物語で戦争は学べるのか。体験者だから可能な描写、そうでないからできる表現

物語で戦争は学べるのか。体験者だから可能な描写、そうでないからできる表現

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8月10日の「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)は、「物語で戦争は学べるのか問題」を特集した。8月15日の終戦の日を前にした、「戦争と平和を考える1週間」の3日目。全曜日中、平均年齢的に「もっとも戦争から遠い」水曜メンバーが語り合った。

西川あやの「永井さん、大島さんは戦争を知るきっかけだった作品、何がありますか?」

永井玲衣「アニメだと『火垂るの墓』とかが浮かびますけど、原爆について書かれている原民喜の『夏の花』とか、日本ではないけど『夜と霧』とかも戦争の側面ですね。ただ戦争を知る、学ぶってどういうこと? とも思います」

大島育宙「僕は小学校が特殊なところでした。担任の先生の権限が強いんですけど、手塚治虫を教材にしていたんですよ。手塚作品が学級文庫に全集でそろっていて。それを給食時間に読んでいいとか……普通ダメだろと思いますけど(笑)。中高生になると遠藤周作さんの小説『海と毒薬』を読んで衝撃を受けて。きのう青木(理)さんも名前出していた、塚本晋也監督の『野火』を観に行くのは恒例行事になっています」

物語も作者が実際に戦争を体験している作品と、そうでない作品とに分けられる。前者の中で特に有名な、中沢啓治の『はだしのゲン』についても語った。

大島「小学生のころ、児童館にあって取り合いでした。本棚に常にない状態でしたね、誰かが読んでいる」

西川「月曜日も火曜日もタイトル出てきましたけど、その理由はやはり被爆者の方の直接的な描写……。スタジオでも今、ページを見ています」

永井「直接体験して見てきたものが正直に出ているんだろうな、というのがわかりますね……」

大島「まったくこのまま憶えています。読んだときの児童館の図書室の風景とかも。みんなそうなんじゃないかな」

作者が戦争を経験していない作品として、アニメ映画『この世界の片隅に』も話題に。舞台は第二次世界大戦時の広島である。

西川「監督の片渕須直さん、原作のこうの史代さん、ともに戦後生まれ。綿密な取材をもとに描かれたものです」

大島「当時の広島の呉の建物がどうだったとか1個1個調べて、みたいに綿密に取材して再現している。そういった意味で真実性は高い」

西川「これまでにない戦争映画としての評価も高い作品で。たとえば『はだしのゲン』のようなショックな描写はほぼなく。日常描写のリアリティを追及していると」

永井「観ましたね。実際に経験しなかったとしても、こういうふうに『戦争を描くもの』に関われるんだと思えて、勇気をもらえたというか」

一方で同作には「表現がマイルドなのでは?」という声もあった。

大島「市井の生活を牧歌的に描いていますけど、そのころにも人々につつましやかな生活はあった、というのが強調された作品で。そういう意見があるのは、まあわかる。でもいちばんショッキングなシーンは、そこからの振れ幅でより衝撃的に感じましたね。『はだしのゲン』も過激な描写を紹介しましたけど、カボチャの種を屋根に干して『おいしそう』みたいな描写もある。作品というのは一面的なものではなく、いろんな要素を含んでいるものだと思います」

実体験がもとだからといってすべて事実だとも限らず、実体験でないからフィクションが多いとも限らない。3名による語らいをradikoのタイムフリー機能でも確認してほしい。

「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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