全町避難から14年。福島県双葉町で「かなり特殊な選挙」が行われる理由とは?

全町避難から14年。福島県双葉町で「かなり特殊な選挙」が行われる理由とは?

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ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、1月23日の放送に調査報道記者の日野行介が出演。福島県双葉町の町長選、町議選の状況から、東日本大震災の「被災者たちのいま」について解説した。

長野智子「双葉町の選挙、どういうものか教えてください」

日野行介「先週、1月16日に告示されたんですね。町長選のほうが現職の伊澤史朗さん以外に立候補の届け出がなくて。無投票で4選が決まりました。一方で町議選は定数8に対して9人が立候補して選挙戦になると。投開票が26日なんです。1月17日付の毎日新聞からの引用ですが、投票所が双葉町の町役場のほかに、いわき市、郡山市、埼玉県加須市の各所に計4ヶ所。またいわき市の勿来酒井団地、南相馬市の原町生涯学習センターなど9ヶ所。期日前投票ができる。なかなか選挙の新聞記事で聞いたことがない」

鈴木敏夫(文化放送解説委員)「そうですね。分散して避難していらっしゃるところ」

日野「かなり特殊な選挙であることがうかがえます。さらにここからがすごい。街の居住人口は1月1日現在で182人にとどまり、現在福島県を含めて43都道府県と国外で6430人が避難生活を送る。16日現在の有権者数は4706人。どういうことなんだ、と」

長野「4500人ぐらいの方は住民票を残している、有権者、ということですね」

日野「おっしゃるとおり。全町避難が14年前、福島の原発事故であったんですね。住民がいなくなった。その後、住民票を移したのかというと、14年近く経って、これだけの人が移していない。実際に住んでいるのは180人ということですけど、半数以上が新たに移住してきた人たちで。もとの住民はたぶん100人もいない」

長野「なるほど、そういうことか」

日野「こんな選挙は聞いたことがない」

長野「新しい住民がけっこう多い割に無投票で伊澤さんが当選したという」

日野「ほかに出る人がいない、という現状もあるんじゃないかと思います。町議選の定数は8人。伊澤さんは町内に住んでいるようですけど、現職の町議さん8人は確か、双葉町に住んでいない」

長野「えっ?」

日野「町議会のときには行くんですよ。いわきに住んでいる人もいる。埼玉の加須に住んでいる議員の方がいて、お会いしたことがあります」

長野「町議会の人たちは別の所に住んでいるけど住民票は双葉町にある。そういう人たちが遠くから来て町議会をしている。そうせざるを得ないから自治体も見逃しているという」

日野「戻りたいとは思っている。でも戻れないとも思っているんです。多くの方が、避難先で家を買っているんですよ。では本人たちの意思かというと、そうとも言い切れないと思っていて。2013年に原発の賠償制度が改定されて。避難先で家を買った場合、買った代金を賠償金に上乗せする、という制度ができた」

長野「なるほど……」

日野「これも異常なこと。でも皆さん、現実的に買うわけです。買って次の住みかも決めているんだけど、住民票は移していない、という実態が続いてきた」

長野「それのいちばん大きな理由は?」

日野「無限の抵抗、というのはあるんじゃないか、と。あと双葉の町民である、というアイデンティティを捨てていない、ということじゃないかな、と思います」

「長野智子アップデート」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時、文化放送(FM91.6MHz、 AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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