6シーズンぶりの勝利実況!奏でたのは東尾修と斉藤一美の日本一やんちゃなデュオだった!

6シーズンぶりの勝利実況!奏でたのは東尾修と斉藤一美の日本一やんちゃなデュオだった!

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4月19日放送のライオンズナイターは、斉藤一美アナウンサーの6シーズンぶりのライオンズナイター勝利実況となった。
斉藤一美アナに、6シーズンぶりの勝利実況を終えた心境や解説、東尾修さんとの関係性について語ってもらった。

目次

  1. 6シーズンぶりの勝利実況も、感じたのは恥ずかしさ?
  2. スミスは投げること以外の投手としての素質が備わっている
  3. 東尾修と斉藤一美のデュオが織り成す緻密な”遠慮”のないハーモニー
  4. 愛斗が愛斗たる所以
  5. 開幕から1ヶ月

6シーズンぶりの勝利実況も、感じたのは恥ずかしさ?

斉藤一美アナに、6シーズンぶりのライオンズナイター勝利実況を終えた心境を訊いてみると「勝ったときの喋り方を完全に忘れていた」と苦笑いを浮かべながら答えてくれた。

一美アナは事前に試合後のタイムスケジュールをチェックしていたが「ヒーローインタビューがあることはわかっていたけど、勝利監督インタビューがあることをすっかり失念していた」と明かしてくれた。

一美アナといえども不意をつかれてしまったらしく「試合終了後、ディレクターから現場での放送を終了する時刻が提示されるが、試合終了から20分ぐらいあった。ヒーローインタビューが終わってからも結構時間があるな、と思った。解説の東尾さんと、こういうこと喋ろう…ああいうこと喋ろう・・・というのをヒーローインタビューを聴きながらあれこれシミュレーションしていた。ただその後、辻監督の勝利インタビューが入ることを全く計算に入れてなかったので、全部無しになってしまった。放送上は大丈夫だったが、一瞬ちょっと差し込まれた感じがした(笑)内角高めに速めの球が来てのけ反った感じ。その、のけ反った様を自分の中で感じてしまったのが恥ずかしかった」と時折照れ笑いを浮かべていた。

スミスは投げること以外の投手としての素質が備わっている

この試合で来日初登板初先発、そして7回までノーヒットピッチングと鮮烈なデビューを果たしたバーチ・スミスについて一美アナは「力でガンガン押していくタイプで、見ていてそして喋っていてとても気持ちよかった。初回の3アウト目は高めの155km空振り三振で松坂大輔のデビュー戦を思い出した。今どきの先発の外国人投手が力で押すタイプで、ボールを動かさずにフォーシームで勝負するというのは珍しいなと思った」とのこと。ちなみに一美アナは昔から新外国人投手の初先発試合によく当たるらしい。

7回までノーヒットピッチングも交代したことについて問うと「6年前だったらドキドキしてたと思うが、今は全然。自分にふてぶてしさが備わったとも思えるが、佐々木朗希の完全試合と完全試合未遂があったので、それを見てしまうとノーヒットノーランくらいあるよね、と思ってしまう。佐々木朗希という存在はすごく大きい。試合前の辻監督のインタビューでも放送上カットされたが100球メドということも聞いていたので、7回での交代はある程度読めた。ましてや8回完全投球でマウンドを降りた人がいるんだから(笑)そりゃ7回で交代する人いるよ、と思った」とのこと。佐々木朗希の存在はこういってところにも影響を与えていたのだ。

またスミスが牽制で刺したシーンについて訊くと一美アナは「東尾さんは2.3球投げたあたりで『体の使い方のバランスが良い』と見抜いていた。そこが牽制球のうまさに現れていたのだと思う。おそらくバランスが良いということはバント処理もうまいのだろう。投げること以外の投手としての資質が備わっているのではないか。昔、元近鉄の岩隈久志さんが西武ドームで先発した際に、東尾さんが解説で『長身で手足も長いピッチャーの立ち上がりは、神経が手の指先や足の爪先まで行き届くのは時間がかかる』と言っていた。外国人投手は長身が多い。実際スミスも193cmあるし、それでバント処理や牽制球、クイックができたら凄いなと思う」とその時点ではまだ表れていない資質にも期待をしてしまうようなデビュー戦だった。

また東尾さんの野球眼には相変わらず感嘆してしまうし、一美アナもそんな昔の話が良く出てくるなと思ったのだが、それには一美アナの東尾さんとの関わり方に秘密があった。

東尾修と斉藤一美のデュオが織り成す緻密な”遠慮”のないハーモニー

”配慮はするが遠慮はない内角攻め解説”…東尾修さんに一美アナがつけた二つ名だ。
現役時代のプレースタイルから豪快なイメージがあるが、その解説はいたって緻密だ。そんな東尾さんと一美アナはどのようにして関係性を築いていったのか。
「東尾さんが監督をお辞めになって解説に戻って来た年が2002年。それまで野球の実況はあくまでも、自分が再びワイド番組に戻るための腰掛けの期間だった。今考えるとものすごく適当にやっていた。野球に入り込まずに表層的なプレーだけを追って、テンポ良く喋ってなるべく間違えず、良いプレーがあったら感情のままに大きな声を出す、といった感じでやっていて、それでいけると思っていた。でもやっぱり野球をちゃんと勉強していなかったから、解説とのやりとりでうまくいかないことがあった。でもそれは解説の方々の優しさで包んでもらって、許してもらっていたんだと思う。ただ東尾さんが帰ってくるとなると大変だと思った。解説の皆さんはどなたも素晴らしいが、東尾さんは独特だし、勉強していない者にはものすごく厳しいのも知っていた。だからまずこの人の喋ることや野球観を勉強しようと思った。当然ながら自分とのやりとりもそうだが、他人の実況の時のやり取りの中で”知らなかった!驚いた!”と思ったことは全てメモにした。次にご一緒した時にそれを元に喋ったら『よく覚えているな』と言ってもらって、徐々に懐に入ることができた。そうやって関係性を築いていった」という過去を明かしてくれた。

一美アナは「遠征先の飲み会の場でとことん付き合うパターンではなく、あくまでも仕事の場で”東尾修”という大人物と向き合ってきた」という。
「野球を見る上で大事な視点、気づきを与えてくれるのが解説」と前置きしたうえで「その中でも、聞いたこともないような野球の話を放り込んでくるのが東尾さん。実況としても燃えてくる」と語ってくれた。

最後に「昔、人づてに聞いたのだが、東尾さんは『一美と喋ってると本当に疲れる。けど面白い!』と言ってくれていたらしい」と嬉しそうに明かしてくれた。

東尾修と斉藤一美のデュオが織り成す緻密な”遠慮”のないハーモニーが鳴り響く奇跡に感謝しなければならないだろう。

愛斗が愛斗たる所以

そんな”遠慮”のない一美アナだからこそ出た言葉なのだろう。この試合2回裏二死1,2塁でバッターは愛斗、カウント3-1から5球目の甘い球を打ち損じてファールにした場面で一美アナは実況で「愛斗が愛斗たる所以」と発言した。それに対し解説の東尾さんも「そこまでいわなくても」と苦笑いを浮かべていたように、聴く側の捉え方によっては印象が悪いものかもしれない。

一美アナに真意を訊くと「愛斗がとにかく好き。才能も買っている。ただ、絶好球を見逃したり打ち損じたりすることが本当に多い。あの時も絶好球を打ち損じていた。だから”愛斗が愛斗たる所以”と発言した」とのことだが、「ライオンズファンとしての感情が剥き出しになってしまったかなと思う。このままじゃダメだぞ!という気持ちになってしまい厳しい言葉が出てしまった。あそこまで言っちゃいけなかったかなと思う」と反省していた。

ただこういった厳しい言葉については「誤解を生むかもしれないが”言いたいこと”は言う。”絶対に言ってはいけないこと”は言わない。その第1フィルターを突破したら、ほとんどのことは”言う”と思う。寸止めしている実況はすごく嫌なので」とのことだった。

やはり一美アナの”野球が好き”という感情や”選手への愛情”はものすごいものだなと思う。だからこそ愛情の裏返しとして厳しい言葉も出てしまうのだ。
最後に「放送は難しいなと思う」とボソッとつぶやいていた姿がとてつもなく印象的だった。

開幕から1ヶ月

一美アナにライオンズの開幕してからの1ヶ月を振り返ってもらった。
「山あり谷ありだと思う。そういう方が人間らしく愛おしい。昨年は最下位だったチームだけに発展途上なんだろう。一時期弱くなっちゃうのかなと思っていたが、よくここまで立て直したなと思う」とのこと。

「今まで打てなかった人が打てるようになったことが凄い」とし「ライオンズは復元力があるチーム。それがチームとしての伝統。土井正博さんが『大木が切り倒されると、その大木によって陽が当たらなかった木が育つ。大スターがアクシデントや移籍でいなくなってどうしよう…となっても絶対、育つ』とよくおっしゃっていた。ライオンズはそれができるチームだということを今まで見てきた。陽に当たった小さくて細い木の育ち方は、以前よりほんの少し遅いイメージではあるが、確実に育っている。それが感じられるのがすごく面白い」と若手の成長を感じた1ヶ月だったとのこと。

一方ではものすごく寂しい事実もあるという。「それは栗山と中村が打てていないこと。4/19の試合前の辻監督インタビューで『栗山と中村の打席では良くなる兆しが見えない。辻監督は兆しは見えているのか』と伺ったところはっきりと『見えません』とおっしゃった。結局その日に今シーズン初めて2人してスタメンを外れた。この試合も勝ったが、栗山・中村を欠いてもチームが勝てているという事実がものすごく複雑。このままで終わる2人ではないと思うし、今のチームに栗山と中村の打棒復活が上乗せされたら、相当点が取れると思う。僕は彼らのことを信じているし、2人の打棒復活を祈っている」と語ってくれた。

新緑生い茂る木々の中に”骨と牙”を研ぎ直した双獅子の声が響く時、3年ぶりの頂点が見えてくるかもしれない。

文化放送ライオンズナイタースタッフ 高橋大夢

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