斉藤一美アナ「(CSは)遠慮せず全力で相手にぶつかってほしい」
今回の記事では斉藤一美アナに、今シーズンの振り返りと引退する選手について語ってもらった。
半年間もがいたことだけは確か
6年ぶりにライオンズナイターの実況に復帰した一美アナ。この半年間の振り返りを問うと「6年前までの野球実況を担当していた20年間にはないぐらい、ライオンズの試合を観た。今まで現場に行かないときは、ダイジェスト映像などをしっかり観てはいたが、プレイボールからゲームセットまで全て観ていたわけではない。いざやってみて、1シーズン戦うことがこんなに大変なことなんだとようやくわかった。最後の残り10試合ぐらいになったときは、あと10試合見ればレギュラーシーズン終わりなんだなと思い感慨深かった。これは間違いなく来年以降に活きてくる。監督や選手に質問するのであれば、細かいところまで見ていないと無理。実況アナウンサーは多分観ることが一番大事なんだろうと思う。これだけ観ていると、あのときああだったこうだったという一番大事なプレーの情景が結構喋れたような気がする。そういうことを頭に思い浮かべながら、すらすらと喋ったというのは初めてかもしれない。1年目の割には出来たとは全然思わないが、もがいたことだけは確か」だという。一美アナに達成感はあるのか訊くと「3月25日に開幕してからこの半年間、自分が野球に関してできることは妥協せずにできたと思う。ただ満足感はない。やることはやった、今自分ができることはやった。これを土台にして来年はもっとよくしなきゃなと思うし、良くしてみせる」と来年に向けた意気込みも語ってくれた。
ライオンズは優勝争いができただけでも素晴らしい
一美アナに今シーズンのライオンズの戦いぶりについて訊くと「開幕直後の4月、一番大事な勝負の9月に合計2回の7連敗があったら優勝できるわけない。ただ去年は最下位だった。優勝争いができただけでも素晴らしいと思う」とのこと。また選手については「ドラフト1の隅田知一郎とドラフト2位の佐藤隼輔のルーキー二人にずいぶん経験積ませた。彼らがこれをベースにして来年以降どう化けてくれるんだろうという期待をしている」といい、一番成長を感じた選手について訊くと「愛斗」だという。その理由は「開幕直後と比べると5月の下旬からバットを短く持つようになってぐんと良くなって、勝負強さが増した。守備の面でも、今や佐藤友亮コーチが外野手の中心と考える選手。4月19日の試合で『愛斗が愛斗たる所以』という厳しい言葉を投げかけたが、あの一言を言ったことは全く後悔はしていない。あの時点では本当にそう思っていたから。そこから見事に脱皮してくれた。恐れ入りましたと、心の底から頭を下げた」と愛斗の成長に目を見張っていた。
CSは今の実力を余すことなく出し切ってほしい
10/8から始まるクライマックスステージについて一美アナは「もう負けたら終わりなので、今の実力を余すことなく出し切ってほしい。出し切ったらどこが足りなかったのかがわかる。結果的に勝てなかったとしたら、やりきったという感覚はなかなか得られないのかもしれないが、自分の力の現在地を知ることが大事なので、それを知るためには、遠慮せずに全力で相手にぶつかるしかない。欲を言えば、ファイナルステージまで進出して、本来の優勝チームであるオリックスにどういう形で戦えるか。芳しくない成績だったとしても、そこで見つかることは絶対にある」と期待を込めていた。
引退する選手に対する一美アナの想いを訊いた
一美アナに引退する内海哲也、十亀剣、武隈祥太の3人への思い入れを訊いた。まず内海については「巨人時代から一生懸命プレーする姿が大好き。特に内海の打席は絶対にどうにかしてやるというその気持ちが前面に出てて、喋るのが好きだった。2000投球回を達成した際のリモートインタビューで彼が『ここまで4年間、ほとんどの時間を二軍で過ごしてきた。(二軍の球場でプレーしていると)一軍の試合の歓声が否応なく聞こえてくる。あれで燃えないはずがない。これはライオンズに来て大きな発見だった』と言った。そこに言及したライオンズの選手は今までいなかった。あそこまでの実績を巨人で積んで、内海自身、図らずも故障がちでなかなか一軍に上がれなかったあの時期が長かったからこそ、余計だったのだろう」と語ってくれた。
次に十亀については「いつ話しかけても常に明るく、ちゃんと足を止めて元気に話をしてくれた人。リリーフ、抑え、そして先発。何から何でも彼はやってきた。背番号21との重圧とも戦ってきた部分もあり、彼なりに最善を尽くし続けた素晴らしい現役生活だったと思う。元々股関節に故障を抱えていて、それが悪い方に出てしまうとうまくいかないというときがあって、よくここまで投げたなと思う。彼は全力で腕を振るのだが、そのときのリリースの瞬間の顔がぐちゃぐちゃ。翌日のスポーツ紙の写真を見て「何もこの顔を選ばなくても…」と苦笑いしていたことを覚えている。でも、それほど必死の形相で投げていた。あのがむしゃらな感じが十亀剣という投手の生き様だった」と語ってくれた。
そして武隈。「所沢の秋季キャンプでの紅白戦を当時の西武ドームのバックネット裏にあるグラウンドレベルの記者席から眺めていたら、若い左ピッチャーが地面スレスレじゃないかというぐらい低めのストライクゾーンにビシッとくる良い真っすぐを投げていた。それが武隈祥太だった。あの球を観たからこそ興味が湧いた。そこからことあるごとに話しかけ続けたら、だんだん僕に対して敬語を使わなくなってきた上に、もはや呼び捨て(笑)。一番僕をいじってくる選手だった」
「9月24日のイースタン・リーグ楽天戦で彼がマウンドへ上がった。長らく苦しんだ左肩痛から復帰して2試合目の登板だった。僕は放送席で取材していたので『勇姿を拝めて嬉しかったです』とメールを送ったら『最後の登板を見られてよかったね』という返事が来た。『今シーズン最後ということですよね?』と返信をしたら無反応。すると試合後に彼が放送席に来てくれて『引退する』と聞かされた。僕は目の前であまりにも突然の告白をされて思わず落涙してしまったのだか、どうやらその後チームメートに『一美が泣いた』と言いふらしていた(笑)。現役最後のマウンドは試合前のセレモニアルピッチにする、という前代未聞のアイデアを聞いて二度驚いたが、武隈らしい引き際だなぁ…と思った。彼につけたキャッチフレーズは”照れ隠しの闘魂”。口癖は『野球はセンスでやるもの』。最後の2試合は合計2回4奪三振。「肩が限界」と言っていたが、それでも135キロのインハイ直球で空振りが取れていた。まさにセンス全開の投げっぷりだった。たまたま取材に行った二軍戦で彼の最後となる真剣勝負を目に焼きつけ、たまたま出番を与えてもらったシーズン最終戦のYouTube実況日にセレモニアルピッチ。深い縁を感じる」と語ってくれた。
激動のレギュラーシーズンが終わり、激動の現役生活を終える者もいる。ただチームはまだ進み続ける。日本シリーズで一美アナの絶叫が響くことを切に祈りたい。
文化放送ライオンズナイタースタッフ 高橋大夢
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