阿川佐和子・ふかわりょうインタビュー「縁側のふたり。」

阿川佐和子・ふかわりょうインタビュー「縁側のふたり。」

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10月にスタートした『阿川佐和子&ふかわりょう 日曜のほとり』
「優しい音と言葉が集う」という番組コンセプトのとおり、阿川佐和子さん(写真左)ふかわりょうさん(写真左)のトークと、ふかわさんがセレクトした楽曲が、休日のひとときを穏やかに彩ります。
今回は、お二人から見た番組の舞台裏についてお話をうかがいました。

※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2022年1月号に掲載されたインタビューです。

目次

  1. プロポーズから生まれた「縁側」
  2. 「何にもない場所」から生まれるもの
  3. 二人をつなぐ「縁」となった音楽家
  4. この記事の番組情報

プロポーズから生まれた「縁側」

─ 10月に『日曜のほとり』がスタートしてから、これまでの感触はいかがですか?

阿川 こんなに現場に来るのが楽しみな仕事は初めてかも!
ふかわ 共演者としてはすごく嬉しいですね。
阿川 それは、ふかわさんにおんぶに抱っこに肩車で、全部お任せしている私の無責任さによるところも大きいわけですけど(笑)。私としては番組を聴いてくださっている方と同じ気持ちで「次はどんな曲がかかるのかな」とか「次はどんな話題が出てくるかな」とか、ふかわさんの選曲や振りを楽しみにしていますし、曲が流れている間はずっと「ああ、幸せ…」という気持ち。とても仕事とは思えません。

─ この番組は、阿川さんからふかわさんにお声がけしたことがきっかけで誕生したそうですが。

阿川 そう、プロポーズしたんです。「この方と番組をご一緒したら、楽しいだろうな」と思ったの。なんて勘がいいんでしょう、私って(笑)
ふかわ 阿川さんからラジオのお話をいただいたのは雑誌の対談のときでしたけど、その対談で阿川さんが好きな音楽家として挙げていたのがシャルル・トレネやシンガーズ・アンリミテッドでした。僕もいろいろな音楽が好きですけど、こうした音楽家が共通点になるのはかなりレアなケースだったので、「この人は信用していいな」と(笑)
阿川 警戒心の強いふかわさんがね(笑)
ふかわ そこからはもう流れに身を任せつつ、やっぱり阿川さんと番組をやるからには、阿川さんが楽しめる場所にしたいなと。番組に関して僕が希望したのは「縁側のような場所にしたい」ということ。この一点張りです。いろいろなコーナーや企画を盛り込むのではなく、何も用意せず、音と言葉が集う「縁側」という場所だけを用意してください、と。あとは、音楽が阿川さんと僕をつないでくれたので、「縁側DJ(選曲)だけは僕が責任を持ってやります」とお伝えしました。そういう経緯があって、「日曜日に暖かな日差しに包まれた縁側で、阿川さんとお話ができたらいいな」という願いが叶ったので、僕も毎週楽しくて仕方がないですね。

「何にもない場所」から生まれるもの

阿川 本当にこの番組は「用意されたもの」が何にもないですからね。ふかわさんが選曲してくださった音楽があって、他には最低限の天気予報や交通情報が入るぐらいで、あとは何も決まりごとがない。二人のお喋りも、リスナーの皆さんからのおたよりを話題のきっかけにすることはあるけれど、次にどこへ向かうのかは全くわからない。だけど、「これがお喋りってもんだろう」と思うんです。お喋りの内容にしても「世の中の何の役にも立たないこと」や「くだらないこと」を、ふかわさんが「これ面白いじゃん」と拾ってくれる。これはものすごい才能ですよ。
ふかわ あの、今のお言葉はすごく嬉しい反面、一つだけいいでしょうか。
阿川 なんでしょう?
ふかわ ここはちゃんとお伝えしておきたいんですけど、僕は「くだらない」とさえ思ってないんです。つまり、本気なんです。この前の放送でもメロンパンのことで、二人で本気の議論を交わしたじゃないですか。
阿川 白熱した(笑)
ふかわ 一般的にはくだらないと思われがちなことでも、僕にとっては見過ごせないものがあるんです。お正月なら「なぜ、鏡餅の上にミカンが乗っているのか」と。それは僕にとってはものすごく重大で、場合によっては宇宙にすら直結する事象でもあるんです。阿川さんはその大事な事象を「どうでもいいこと」として片付けないで、ちゃんと周波数を合わせてくれる。だから僕は甘えてしまうんですね。「阿川さんに甘える中年の悲しい2時間」というか。これを番組のサブタイトルにしてもいいぐらいですね(笑)

二人をつなぐ「縁」となった音楽家

─ 番組のオープニングで流れるジョアン・ジルベルトの「I Wish Yo u Love 」がとても印象的です。

阿川 すごくいい曲ですよね。
ふかわ あのイントロが流れてくると、夢の中にいざなわれるような、幻想的な感覚に包まれますよね。あの曲の作曲者が、まさしくシャルル・トレネなんです。対談で二人をつないでくれたシャルル・トレネの曲で番組が始まり、エンディングもシャルル・トレネの「ラ・メール」で終わります。
阿川 ふかわさんのエッセイには、ご家族みんな音楽が大好きで、特にお父さんがシャンソンを好きだったと書かれてありますね。ふかわさんはシャンソン自体はピンと来ない曲も多かったけれど、シャルル・トレネの「ラ・メール」はすごく好きで、ご家族みんなで大事にしていた曲だったと。
ふかわ すごい。覚えていてくれて、ありがとうございます。
阿川 私は私で、シンガーズ・アンリミテッドがカバーしていた「I Wish You Love 」が好きで、シャンソン歌手の石井好子さん主催のチャリティーコンサートで歌うことになったのをきっかけに、この曲がシャルル・トレネの作曲だということを初めて知ったんです。そんなつながりから、オープニングとエンディングはシャルル・トレネでいこうと、ふかわさんが選んでくださって。大変なのよ、ふかわさんが全部やってくださるから。
ふかわ いえいえ。
阿川 私はそれに「いいなあ」って酔いしれるだけ(笑)
ふかわ そういう流れもあって、僕の中では「縁側」がすごく大事なイメージとして存在しています。縁側といえば、番組がスタートした頃は二人とも放送開始の1 時間前にスタジオ入りしてたんですけど、最近はその時間が少しずつ後ろにずれ始めてまして。ゆくゆくは、もう放送開始の10 時集合でいいんじゃないかと。
阿川 なるほど。
ふかわ 来るには来たけど「ちょっとトイレ行ってくるわ」とか。
阿川 「ちょっと遅刻しちゃった」とかね(笑)
ふかわ しばらくジョアン・ジルベルトの歌声だけが聴こえる時間が続いたり(笑)。それはそれで、みんながふらりと集まる縁側らしさがあっていいんじゃないかと。番組スタッフはヒヤヒヤするでしょうけど(笑)
阿川 そうね。「ああ、いい天気だから縁側に出てみるか」という気分で、これからも続けていきたいですね。

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