大阪・北区ビル放火殺人、建築基準法の抜本的改正を! ~12月20日(月)ニュースワイドSAKIDORI!
大阪のビル火災のような悲劇を生まないためにはどうすれば良いか。防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏が「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」で解説。
大阪市北区曾根崎新地にある雑居ビル4階のクリニックから出火し24人が死亡した火災で、大阪府警は19日、クリニックに通院していた男を現住建造物等放火と殺人の容疑者と特定したと発表した。男は住所、職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)で、捜査関係者によると、手や顔にやけどを負い一酸化単中毒などで危険な状態が続いている。
今回のビル火災を受けて金子総務大臣は、全国の消防に対し雑居ビル約3万棟を対象に避難経路などを確認する立ち入り調査を行うよう要請した。
今回の火災、なぜこれほどの大惨事になってしまったのか?
防災システム研究所所長で防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏に聞いた。現場を実際に見てきたという山村氏。
「出入り口が1ヶ所、階段も1ヶ所、そして窓は出入り口のすぐ傍にあるだけ。その出入り口の周辺でガソリンのような引火しやすい物がまかれ、放火されたことによって、クリニック内にいた人は奥の方へ逃げざるを得なかった。つまり避難路が塞がれた状態で大量の一酸化炭素が充満した結果、多くの方が亡くなったことが被害が大きくなった要因だ」と説明した。
避難用の階段が1ヶ所しかなかったことに問題はないのか。
「建築基準法上、6階以上の建物には地上への直通階段を2ヶ所以上設けなければならないが、この法律が施行されたのは1974年。今回火災が起こったビルはその4年前の1970年に建てられ、既存不遡及の法則(基準が変更になった時点で存在している建物については新しい基準を適用させない)で、2ヶ所以上階段がなくても違反ではない。もしこのビルが1974年以降に建てられたとしても、緩和措置があって、4階の診療所の場合、病室面積が50平方メートル以下であれば、現在の法律でも2ヶ所以上の階段を設置しなくても良いとなっている。ここについては改善の余地があると思う」。
さらに山村氏は、抜本的な建築基準法の改正の必要性を訴えた。
「階段が1ヶ所しかなく、火災が発生しても逃げられない構造の建物には、発火を感知し大量の水を噴霧して消火するスプリンクラー消火設備の設置を義務づける法律制定が必要。現在のスプリンクラー消火設備は11階以上や6000平方メートル以上の大規模施設が設置対象となっており、小規模設備には設置義務はない。スプリンクラー消火設備を設置するには貯水槽や加圧ポンプ、非常電源など数千万円の費用がかかってしまうが、水道管直結の簡易型スプリンクラーであれば、1フロア数十万円で設置が可能となる。罪のない人たちを今後、犠牲者としないためにも、実施可能な範囲での法改正が行われるべきだ」と述べた。
では、今回のような火災に遭遇した場合、どうやって逃げれば良いのだろうか。
山村氏は、「出入り口が1ヶ所しかない所で、その出入り口付近に放火されたら逃げるのは困難だ。水で濡らしたシーツを被って火の中を突破するというシーンがドラマなどでよく見られるが、普通の人にできるのものではない。ではどうすればいいかだが、まずはその建物に2方向避難ができる設備があるかどうかを確認しておくことが大事だ。その上で、避難が難しいと感じたなら、その建物の利用を避けることも大事だ。一般的に広い場所での火災であれば、天井の方に煙や一酸化炭素が溜まり、床から15センチから20センチくらいには空気層が存在すると言われているので、姿勢を低くして床付近の空気を吸いながら壁伝いに避難する。煙で前が見えなくても壁伝いに進めば、いずれ必ず出入り口に辿り着く。今回の火災の場合、黒い煙がたくさん出ていた。酸素が足りず不完全燃焼をすると黒い煙と一酸化炭素が発生するので、黒い煙を見たら危険な状況であることも知っておいて欲しい」と説明した。
ここでリスナーからのメールを紹介。
「コロナ感染対策として、このクリニックでも換気のために、窓を開けたり換気扇を回していたと思う。ただ今回のようにガソリンで放火されると、換気をしていたとしても、一酸化炭素はあっという間に充満してしまうのか?」
これに対し山村氏は、
「実際には換気することによって火がさらに燃えることになる。普通の状態では、換気によって入ってくる空気の量と出ていく空気の量のバランスが取れているが、火災で停電すると換気扇が止まってしまい、一気にそのバランスが崩れて室内に溜まってしまうようになる。また階段の防火扉が開けっぱなしになっている時に窓を開けて換気すると、階段が煙突効果となって余計に燃えてしまう。火災時の換気は非常に難しいと言える。排煙設備があれば煙を排出できるが、そういう設備が無い場合には一酸化炭素が溜まることを前提として行動すべきだろう」と解説した。
最後に月曜コメンテーターで元衆議院議員の金子恵美氏が、
「スプリンクラー消火設備の設置義務化は、山村氏の話のように金銭的に難しい。まずは避難経路となる階段室に物を置かないなど、すぐにできる基本的な所から防火安全対策の徹底を見直すべきだと思う」とまとめた。
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