「2025年度予算、ようやく実質審議入り 51年ぶりの議決 旧安倍派会計責任者の参考人招致」
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文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
衆議院予算委員会は、政府与党が想定する日程から1日遅れの1月31日にようやく実質審議入りした。トップで質問にたった自民党の小野寺政調会長は、立憲民主党の安住淳予算委員長に対し、
「当初、委員会はきのうから始まる予定だった。熟議を掲げる国会であり、一日一日を大切にしなければならない。公平な委員会運営をお願いしたい」と注文を付けた。
審議がずれ込んだのは、旧安倍派会計責任者の参考人招致について、自民党が反対姿勢を崩さず協議がもつれたためで、最終的に安住委員長が多数決による議決を提案し、
30日に野党の賛成多数で議決した。参考人招致の議決は、全会一致が慣例となっていて、多数決による議決は1974年以来51年ぶりとなった。
1974年当時は、前年から続く第一次オイルショック後のトイレットペーパーや洗剤の不足、電気製品の物価高騰で社会が混乱状態に陥っていた。
この問題に関する参考人として招致されたのは、三菱商事、三井物産、出光興産、ゼネラル石油、住友化学工業、花王石鹸などのトップら23人で、
便乗値上げ、価格調整、在庫隠しなどの実態について3日間にわたり追及が行われた。
議決が行われたのは1974年2月15日。当時の記録を見ると、荒舩清十郎予算委員長が「これより会議を開きます」という発言のあと、
「『委員長、何の委員会か』と呼び、その他発言するもの、離席するもの多し(原文のまま)」。その後の荒舩委員長については、
「(発言するもの多く、聴取不能)手を出すな」との記載があり、混乱した状況での採決だったことがうかがえる。
51年ぶりの採決は、ざわつくこともなく、粛々と行われ、賛成する野党議員の起立多数で議決した。
採決では、自民党は着席したまま反対の意思を示したが、連立を組む公明党は退席した。
当初、採決になったら賛成するという意思表示を自民党に示していた公明党だが、直前になって方針転換した。
議決直後に行われた公明党の中央幹事会で斎藤代表は、
「いくら全容解明のためとは言って、民間人の招致を多数決で決めることは反対。全会一致の原則がある」。
「自民党が明らかに反対する中、全会一致にならないことが明らかなのに、議決によって、その時の多数派が数の力によって、
応じられないと明言している民間人を参考人として国会に呼ぶことには反対だ」と退席した理由を述べた。
公明党の退席について、立憲民主党の予算委員会野党筆頭理事を務める山井和則氏は、公明党はクリーンな政治を求める党だとした上で
「与党である公明党が自民党と共同歩調をとって反対の意思表示をしなかったということの意味するところは非常に大きい。
本音では真相究明が必要と思っていたから退席したのだろう」と公明党の苦渋の決断をおもんばかった。
51年ぶりの採決を仕切った立憲民主党の安住予算委員長は議決後、直ちに会計責任者に2月10日の予算委員会への出席を求める文書に署名した。
議決に法的拘束力はなく、会計責任者は弁護士を通じて拒否する意向を示している。
31日の予算委員会でも石破総理は「慎重であるべきだ」との見解を示しており、実現するかどうかは不透明だ。
予算案は憲法の規定により、参議院に送付されてから30日で自然成立するため、政府与党は自然成立の期限となる3月2日までの衆議院通過を目指している。
裏金問題をめぐり予算審議に影響が出ていた去年、法案が衆議院を通過したのは3月2日で異例の土曜国会となった。
去年は、裏金問題で大揺れに揺れていても、多数を握る自民党は、数の力で国会の審議日程も採決もほぼ、思惑通りに運んだ。
しかし、少数与党になった今回は、野党を味方につけなければ予算案は3月2日までの採決に持ち込めない可能性がある。
少数与党で主導権を握れない状況の中、31日の予算委員会で野党側はさっそく、学校給食や教育無償化、ガソリン減税などをめぐり予算の修正を強く迫った。
石破総理は「現時点では最も良い予算を提案している」と答弁する一方、政府与党は予算修正に向けた調整に動き出した。
野党側との修正協議が佳境に入るのは2月中旬ごろ。要求をどこまでのめるのか、予算審議は最初のヤマ場を迎えることになりそうだ。