうと思えばこれまでにもできていたわけですが、やってないんですよね。やはりプーチンは「エスカレーション」は、国民からの反発が大きいとか、国際社会からの反応が怖いとか、色々と危ないと踏んでるんじゃないかと思います。」
- 戦闘が止まるシナリオ
小泉「ゼレンスキーとプーチンがどこかで交渉するというシナリオです。アメリカは実は今年の夏ぐらいから何回かウクライナに対して「もうそろそろ交渉したらどうだ?」みたいなシグナルは出していたらしいです。ただゼレンスキーは、ものすごく反発して、これを蹴ってるんですね。やっぱりウクライナからすれば一旦停戦しても「ロシアがまた侵略してくるまでの時間的余裕を与えるだけなんじゃないの?」と見えるわけです。実際に2014年と15年にも、第1次・第2次ミンスク合意というのを結んでるんですけど、それから8年経ってロシアは戦力を回復させてまた攻めてきたわけなので、やっぱり安易に停戦してもしょうがないという感じがあるのでしょう。だから、ウクライナが停戦に応じず、プーチンも停戦強要のための核が使えないとすると、私は実は一番可能性が高いのは「ずっと今のような戦争をダラダラ続ける」ことだと思っています。」
- ダラダラ続くラシナリオ
小泉「2014年に最初にロシアとウクライナの戦争が起きてから、その後8年間、ロシアが取ってきた戦略が実はこれなんです。ウクライナの一部をずっと紛争地域化して、勝ちも負けもしない紛争をずーっとダラダラ続ける。ウクライナはそれによって国力を疲弊させるし、しかもロシアからは「兵を引いてほしければ、こういう条件を飲め」という風に強要される弱みを持つわけです。しかも紛争国家なのでNATOにも入れない。このようにロシアとしては戦争をやってるだけで、ウクライナの手を色々縛れるんですよ。こう考えると、実はこの戦争は相当長く続くのではないかという、あまり嬉しくはない見通しを持っています。」
大竹「小泉さんご自身はいかがですか?ドンバスだけ区切ってやめればればいいのにとか、どうしたらいいとお考えですか?」
小泉「ドンバスを区切って辞めるというのは、一見現実的に見えるんですけども、結局ロシアが武力を使って隣国をいじめたら何か成果があったという結果を残してしまうわけです。それはあまり良くないので、ウクライナがまだ戦え力があるうちは、私はそんなに簡単に停戦すべきではないと思っています。もちろんウクライナ人が「これでいいと」言ったらいいんですけど、ウクライナのリーダーであるゼレンスキーも「まだやるんだ」と言ってる以上は、外野が「もうそろそろ辞めなよ」と言うわけにはいかないだろうなと。どちらかというと、ここでロシアからウクライナが実力で領土をある程度取り戻せるのであれば、私はそれを支援してあげた方が、国際秩序を守るためにもなるし、日本の安全保証のためにもなると思います。」
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