中国はロシアのウクライナ侵攻を知らされていなかった? ~3月7日(月) ニュースワイドSAKIDORI!
ロシアによるウクライナ侵攻はいつまで続くのだろうか。
朝日新聞編集委員の峯村健司氏が「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」に
生出演し、解説した。
ウクライナの原子力規制当局は6日、核物質を扱う東部ハリコフの
物理技術研究所がロシアの攻撃を受け、複数の施設が破壊、または損傷したと
発表。またウクライナ南東部のマリウポリでは、避難ルート=人道回廊設置の
準備が進められたものの、AP通信によるとロシア側の砲撃で回避は実現
しなかった。
停戦の実現に向け、ウクライナは中国が仲介役を担うことを期待しているが、
中国側は慎重な姿勢を見せている。
今後のウクライナ情勢と中国の動きについて、朝日新書「潜入中国 厳戒現場に
迫った特派員の2000日」の著者、朝日新聞編集委員の峯村健司氏に聞いた。
峯村氏は今のロシアの動きについて、軍事侵攻が当初のプーチン大統領の想定より
かなり遅れていると指摘。そのため、停戦交渉はその時間稼ぎとしか見えないと
分析する。
「今朝、アメリカの国防総省の関係者とやりとりして分かったことだが、
キエフに向かうロシア軍の車列が60キロにも及んでいるのは、ウクライナ軍が
上手い攻撃をしてロシア軍の侵攻を止めている可能性が高いからといえる。
ウクライナ軍はロシア軍に比べ兵力は弱いが、かなり頭を使ってロシア軍の
弱い部分を狙っている。例えば補給の燃料を積んでいるトラックなどを、
ドローンを使ってピンポイントで攻撃している。補給トラックは周りのトラックに
比べて大きいため標的にしやすいようだ。
侵攻が進まないのはロシア軍のミスではなく、ウクライナ軍が上手く攻撃して
いるからだとアメリカ側は見ている」と解説した。
このようなウクライナ軍の戦い方について峯村氏は、
「アメリカ軍が指導したと思える。2014年のクリミア侵攻の時にはウクライナは
ボロ負けしてしまった。そのためそれ以降、100人余りのアメリカの軍事顧問団が
ウクライナに送り込まれ、戦い方などインテリジェンスについて教えてきたと
言われている。その結果が現れ、プーチン大統領からすると誤算、ウクライナから
すれば予想以上の勝利につながっているとようだ」と述べた。
では、ロシア最大の貿易相手国である中国は、ロシアのウクライナ侵攻について
どの程度影響力を持っているのだろうか。
「影響力は相当あると思う。いま中国が仲介に動いていないのは、やる気がない
からだ」とした上で、
「ロシアは2014年から経済制裁を受けているため、中国しか頼れない状況と
なっている。つまり中国が本気になって動けば充分停戦までこぎ着けられるのでは。
しかし中国側からするとロシアとウクライナは痛し痒しの関係となっている。
中国とロシアは密の関係だが、同時にウクライナから見ると中国は最大の
貿易国で、中国から見ると初めての空母をウクライナから購入したというように、
この両国も密な関係となっているからだ。つまり中国としてはどちらにもつけない
状況になっている。とは言うものの、中国はロシアにもウクライナにも影響力を
持っているため、進んで仲介役を引き受けるべきだと思う」と述べた。
さらに峯村氏は、
「実は2013年に中国とウクライナの間で戦略的パートナーシップを結んでいる。
この中では、かつてウクライナがソ連からもらった核兵器を放棄したことを讃え、
もしウクライナが核兵器を持った国から威嚇された場合、中国が助けに出るという
共同声明を結んでいる。本来ならプーチン大統領が核で威嚇している今、中国は
ウクライナを助けなければならない。しかし実際にそういう動きをしていないのは
1つにはロシアとの密な関係があるからで、もう1つは台湾問題があるから。
つまり中国が台湾に侵攻した場合、ロシアがどう出てくるかが想定できないため、
中国はロシアに対してウクライナ侵攻をやめろとは言えない」と解説。
その上で、
「このような約束があるのだから、ゼレンスキー大統領は中国に対してもっと
主張すべきだと思うし、国際社会ももっとその事を言うべきだと思う。しかし
この取り決めにスポットが当たっておらず、軽視されているのが現状。中国は
自身が大国であると常日頃から発言しているがゆえに、大国ならしっかり約束は
守るよう、世界が説得することは大事なことだ」と強調した。
続いて、在ウクライナ中国大使館の動きについて峯村氏は、
「キエフは習近平国家主席が一番力を入れている『一帯一路』構想の拠点と
なっていて、中国からの労働者や留学生がたくさん住んでいる。しかし彼らの
脱出は遅れている。その最大の理由は中国大使館の注意喚起が非常に遅れたためで、
ロシアの軍事侵攻が始まる前日くらいに、やっと避難勧告を出した。加えて、
アメリカはかなり前から『危ない』と言っていたにもかかわらず、中国はその
発言を『騒ぎすぎだと』批判していた。このことから推察するに、中国とロシアは
仲がいいと言われているが、本当のことを教えているわけではないのではないか。
つまり、ウクライナ侵攻の日を中国に教えていなかったのではないか。
そう考える方が合理的だ。そのため中国政府は非常に慌てているようで、
これから先どう動けばいいのか決め切れていないように思われる」と分析した。
ここで月曜コメンテーターで元衆議院議員の金子恵美氏から、
「このタイミングで仲介に乗り出せば中国の力を世界に示すことできるはず
なのに、それをしてこないのは何か考えがあるからなのか?」との質問が。
峯村氏は、
「理由は2つあると思う。1つは台湾問題。中国が台湾に侵攻した際、ロシアに
支持して欲しいと考えているからだ。そしてもう1つが習近平主席とプーチン
大統領の個人的な関係の深さ。習近平氏がトップとなって2週間後、真っ先に
訪問したのがロシアだった。その会談ではお互いがすぐにハグし合うほどの
密接ぶりだった。その後、38回も会談を行っていることを考えると、
この2人の関係を崩してまで、強い姿勢には出られないということではないか。」
中国の王毅国務委員兼外相は7日、オンラインでの記者会見で、
「必要な時に、国際社会と共に必要な仲裁をしたい」と述べた。
仲裁の具体的な時期には言及しなかったものの、深入りを避けるこれまでの
態度を改めた。ただ、「必要な時」とはいつなのか。「必要な仲裁」とは何か。
今後の中国の動向も注視したい。
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