内閣改造・党役員人事 岸田総理の思惑と誤算~ 8月10日ニュースパレード 山本香記者取材後記
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その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。
文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
サプライズ
内閣改造・党役員人事の内容について、自民党内からはベテランや経験者を配置した「重厚内閣」「国難突破内閣」など早速、評価する声が上がっている。だが内閣の顔ぶれを見て、目玉は?何を成し遂げる内閣なのか?とたずねると誰もが口ごもる。
それが今回の改造人事をよく物語っているのではないだろうか。
ちなみに自民党のある幹部は、「一番のサプライズは、人事の時期が早まったことだ」と述べた。当初、9月初旬との観測が流れていたため、臨時国会が終わった8月初旬からお盆明けまでは安全期間。安心して夏休みが取れる時期だったはずが、8月10日に前倒しとなったことで、急遽、旅行や帰省を取りやめ、或は変更せざるを得なくなった記者や秘書などの永田町関係者が何人もでた。パック旅行をキャンセルした記者は、全額戻ってこないと恨めし気に語っていた。
政策断行内閣
日本を取り巻く諸課題は山積している。
物価高、エネルギー高、緊迫度を増す安全保障環境。台湾問題も喫緊の課題だ。冬にまとめる防衛3文書「国家安全保障戦略」「防衛大綱」「中期防衛力整備計画」に加えて防衛費の増額問題も議論が本格化する。19人の閣僚の内、14人が交代する大規模な改造を行ったことについて岸田総理は、重要ポストに経験と実力を兼ね備えたメンバーを配置することで難局を乗り越えるためだと協調し、「政策断行内閣」と名付けた。
サプライズも華やかさにもかけても、名より実を取った形だ。
党役員人事においても同様。
茂木敏充幹事長、麻生太郎副総裁は続投。今後直面する様々な政策課題をさばくことになる政務調査会長には萩生田前経済産業大臣をあてた。萩生田氏は新4役記者会見で自身の強みについて、時には聞かない力も発揮すると述べた上で「胆力」と答えた。
一方、秋の臨時国会で提出される衆議院の一票の格差をめぐる10増10減法案。
党内からすでに様々な意見が噴出し、まとめるのは容易ではないという指摘もある。この難題を担うのが森山派の領袖、森山裕氏だ。高卒で地方議員からのたたき上げ、野党からも一目置かれる存在の森山氏以外、この難題をこなせるのはいないとの判断からだ。
誤算
国難の時こそ挙党一致。だが、安倍元総理の死去によって党内力学が変化し始めている。微妙な空気が流れている中、人事を断行すれば、どんなハレーションが起きるか分からない。人事内容は一見、派閥に配慮し、バランスがとれているように見えるが、個々の心のうちまでは分からない。
萩生田氏は党の要職である政調会長に就任した。党内での地盤固めと所属する安倍派の跡目争いを有利に進める思惑とも合致する。しかし、自身が務めていた経産大臣のポストを射止めたのは同じ安倍派で会長のイスを巡るライバルでもある西村康稔氏。党内でポスト安倍は事実上2人に絞られたという見方が強まる中、この人選、振り分けに岸田総理のどのような意図が隠されているのだろうか。総裁派閥であっても所属議員は43人。党内第4位の位置にある。参議院選挙で圧勝し、今まで顔色をうかがい続けていた安倍元総理もいなくなったが、党内基盤は磐石ではない。
だからこそ今回の改造人事で、足元を固める狙いもあった。だからこそ2ヵ月前からじっくり人事構想を練ってきた岸田総理だが、最大の誤算は旧統一教会問題だった。主導権を握るためには人事を遅らせることが出来ない。しかし身体検査も追いつかない。ちなみに改造人事をめぐり官邸側が身体検査の項目にあげていたのは統一教会のほかに「五輪疑惑、幼稚園連合横領事件」だと自民党関係者が明かした。
お盆前の改造人事は、旧統一教会とのけじめをいち早く表明すること。東京五輪をめぐる汚職事件では、国会議員への事情聴取や強制捜査がお盆明けにもあるのではないかという観測があり、お盆前に人事を固める必要に迫られたのではないか。また官邸は、全日本私立幼稚園連合会をめぐる6億8千万円もの横領事件についても神経を尖らせているようだ。
時期を早めた改造人事、重厚布陣をしいた岸田総理の狙いは計算どおりか?果たして吉と出るか凶と出るのか。
岸田新内閣は、お盆明けから開かれる閉会中審査が最初の試金石となりそうだ。
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