リアル99.9！刑事裁判で無罪を勝ち取った弁護士に聞く、法曹界のＤＸの現状とは？

御堂筋法律事務所は、現在、大阪事務所、東京事務所、広島事務所の３つの拠点で、弁護士９０名の体制で業務を行っている。それぞれ個性や得意分野を持った弁護士が、依頼者のために、案件に沿ったチームを組み、対応できるのが特徴だという。

文化放送・松井佐祐里アナ「改めて事業内容を教えてください」

御堂筋法律事務所・山路邦夫氏「企業を依頼者とする案件、M&Aや様々な法的規制、企業同士の契約交渉や、時には裁判を含む争いごと、外国の企業との国際取引や国際紛争などが中心です。大阪発祥の事務所ということもあり、中小企業の依頼者も多いです。弁護士数がもうすぐ100名という規模に発展・成長してきた過程で、企業法務のニーズに合わせ、様々な専門分野について、その分野を得意とする専門家の弁護士が増えてきており、建設会社を依頼者とする建築紛争に強い弁護士や、DXも関連する、IT技術や個人情報等のデータの法律問題に強い弁護士、銀行をはじめとした金融レギュレーションに強い弁護士、スタートアップ企業の資金調達や上場支援に強い弁護士、海外案件に強い弁護士などがそれぞれ複数在籍しています」

L is B代表・横井太輔氏「山路さんのお仕事内容はどんな内容になりますか？」

山路「私が担当する業務は、業種としては、建設、不動産、鉄鋼業等の関係の仕事が多く、企業同士の訴訟や紛争案件が中心です。例えば、建設業に関連するものでは、建築物の瑕疵（かし）、つまり不具合や設計との齟齬に関する損害賠償についての案件であったり、建築請負契約に関して、建物の仕様や工期の変更等があり、工事代金の金額に争いが生じている案件などです」

松井「これまでで一番印象に残っていることや、やりがいを感じる時はどんな時ですか？」

山路「最近では、廃棄物処理の刑事事件で無罪を勝ち取ったときのことが印象に残っていますね。“99.9”というドラマもありましたが、日本の刑事裁判で無罪を勝ち取るのは難しく、99.9％が有罪となります」

横井「その0.1％を勝ち取ったということですか？」

松井「すご～い」

山路「お客様も含めてチームで戦って、結果が出たときのうれしさというのは格別です。とはいえ、案件の最中は、ただただ大変という状況が多いのですが、そんな時こそ、後で良い結果が出たら、この時頑張ったことが報われるんだと思うようにしています」

横井「山路さんがDXの視点で注目していることはどんなことですか？」

山路「技術・技能の承継にDXのできることはどういうことか？ということです。」

横井「具体的にどういうことですか？」

山路「例えば、裁判の打ち合わせの中で、どのような技術が使われているのかを理解するために、建設業界の方からお話をお伺いすることもありますが、技術者の方、現場の所長さんから、驚くような技術の高さや、洗練された技能が用いられていることを知る機会が多くありました。このような技術・技能が失われることなく、承継されていくために、最新の技術やAIなどの利用が進めば、望ましいのではないかと思います」

横井「私の個人的な感覚でしかないんですけど、例えばコンクリートをひびが入らないように打つのは、職人技術ですよね。これを見てまねしなさいと言われても同じようにできないですよね。これを数値化、データ化してこの数値の時はこういう風にやるとこうなるというのを見える化することがITが求められているのかなと思います」

横井「法曹界のDX、デジタル化というのは、進んできているのでしょうか？」

山路「弁護士の世界も、徒弟制のように、先輩の仕事を見て学んでいくという一種の職人芸的な知の継承というものが必要と思われていましたが、今では、契約書をチェックするためのデジタルツールや膨大な判例、資料から欲しい情報を適切に取得するための検索、フォレンジックサービスなど、いわゆるリーガルテックと呼ばれる技術が多く開発されており、こういったサービスが業界に大きな変革をもたらすと言われています。下積み時代の重要さというのは、認識しているつもりですが、今の若い方は、いかに効率よく技術や知識が身に付けられるかということに興味があり、またそのためにデジタルを使うことにも抵抗がないと思いますので、業界全体として、新しい技術を導入して、若い方を迎え入れ、明るい未来を見せられる体制を整えることが大事だと思います」

「L is B presents　現場DX研究所」は毎週月曜20時～20時30分まで文化放送（AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko）で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。日本最大級の音声プラットフォーム「Voicy」でもアーカイブ配信しています。