自社の持続可能性が置き去りに?SDGsとの向き合い方『長尾一洋 ラジオde経営塾』7月4日(月)放送
約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答!
今回は、何かと話題のSDGsについて。サスティナブルビジネスのアイディアを検討中の方からのお悩みです。
■『アイディアは出るけれど、儲けの出るモデルは…』
ご相談者はラジオネーム『フルポン』さん
職業:会社員
業種:メーカー
規模:約1200人
『船舶用電子部品の製造メーカーで新規事業のプロジェクトに参画しています。
世間ではSDGsと騒がれている中、当社でもサスティナブルビジネスの企画立案を求められています。
社会課題を解決する持続可能性のあるアイディアは出せども、儲けを出すモデルに落ちていきません。またサスティナブルな商品はどうしてもコストがかかり高額になってしまいます。
このご時世で中長期の採算を見据えた投資が難しい中、長尾さんはサスティナブルビジネスをどう捉えているのか、どう立案していけばいいのか、考え方などご意見を賜れば幸いです。』
■改めて『SDGs』とは?
SDGs(Sustainable Development Goals)は日本語では『持続可能な開発目標』。
2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標で、2015年9月国連サミットで採択された。17のゴール・169のターゲットが設定され、地球上の「誰一人取り残さない」ことが誓われている。
【17のゴール】貧困をなくそう/飢餓をゼロに/すべての人に健康と福祉を/質の高い教育をみんなに/ジェンダー平等を実現しよう/安全な水とトイレを世界中に/エネルギーをみんなに そしてクリーンに/働きがいも経済成長も/産業と技術革新の基盤をつくろう/人や国の不平等をなくそう/住み続けられるまちづくりを/つくる責任つかう責任/気候変動に具体的な対策を/海の豊かさを守ろう/陸の豊かさも守ろう/平和と公正をすべての人に/パートナーシップで目標を達成しよう
■自社のサスティナビリティが危なくなったら本末転倒!
ご相談者さんの会社は1200人規模。このような大規模な会社であれば上場をされているかも…と長尾社長。その場合は対外的に自社の考え方をアピールする必要があるので、多くの大企業がSDGsに取り組んでいる。
ただし…
長尾社長:地球の持続可能性を高める取り組みをしたら、自社の持続可能性が低くなる、もしくは自社が消えてなくなってしまったら本末転倒なわけなんでね。
ご質問で挙げられたように、サスティナブルにばかり集中すればコストアップは必至。本業にマイナスが出て「地球には優しかったけれど本業が傾きました」なんて、笑えない話になってしまう懸念もある。
■どんな会社でもとっかかりはあるはず!
SDGsには17のゴールと169のターゲットがあり、その内容や分野は多岐にわたり、さらに「誰1人取り残さない」のが国連の考えだ。
それなので、無理に新しいことをしなくとも、皆さんの会社のそれぞれの本業がSDGsのどこかしらに引っかかる、何かしらのテーマに当てはまる部分はあるのではないかと長尾社長は考える。
例えば雇用を創出したり、給料をきちんと払っているなら「貧困をなくそう」につながっているとも言える。
長尾社長:そもそもは自社の本業が、どう世のため人のために役に立っているかを見直し、そこを追求していくことがSDGsにも適うことなんだと考えるべきです。
もし「うちの会社、資源は無駄遣いしまくり、地球環境に悪いものを排出しまくっていて…」と何も当てはまらないと言うんなら、そもそもその問題をなんとかしろよということになります(笑)
松尾アナ:フルポンさんの会社は船舶用電子部品の製造メーカー。まず会社であることで、貧困をなくそう、成長と雇用、イノベーションなどに関わっているし、製品を通じては、海洋資源や気候変動などヒットするところが色々ありそうですね!
長尾社長:そのあたりで貢献の切り口を見つけていくのが王道かと。
ただその時に「素材を再生可能なものにするべきだ!」とか言い出すと、やはりコストアップに。そもそも本業でお役に立てるはずだったものが高くなってしまうと「逆ですよね?」となります。やりすぎる、考えすぎるのは良くないのではないかと思いますね。
■中小企業では、特にやりすぎ注意!
上場企業が盛んにSDGsに取り組む背景には、もう1つESG投資(環境・社会・企業統治に配慮した経営を行っている企業を選んで行う投資)がある。
ESGへの配慮が株価に影響を与えることになるので、上場企業の場合はSDGsにも取り組まざるを得ない部分はあると長尾社長。
とはいえ、未上場の中小企業までこれにならう必要はあるのだろうか。
長尾社長:「遅れてはなるものか!」とSDGsに取り組もうとなって、そこで変にコストがかかることを一生懸命頑張ってしまうのはちょっと…。お宅の会社のサスティナビリティは大丈夫なんですか?と聞きたくなることもありますね。
ただし逆に本業がSDGsの促進に合致している場合は、逆にSDGs!SDGs!と騒いだ方がいいとのこと。
長尾社長:「その場合は、うちの商品をSDGs使うとになりますよー!」とか、どんどん言ったらいいと思います。
■世の風潮に一喜一憂せず、本来のパーパスを突き詰めよう
また現在、世の中で騒がれていることが必ずしも正しいかはわからない…と長尾社長は話す。
長尾社長:ESG投資も一時期は散々話題となったものの、ウクライナ情勢などでエネルギー高騰となった瞬間に「ESG投資で大丈夫なの?パフォーマンス落ちてるんじゃないの?」と言われるようにになっちゃった。ある意味、誰かの都合で言われている可能性もあるのだから、一喜一憂しないのが非常に重要です。
それよりパーパスみたいなもので、自社が何によって世のため人のために貢献していくのかを突き詰めていくこと。そうしたらSDGsの中に幾つか当てはまる項目がありましたねというのが一番綺麗な形なのではないかと思いますね。
■フルポンさんへの回答まとめ
・地球にやさしくしているうちに自社が危なくなったら本末転倒!
・SDGsが掲げるテーマは多岐にわたるので、どんな会社でも本業との関連付けはできるはず。
・SDGsに傾倒しすぎてコストアップすることで、今まで世の役に立っていた事業や商品が高くなってはしょうがない。やりすぎ、考えすぎには注意!
・ESG投資という背景もあり、上場企業ではSDGsに取り組まざるを得ない側面も。
・未上場の中小企業が、大企業と足並みをそろえるように対応する必要はない。
・自社の本業や使命、存在意義を突き詰めていく中で、SDGsに合致するものが見つかるのが良い形。
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