DXを任された経理マンのお悩みに、長尾社長が秘策を伝授!『長尾一洋 ラジオde経営塾』5月9日(月)放送
約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答。
今回は『DX(デジタルトランスフォーメーション)』に関するご相談。経理マンでありながらDX担当も兼務することになった方からのお困りごとが寄せられました。
■単なるシステム導入で終わらないため、
どんな角度から入ればいいのか?
ご相談者はラジオネーム『ごんた』さんです。
職業:会社員
業種:印刷
ご相談の背景:
130人ほどの印刷会社で経理を担当しているごんたさん。
会社がDXを推進することになるも、情報システム等の組織はなく、パソコンに詳しいゴン太さんがこの4月からDX推進担当も兼務することに…。
「長尾さんの(中小企業のDXについての)コラムを読みました。コラムにあった通り、まさに経営陣も私のような担当レベルも、デジタル化の意味をちゃんと理解していないゆえ、どこから手をつけていいかわからない状態です。単なるシステム導入にならないために、どんな角度から入っていけばいいのでしょうか?(一部略)」
【※コラムとは…BtoBビジネスメディア『イノベーションズアイ 』にて長尾社長が連載中のコラム「デジタル人材がいない中小企業のためのDX」】
「コラムを読んでいただいたとのこと、素晴らしい方ですね!(笑)」と長尾社長。DXに取り組む経理マンごんたさんに、どのようなアドバイスをしたのでしょうか?
■中小企業ではシステム導入によるコスト削減効果は限定的
中小企業がDX推進を目指すも、単なるシステム導入に終わってしまう…という事態に陥りやすいのには理由があると言います。
もともとデジタルは、コストダウンや効率アップに非常に有効。特に大企業であれば、従来かかっているコストが大きいので、デジタル化による削減幅も非常に大きくなります。
しかし中小企業では、もとの費用がそこまで大きくない場合が多いもの。コストダウンのためのシステム導入は、どんなに成功しても、今までかかっていた総額をゼロにするのが限界。効果は限定的になり、システム導入がDXと呼べるものにまではつながらない場合が多いと長尾社長は話します。
では、中小企業に有効なデジタル化とはどのようなものでしょうか。
■中小企業でのDXは「増やす」場面で
「ご質問の趣旨であれば、売り上げを上げたり、客数を増やす、お客様とのやり取りの接点を良くする(UI、UXなど)などに、デジタルを使うことをおすすめします」と長尾社長。
もともとの費用分しか削減幅が無いコストダウンに比べ、売り上げアップや客数増、UIの改善は効果に限界がありません。それなので中小企業でもデジタルの力を存分に使えるというわけです。
さらに長尾社長によれば「客数や売り上げを増やす場面で、なぜデジタル化の効果が大きくなるかというと、限界費用がゼロだから」とのこと。
アナログであれば、人が動く、紙を使うなど、やればやるほどコストが付随的についてきますが、デジタルをうまく使えば、追加的にかかる費用は限りなく少なくなります。
…と、お悩みが解決したかと思われたその時!
「…ということで売り上げや客数を増やすところにDXを使ってほしいんですけれども…。”けれども”なんです。ご相談者は経理のご担当です…」。
長尾社長からちょっと心配なお話が!?
■経理部門から営業系には言い難い?
「ご相談者のキャラにもよりますが、経理発信で『営業のやり方を変えていけ!』とは、非常に言いにくいところです。絶対文句言われることになりますよね(笑)」。
これはお勤めの皆さんは、感覚的によくわかるのではないでしょうか。
そんな場合も想定し、経営がDXへの理解を深め、しっかりと音頭を取る役割を担うことが非常に重要だと長尾社長は考えます。
そこで八木アナから「経理の立場から、何か会社を変えていこうとしたら、経理部門でできることはどのようなことですか?」という質問が飛びだしました。
「それでは、秘策を授けましょう…」。長尾社長が授ける、経理マンだから発動できる秘策とは…。
■長尾社長が授ける経理マンならではの秘策「電帳法」
長尾社長の秘策、それは今年1月に改正された『電子帳簿保存法(電帳法)』。
これに伴い電子取引について電磁的記録を保存することが義務付けられました。2年間の猶予が設けられ、実質的には2024年の1月から義務化となります。
経理部門の方々であれば「義務化に向けて準備が必要ですよ!法律で決まっていますよ!」
という形で、営業部門をデジタルの世界にいざなえる…と長尾社長。
取り組みのポイントは『分散入力・即時処理』。
従来型の会計処理では、社内の情報を紙を経由して経理に集め、経理が一括入力・一括処理を行っていました。これは経理をわかる人が一発で行う方が効率が良かったから。
この一括入力・一括処理の流れをそのまま電子に置き換えても、データをメール等で集め、結局経理がもう1回処理を行うことになります。これでは紙のコストなどが多少下がる程度です。
そこで『分散入力』。領収書などは各社員がスキャンやスマホのカメラ機能を使って入力できるように。
入力されたものは『即時処理』。各々が入力した瞬間に集計され、会計的な処理が進むようにします。
これが進めば、拠点間のファックスや社内便のような手間も減り、経理業務の効率化、処理スピードのアップにつながります。
この分散入力・即時処理を進める際の難関は、各社員さんに入力のための少しの時間を取ってもらう必要があること。
長尾社長からは
「絶対、社内から『そんなんできるかよ、めんどくさい!今まで紙で渡して済んでいたのに…』って言われるので、『いやいや、そこをなんとか!』と、頑張っていただきたい!」
と激励が送られました。
この電帳法を端緒としたシステム導入は、前段の”売り上げや客数増につなげる取り組み”という段階まではいかないものの、社内のプロセスを変え、DXに向けて改革していく第一歩としては大変有効です。
■ごんたさんへの回答まとめ
・コストダウンや効率化のためのシステム導入は有効だが、中小企業では削減できるコストの規模が大きくないため、DXと呼べるものまでにはつながりにくい。
・中小企業において、デジタルの力は、むしろ売り上げや客数を増やすこと、UI/UXの改善など、伸び代の限界が無い分野で使うのがおすすめ。
・DX担当者から営業部門には言い出しにくい場合も。その際は、経営陣が理解を深めしっかり音頭を取るべし!
・経理マンだからこそ使える秘策『電帳法』。電子取引の電磁記録が義務化へ。それに向けた準備を、デジタル化への第一歩として活用しよう。ポイントは社内のプロセスを『分散入力・即時処理』にしていくこと!
■長尾社長へのご相談を募集中!
『長尾一洋 ラジオde経営塾』では、パーソナリティ長尾一洋へのご相談やメッセージを募集しています。
お仕事のお悩みや、経営戦略のご相談などに長尾一洋が番組内でじっくりご回答いたします。