いとうあさこインタビュー「文化放送開局70周年 きっかけは ラジオ」
3月31日(木)に文化放送が開局70 周年を迎えるにあたり、「きっかけはラジオ」をテーマとした様々な企画を展開します。
3月28日(月)からの1 週間を「開局70 周年ウィーク」と銘打ち、開局記念当日となる3月31日(木)から4月3日(日)にかけてはレギュラー番組も含めた『70 時間特番』を放送します。
今回は、関ジャニ∞・村上信五さん、田村淳さんと共に「開局70 周年ウィーク」のスペシャルアンバサダー、そして『70 時間特番』のメインパーソナリティを務める、いとうあさこさんにお話をうかがいました。
※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2022年3月号に掲載されたインタビューです。
「みんな生きてる」を感じるラジオ
─ 『ラジオのあさこ』が2018 年4月にスタートしてから4 年が経とうとしています。
いとう ありがたいですね。土曜の朝という時間帯に、思った以上にいろいろな方が聴いてくださって。運転中の方が聴いてくださるのは想像していたんですけど、他にも、通勤中の方や、お子さんの運動靴を洗いながらという方、マラソンが趣味で走りながら聴いてくださる方もいらっしゃいます。
最近の放送では、長期入院中の方から「平日はリハビリでしんどくて忙しいけど、土曜の朝は退屈で、このラジオがあってよかった」というメールを頂戴しました。「ああ、なんか、生きてるな」と。「みんな生きてる。すごいな」ということを、毎週いろいろな方から教えていただいていると感じます。
皆さんの生活を見せていただいている感覚になります。別に大事件じゃなくても、その方にとっては大切な出来事だということもありますし。それにメールを書くのって手間がかかるじゃないですか。ご高齢の方から、息子さんに教わりながら3 時間かけてお書きになったというメールを頂戴したこともあります。ありがたいとしか言いようがないですね。
「言葉だけ」で伝えるラジオの面白さ
─ 『大竹まこと ゴールデンラジオ!』の水曜レポーターは、2009 年10月からご出演が続いています。
いとう 最初は忘れもしない、岡山からの放送にゲストで呼ばれたのがきっかけでした。あれがすべてのご縁だと思っていて。地方に呼ぶわけだから普段よりお金がかかるわけですよね。だから、コンビの芸人を呼ぶよりはピン(一人)のほうが安上がりということで、「ピン芸人で、マネージャーなしで現場まで来られる」という条件を満たしたのが私だったんです(笑)
それから半年後ぐらいにレポーターとしてお声がけいただきました。(コロナ禍の影響で)2 年ほど外でのレポートができていないので、やり方を忘れているかもしれません( 笑)。いつも見に来てくれる小学生がいて、「なんで水曜のこの時間(午後)に毎週いるんだ?」って話しかけたら、「水曜は(学校が)短いんだ」と返されたことも( 笑)。楽しかったですね。
─ ラジオのレポートには独特の面白さがありますね。
いとう レポートだと、スタジオの出演者の方にとっても音だけの情報になるじゃないですか。「大竹さんに外の光景を伝えたい」って思うから、自然と言葉の選び方なんかが鍛えられたのかもしれませんね。「これくらい大きくて」って言うと、「これくらいってどれくらい?」となるわけで。英語を学んでいる人が一生懸命伝えようとする感じに似ているというか。訓練のつもりはなくて毎週楽しくやっていましたけど、いま思えば修行の道だったのかもしれないですね。
マイクの前のあの人と 「一対一」になれるラジオ
─ 文化放送が開局70周年を迎えますが、いとうさんから見て文化放送はどんな放送局でしょうか?
いとう そもそもの話をすると、小学生の頃にマッチ(近藤真彦)さんの大ファンになって『マッチとデート』(1980 年~ 84 年)を聴きはじめたときに、文化放送さんとのお付き合いが始まったと思っています。ラジオを聴いていると、マイクの前にいるマッチさんと「一対一」のような感覚になれる。あの時間がたまらなかったんですよね。
あの頃はラジオも今ほどいい音では聴けなくて、電波を拾うためにアンテナの角度を上げ下げしたり、周波数のダイヤルの絶妙な位置を探ったりしてました(笑)。あのハラハラ感も含めて楽しかったですね。通っていた学校が(当時文化放送の社屋があった)四ツ谷にあったので、放課後に(四ツ谷名物の)「たいやき わかば」でたいやきを買って、「ここにマッチがいるのかあ」なんて思いながら文化放送の周りをウロウロしていた思い出があります。
それから時が経ち、『ゴールデンラジオ!』で大竹さんがお休みのときに黒柳徹子さんがゲストでいらっしゃることになっていて、きたろうさんと私でお迎えする予定だったんです。その後、急遽「近藤真彦さんもいらっしゃることになりました」と。その知らせを聞いて、家で泣きました。
─ 泣きましたか。
いとう なんか、泣くんですよね、マッチさんが生きているのを見ると。当日の放送では、番組を聴いてくださる方の中には私がマッチさんの大ファンだということをご存知ない方もいらっしゃるので、ファンとしての「キャーキャー感」は1ミリたりとも出しちゃいけない気がして、「ちゃんとしなきゃ」と気を張ってました。だから、そのときの記憶が一切ないんです(笑)
リスナーと一緒にラジオを楽しむ「70時間」に
─ いとうさんにとって「ラジオのここが好き」というところを教えてください。
いとう 聴いてくださっている方と「会話」ができるということでしょうか。『ゴールデンラジオ!』も『ラジオのあさこ』も生放送なので、薄っすらした記憶で「あれは何て言うんだっけ?」って喋ると、すぐにリスナーの皆さんがメッセージを送ってくれますし。そういう生の対話が私は好きですね。聴いてくださっている方との距離が「近い」というか。自分が小さい頃に『マッチとデート』で感じていた、あの「近さ」は特別なものだったんじゃないかとも思います。
─ 最後に「開局70 周年ウィーク」のスペシャルアンバサダーとして『70 時間特番』のメインパーソナリティを務めるにあたって、メッセージをお願いします。
いとう 私よりも長くラジオを盛り上げてきた先輩がたくさんいらっしゃる中で、私がアンバサダーを務めるというのも大変おこがましいのですが、(田村)淳さんと村上(信五)さんと一緒に、文化放送の土曜日を担当している3人が集まれるのはとても嬉しいです。気負うことなく、聴いてくださっている方と一緒にラジオを楽しめる70 時間にできたらいいなと思っています。