吉崎達彦氏「ロシアのウクライナ侵攻で世界中に起きているエネルギー問題とは?」

吉崎達彦氏「ロシアのウクライナ侵攻で世界中に起きているエネルギー問題とは?」

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エコノミストの吉崎達彦氏は3月8日の「くにまるジャパン極」(文化放送)で、ロシアのウクライナ侵攻によって起きている深刻なエネルギー問題について解説した。

野村邦丸アナ「今日は『ウクライナのエネルギー・世界のエネルギー』というお話ですが」

吉崎「石油が昨日1バレル130ドルを越えたりして大変な変化が起きているわけですね。その中で一番大きな問題は、去年の暮れにイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26・気候変動枠組条約締約国会議で打ち出した方針が根本から多分見直しになるってことじゃないかと思います。昨日の日経新聞の経済教室でトーマス・セドラチェクというチェコ共和国の経済学者が書いている話が結構強烈なんですけど、彼は『戦争が始まったということは今の形の成長戦略・欧州グリーンディールには誰も関心を示さなくなるだろう』ということを言っている。理屈から言ったら、今こそ再生可能エネルギーでエネルギーを満たすことが出来ればロシアなんて要らないよって言えるわけなんですが、それは多分間に合わない。今現在すでに石油の3割、天然ガスの5割をヨーロッパはロシアに依存していて、これをいきなりゼロには多分出来ないと思うんですが、それをゼロにしていく過程で物凄い色んなトラブルが起きるし、値段も上がるってことになると思うんです。石炭や原子力も当然動かさなきゃいけなくなるし」

さらに、こう続ける。

吉崎「すでにドイツなんかは、GDP比2%まで軍事費を上げるって言ってますよね。それで1千億ユーロそれにボンッとぶち込む!みたいな話も出ていて、そうすると今後再生可能なエネルギーに必要な投資、そういったものにお金が回らなくなる。だから、ほんの去年の11月12月に言っていた話がかなり狂っちゃった。しかも、セドラチェクさんが嘆いているのは、COP26にはロシアも入ってたんだと。ただその時から彼らは戦争の準備をしていた。こんな人たちともう一回脱炭素の話が出来るか!?そりゃ無理だよねっていうことですね」

邦丸「今回の原油高騰については日本政府も石油元売り会社への補助金の上限を現在の5円から25円にしますよって言ってるんですが、この25円の枠もとっくに通り越しそうだと。オイルショックを私も経験してますけど、油というものは色んなものに影響を与えていて、関連していくととんでもないことになっていく。そこで吉崎さんひとつ伺いたいのは、OPECですか、中東の産油国はちょっと蛇口を緩めてくれればいいんじゃないかと思うんですが、なかなか緩めようとしない、これ何でなんですか?」

吉崎「脱炭素が完全に崩れたと思えば、遠慮なく来るでしょうね。で、アメリカのシェールガスはもうかなりお金が回り始めているみたいです。ここも要は2050年カーボンニュートラルって風に思ったら、その時は石油を誰も買わなくなるわけですから、そうすると投資は控えますよね。その状態がいつまで続くかだと思います」

この事態は、色んな人の考え方も変えているようで

吉崎「最近になってアメリカ・テスラ社のイーロン・マスク社長が『もう、こうなったら国内で石油開発するしかないんじゃないか』ってツイートしたって言うのが結構ニュースになっていますが、元々電気自動車を作っている会社の人だからもちろんグリーン志向なんだけど、もうそんなことは言っていられないだろうって言う話が出始めていると言うことですよね」

この戦争が長引けば長引くほど、世界中でエネルギー問題がどんどん深刻化し、我々日本人の生活にも大きな影響が出て来そうなだけに、一刻も早く収束することを願うばかりだ。

 

「くにまるジャパン極」は平日朝9~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。吉崎達彦氏はコメンテーターとして毎週火曜に登場。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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