吉崎達彦氏「タリバンが制圧したアフガニスタン、今後の行方は?」〜8月17日「くにまるジャパン極」
アメリカ軍が撤退した後のアフガニスタンで、反政府武装勢力タリバンが今月に入って次々と州都を制圧。日本時間の8月15日には首都カブールに進攻し、16日には政府に対する勝利を宣言した。この件についてエコノミストの吉崎達彦氏は8月17日の「くにまるジャパン極」(文化放送)で詳しく解説した。
まず吉崎氏は、アフガニスタンの歴史について紹介した。
吉崎氏「19世紀に大英帝国がまずアフガニスタンを占領しましたが、現地軍の抵抗に遭い撤退します。1979年からはソ連軍が入って来るんですが、これもやはり撤退します。で、アメリカはちょうど今から20年前、2001年9月11日の同時多発テロ事件で、こんな残虐な事件を起こした犯人アルカイーダはどこにいるんだ?アフガンに囲まれている?それでアフガニスタン戦争っていうのが始まって、20年間頑張り通したんだけど、とうとう今年、撤退となりました。」
吉崎氏は20年前の911テロ事件が起きた当時、テロ関係の色々な書類からアフガンの実態について知ったという。
吉崎氏「当時読み漁ったアメリカの国防省の報告書の中に『アフガン・アルムナイ』っていうのがハッキリ出てくるんですよ。アルムナイ、つまり同窓会ですよ。アフガン同窓生がいると。アフガンで昔ソ連軍と戦った連中がアメリカ製の兵器を持っていて、それが今、イスラム原理主義のテロリストになっているっていう風に書かれてるんですよ。結局、アメリカが自分で育てた人たちに牙を剥かれていると、ハタと気付いたわけですけども。」
吉崎氏はさらに、その図式について解説する。
吉崎氏「当時よく言われた言葉ですが『非対称型の脅威だ』と。つまり戦争っていうのは国と国との戦いだから、相手を叩き潰せば『参った!』って話になって、それでこっちは安全になるわけですけど、姿の無いテロリストに対して報復が効かない。これは一体どうやったら安全を守れるんだ!ということになるんですよね。あの時は結局、アフガニスタンでの戦争を始めて、それはあっという間に終了したんですが、それでも首謀者であったウサーマ・ビン・ラーディン容疑者を殺害したのは結局それから10年後ですね。2011年の5月、オバマ政権の時でした。」
その後もアメリカはアフガニスタンに駐留したが……。
吉崎氏「それはアフガニスタンをちゃんとした国家にしたい、そうでないとまたいつ何どきおかしくなるかわからないからですね。で、20年間頑張ったけど『ダメだ』と。そういう決断をバイデンさんはしたわけですね。」
今回、タリバンがアメリカの予想していたよりずっと速いスピードでアフガニスタン全土を制圧した理由について吉崎氏は、こう話した。
吉崎氏「その原因のひとつとして、アフガニスタンの政府軍がびっくりするぐらい逃げてしまっているんですよね。政府軍は一応30万人ぐらいいて、そこにはアメリカ製の兵器もあって、訓練もやってたけれども、わずか6万人のタリバンに駆逐されちゃってるわけです。」
タリバンに制圧されたアフガニスタンの今後について吉崎氏はこう語る。
吉崎氏「あまり楽観視しない方がいいですね。真面目な話この後タリバンに統治能力はあるか、彼らは多分軍事的な支配は出来ても、ちゃんと税金を正しく取るとか、あるいは外交関係をきちんとやるとか、産業を作るとか、そういうことってあんまり得意じゃないと思うんですね。だから安定はしないだろうなと思います。」
アメリカだけでなく、ロシアや中国、タジキスタン、ウズベキスタンなどの周辺国もこの事態を重く見て、警戒を強めているという吉崎氏。今後もアフガニスタン情勢から目が離せない。
<参考ニュース>
【カブール、ワシントン共同】アフガニスタンの首都カブールを掌握した反政府武装勢力タリバンは「アフガン戦争は終結した」と宣言した。ロイター通信などによると、タリバン側は16日、政権を整える前に「全ての駐留外国軍の撤退を望む」と主張した。一方で国際社会との関係構築を目指すと表明。融和姿勢も見せることで、旧政権時代にイスラム教の厳格適用を主張し女性の権利を抑圧したことへの懸念払拭を狙う構えだ。01年の米中枢同時テロ後の米英軍の攻撃で旧政権が崩壊したタリバンは、駐留米軍の撤退完了前に武力で民主政権を瓦解させた。バイデン米政権にとり約20年ぶりの復権を許す誤算。
(共同通信ニュースより)
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