ワクチン検査・パッケージの技術実証とはどういうもの?その結果は?実証実験を行った保高徹生氏が語った。
ワクチン検査・パッケージの導入に向けて、各地で技術実証が行われている。
大規模なイベントに関しては先月、サッカーJリーグなど8試合で
政府などがワクチン検査・パッケージの技術実証を行い、
この技術実証に関する調査結果を産業技術総合研究所が発表した。
Jリーグや日本代表の試合で行われたワクチン・検査パッケージの技術実証で、
どのようなことが分かり、どんな課題が浮かび上がったのか?
産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門の
保高徹生氏がリモートで番組出演し、調査結果を解説した。
まず、調査内容について。
「今回スタジオアムで4つの調査を行った。
①レーザーレーダーという人の流れを計測する装置を用いて、
ワクチン接種証明や陰性証明のチェックブースで混雑する時間帯や
証明書を確認するのにどれくらいの時間がかかるか、ということの調査。
②ビデオカメラとAIを用いて、画像認識によるマスク着用率の調査を行った。
③マイクロホンアレイという音を計測する機械を使って、
AIを用いた音響認識によって観客の歓声や拍手などが
どれくらいの割合で行われていたのかを推定した。
スタジアムでの感染予防対策において、マスクの着用であるとか
声出し応援禁止というのはすごく重要であるとされているが、
今回調査したマスク着用率とか歓声や拍手の割合を
定量的なデータにして発表することを大きな目的としている。
④密の状態を測定するときに一般的に用いるCO2濃度をスタジアム内で測定した。
今回の調査では、ワクチン検査・パッケージ席と呼ばれる
ワクチン接種証明や陰性証明を確認した人の座席と、通常の席を
それぞれ測定することで、観客にどのような行動の変化があったかを比較している」
そして調査の結果について保高氏は、
「1つ目のレーザーレーダーを使った人流解析を行った結果、
チェックブース等の通過にかかる時間は平均34秒と、比較的短いことが確認された。
おそらく主催者側がしっかりと準備をして臨んだことの表れだと思われる。
またソーシャルディスタンスを守らずに2m以内に入る人の数も計測しており、
その結果、2m以内に入る人はそんなに多くないということが確認できた。
これは、ちゃんとした誘導が出来ていたために密が避けられたためと思われる。
次に、2つ目のマスクの着用率は、ワクチン検査・パッケージ席で93%、
通常の席で95%と、非常に高い数字が出ている。
一般席の方が2%高い結果となったのは、調査した8試合の平均値を出したために
生じたもので、その差はほとんどないと認識している。
ワクチン検査・パッケージ席でビールの販売を行ったのだが、
その場合でもマスクの着用率が下がることはなかった。
この結果を見て『マスクをしていない人が5%いる』と思われるかもしれないが、
これは飲食をしたときにマスクを外したためにカウントされたもので、
ずっとマスクを外していた人の割合ではない。
次に3つ目の音響分析は8試合のうちの3試合について調査したものだが、
主な応援手段は拍手で55%だった。
禁止されている声出し応援は確認されなかったが、
得点チャンスの場面では大人数の歓声が上がり、これが3%程度で、
声を出すことは非常に少ないことが確認できた。
ちなみに、ここに出した55%や3%というのは、
全試合時間中に拍手や歓声が上がった時間の割合を示している。
つまり試合時間が90分だとすると、
歓声が上がったのは3分にも満たないと言うことだ。
サッカーファンの間では、歓声を上げずに拍手をするなどの
コロナ禍での観戦マナーが浸透していることが伺える」と説明した。
ここで斉藤キャスターから
「これから先、観客の人数を増やした場合、
ワクチン接種証明や陰性証明を確認する時間が今以上にかかるため
試合が時間通りに始められないと想定できるので
毎試合ごとにチェックを行うのは難しいのではないか、
という声が聞こえてきてるが」と問うたところ、
「個人的な感想になるが、ルバンカップの決勝戦では1万人弱の観客が
ワクチン検査・パッケージで入場したが、大きな問題も滞りもなかった。
この決勝戦は休日の昼間に行われたのだが、平日の夜の試合となると
試合開始時間直前にどっと観客が押し寄せてくるため、
ルバンカップ決勝戦とは比較にならないくらいの負担が生じると想定できる。
そのため試合が行われる曜日が大きなポイントになってくるだろう。
また国民全体のワクチン摂取率が8割に届こうとしている中、
果たしてワクチン検査・パッケージ席をわざわざ設置する必要があるのか
という考えもある」と保高氏は述べた。
ここで火曜コメンテーターの茂木健一郎氏が
「メジャーリーグのワールドシリーズを見ると、
観客は満員のスタジアムでマスクもせず騒いでる。
それと比べると日本では丁寧にちゃんと対策を行っている。
しかし、いつかは元に戻さなければいけない。
こういう実証実験はその時のための貴重なデータを提供してくれている。
やはりスポーツはみんなで見た方が楽しい!」と締めた。
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