政府がアメリカ産のコメの輸入拡大案を示す方向へ。自動車の追加関税見直し交渉前の『軽いジャブ』！？

森永氏「もういい加減選挙を前提とした議論はやめた方がいい」

寺島尚正アナ「政府はアメリカの関税措置を巡る交渉で、アメリカ産のコメの輸入拡大案を示す方向で検討に入りました。日本が最優先課題とする自動車の追加関税見直しに関しては、アメリカ側は現時点で『難しい』と回答していて、トランプ大統領が問題視するコメで踏み込んだ案を提示し、事態を打開したい考えだといいます。この動きはどうご覧になりますか？森永さん」

森永康平「これはやはりアメリカ側からすればディールをしているわけですから、日本側の最優先課題である『自動車の追加関税をやめてよ』っていうところをいきなり切り出されて、『そうだな』というわけがないよね、と（笑）。なので『僕らが一番気にしてるのはここだよっていうのは、一応言ったからね』と。『いきなり呑んでくれるとは思っちゃいないけど』と。ということで、まあゴングが鳴って、とりあえず牽制のジャブを打って、それで倒すつもりはないみたいな。そういう感じじゃないですかね。まずは日本側から切られるカードをアメリカは見定めたいでしょうから、いきなりそんな本丸で『よし、わかった』っていうわけもないし、日本側もバカじゃないですから、まあとりあえず様子見のジャブを打ったんじゃないですかね？」

寺島「この輸入拡大の手法としてはですね、MA・ミニマムアクセスと呼ばれる無関税の輸入枠を拡大することが取りざたされています。MAはWTO・世界貿易機関のルールに基づいて年間77万トンが設定され、枠を超える輸入には1kgあたり341円の関税が課されています。2023年度のMA米は米国からの輸入が34.8万トン（45%）で最も多かったんですね。コメ不足を受けて、MA枠外の輸入は24年度で1497トンと近年のおよそ4倍に達しています。日本政府内では、コメの輸入拡大はアメリカ側の不満に応える有効なカードとなって、国産米の品不足が続く中、国内でも理解が得られやすいとの期待感があるということなんですが、このあたりはどうなんでしょうねえ？」

森永「まず前半のMA米の枠内であれば、仮にディールをしても国内の農家さんに対する影響はそれほど大きくないだろうということで、一旦ちょっとまず出しましたと。だから『最初にジャブを打って、もう1回別のジャブを打ちました』と。ただ、これはもうディールですから、アメリカからすれば『ちょっと待て』と。MAは今の時点であるんだから、そこの枠内でアメリカは比率を増やして『おまえら俺の言ってることがわかってんのか？』って話に当然なるわけですよ。だからおそらくアメリカサイドから次に出て来るのは『いやいやいや、そうじゃなくてMA以外の枠の話をしろや』って多分言って来ると思うんですね。で、ディールをしていく中でトランプ政権がじゃあ何を一番重視しているのかというと、対日の貿易赤字の解消っていうのがあるわけですから、『それを一番やってあげるためには日本はアメリカから輸入を増やさなきゃいけませんね』って話になってきて、そうなってくると国内でも納得感が得られるのは何かというと、元々日本が輸入しているのは食料とエネルギーですし、赤字を解消してやるために無駄なものを輸入するわけではないですから、国内でも納得感は得やすいだろうと。しかも今、原油価格はちょっと落ちて来てるんで、そうなってくると今国民が一番ケアしているのは米の価格ですから、この議論の持って行き方はある意味慎重で正しいステップだと思うんですね」

寺島「はい。ただ夏の参院選を控えていますからコメの輸入拡大は、自民党支持層の農家から反発が生じる可能性もあって、政府は与党と慎重に調整する方針だと」

森永「これはですね、記者がこういう書き方をしているわけで、別に政府からそういう言葉が出ているわけじゃないんで、それを政府の言葉として解説するのはちょっとあれかも知れないですが、やっぱりガソリン補助金なんかと一緒で、参院選を控えているから支持層の農家から反発を受けるのでやりたくない、みたいな、『もういい加減選挙の為にどうこうみたいな話はやめろ』と。国民生活とか、国内のコメ農家さんとか、あと食糧安全保障の3つの観点からこうしましょうっていう議論をすべきであって、『参院選前だからちょっとねえ』みたいな。『農家に嫌われちゃ困るからねえ』みたいなのはね（笑）」

寺島「新聞にもよく出てますけど、見透かされちゃってるっていうことですからねえ！」

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