【101回箱根駅伝】東洋大学・酒井俊幸監督「シードを確保することがどれだけ大変かが分かった」~復路終了インタビュー
――10区は4つ巴のしびれる展開だった
「わざと入りの1kmだけ速めに入らせて、他校の状況を見ようと思った。東洋が1番先に入ったんですが、他校も(1kmを)2分50秒を切るぐらいのペースで来た。やはりシード権に対する覚悟をもってみんな攻めてきているなと思った。帝京大学(の小林咲冴)は1年生で未知数でしたが、すごく意欲的で、私が声かけでどこかで仕掛けなきゃなという時に彼が1番反応してきました。声かけは他校にも聞こえるから難しいです。そして、シード権のラインが非常に高くなったなと思います。東洋大学の総合タイムが10時間54分台なんですけど、優勝タイムももちろん高いし、上位の大学には大きなミスがない。もう一時の優勝タイム、3番手争いのレベルぐらいのタイムにシード権のレベルも上がってきたのかなと思います」
――10区の薄根(大河、2年)は自分でも「ラストが得意でない」と言っていた中での走りを振り返って
「あそこまでいくとなかなか仕掛けきれないので、本人も怖かったと言っていました。ああいう展開は恐怖心も出てくると思うんですが、それ以上に他の走れなかった人や、4年生が彼の背中を押したんだと思います。この展開は正直きついと思います。薄根は練習でもラスト勝負になると遅れを取るので、8区の網本(佳悟、3年)を10区に回したかったが、梅崎を起用できなかった関係上、8区にせざるを得なかった。なってほしくない展開が来たので、嫌な予感が当たりました」
――20年連続シード権を確保したことに対しては
「まず安堵感はありますが、シードを確保することがどれだけ大変かが分かったと思います。どのチームも非常に成長していますので、 これをやればいいんだではなく、進化をしていかなくてはいけない。崩れないチームというのも大事な評価だと思うんです。監督としてまだ予選会を経験していないので、できれば予選会は経験しないまま終わりたいという1つのこだわりはあります」
――4区区間3位の岸本(遼太郎、3年)と8区区間2位の網本の走りについて
「よく2人が区間2番、3番で順位をあげてくれた。区間賞ぐらいの走りがないと大きく順位を上げていけない。どの大学も上位シード権のレベルになると大きなミスがない。2区はレベルが高いですが、エース区間と特殊区間以外のつなぎの区間で区間賞レベルの走りがないとシード権は難しいです」
――7区に1年生の内堀(勇、1年)を起用した意図は?
「コース適性がありますし、彼も力をつけて来年以降勝負してほしい選手なので、 思い切って7区に起用しました。血糖値も測定していますが、力を出し切って頑張っていますので、苦い経験ではなく自身の成長になるような経験だと言えるようにしてほしいです」
――2区の緒方(澪那斗、3年)について
「自分の力不足を痛感したと思うんですが、2区に出た選手は何かしらみんな感じること。6分台っていうのを目指さないと区間1桁に入らないので、来年はしっかりと目指して頑張ってもらいたい」
――終盤までシード権争いが熾烈。それに競り勝った選手たちにはどういった思いがあるか?
「最後の粘り強さの積み重ねがシード権に導いたと思いますので、この1秒を本当に大事にしてほしいなと思います」
――箱根を連覇した青山学院の強さをどこに感じているか?
「山上り、下り、エース区間、全てにおいてレベルが高く、全体のレベルアップがなされていて常にバージョンアップをしているチーム。あとは、例えばレース直前、髪を切りに行かなかったのを見ると、去年感染症対策で苦労した分、チームでこれをやるとなった時に指揮官のところにきちんとまとまれる。規律もあるし、本当に勝ちにこだわった集団だとすごく感じます」
――フィニッシュ後の選手の涙をどう感じたか?
「安堵感や恐怖心、いろんな涙だったと思います。あとは伝統をつなぐプレッシャーが今の学生にはあって、それも含めての涙だったと思います」
――シード権のラインが上がってきている中でもシード権を取り続けるために必要なことは?
「普遍的に大事にしているこれまでやってきた流れもありますし、いろんな面でのバージョンアップも大事だと思います。ただ、大学ごとのカラー、できるできないはありますし、施設面、予算面など色んな面もありますから、そこは東洋大学もこれまで以上にバージョンアップしていかないと太刀打ちできないとすごく痛感しています」
――スケジューリングの見直しや改善を考えていることはあるか?
「まず、年間通しての試合が多い。強化をしながら育成もして、絶えず大学として出場しなきゃいけない大会もある上に、授業もあるという流れで、出雲と全日本、箱根の三大駅伝も含めると、ピーキングをどの大会にも合わせ続けるというのはまず無理。どこかでやはり絞っていかないと。もちろん出雲、全日本、箱根の3冠を取ったチームもありますから、取れるだけの選手層とエース格が必要ですが、春のトラックシーズンから含めて、色々やっていくのは、なかなか容易ではない時代だと思います。今季は代表戦としてワールドユニバーシティゲームズもあるし、東京での世界選手権もある。そういうところにエース格は目指していかなきゃいけないので、色々大変だなと思います」
――酒井監督としては今年の夏は世界を見ていく方針があるのか?
「学生の大会のレベルも上がってますけど、世界を目指すレベル、マラソンで勝負するレベルといったその上のレベルの大会を目指すことや経験することというのは、新しいバージョンアップには必要な要素だと思います」
――アクシデントもあった上でのこの順位について
「前半戦、良かった子が夏合宿であまりできなくて駅伝シーズンで振るわなかったケースがあるので、年間の持って行き方をもうちょっと計算していこうと思います」
――これだけ箱根の熱が上がっていくと、各大会のピーキングが難しいのでは?
「関東インカレの一部校と二部校では状況は違うし、一部校はどうしても落とせない。あと、トラックアンドフィールドでやってるチームとそうじゃないチームとの差もあるし、関東インカレが終わってもすぐに全日本大学駅伝の予選会があって非常に難しい。でもどの大会も頑張れって言われますからね。 國學院さんも出雲と全日本で強さがあったけど、青山学院はそこにピーキングを合わせていない感じがある。割り切った考え方は普通できないが、原さんはそこを割り切っている。青山学院もインカレはもちろん出場させますけど、駅伝は箱根で徹底している、そこはすごく感じます。駒澤大学の佐藤圭汰(3年)や篠原(倖太朗、4年)みたいに代表のポイントを取りに行く取り組みもすごい評価される。学生の大会を大事にしていくが、世界で勝負する目は実業団に入ってからでは間に合わないので、そこも大事にしていきたいと思います」
――来年に向けての展望は
「21年連続のシ-ド権獲得をもちろん狙わなきゃいけないですが、狙うはトップスリーです。青山学院と駒澤は総合タイムがそれぞれ10時間41分と44分でレベルが高いですが、トップスリーを狙っていく。早稲田も強力なルーキーが入ってくるので強いですが、そこを狙っていきたいと思います」
――復路のメンバーを決めるにあたって考えていたことは?
「復路は展開とコース適性です。 区間配置は何パターンか考えていて、キーになるエース格や特殊区間がダメになっちゃうとその計画は変わってくる。今回、2区と5区のメンバーを変えるのは普通じゃない。本来の箱根駅伝にはないことが起きた。今回で16回目の挑戦でしたけど、そう感じた大会です」
――松井(海斗、1年)は怪我?
「松井は故障明けであと2週間ぐらいあれば出れた。不完全な状態で出すと、せっかく状態が良くなってきてもまた怪我してしまうので、そこも考慮しました。来年は彼を主力で起用したいです」
――崩れないチームを作る秘訣は?
「手を抜かず凡事徹底の毎日ですが、指導者も選手と一緒に戦っていかないとなかなかそういう礎は作れない。伝統を崩すのは簡単ですが、作っていくのは本当に大変です」
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Information
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『文化放送新春スポーツスペシャル 第101回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継』
1月2日(木)・3日(金) 7:30~14:30 *全国33局ネット(放送時間は異なる場合があります)
▼1月2日(木) 往路
解説:大志田秀次(中央大学OB、東京国際大学前元監督、Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)
プレーヤーズ解説:伊地知賢造(國學院大學OB、ヤクルト陸上競技部)
移動解説:柏原竜二(東洋大学OB、「2代目・山の神」、『箱根駅伝への道』ナビゲーター)
総合実況:斉藤一美アナウンサー
▼1月3日(水) 復路
解説:大志田秀次(中央大学OB、東京国際大学前元監督、Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)
プレーヤーズ解説:花尾恭輔(駒澤大学OB、トヨタ自動車九州陸上競技部)
移動解説:柏原竜二(東洋大学OB、「2代目・山の神」、『箱根駅伝への道』ナビゲーター)
総合実況:寺島啓太アナウンサー
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この記事の番組情報
文化放送新春スポーツスペシャル 第101回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継
2025年1月2日(月)・3日(火) 7時30分~14時30分
青山学院大学の連覇か、駒澤大学の王座奪還か、 それとも國學院大學が初優勝で三冠を手にするのか—— 「3強」の様相を呈する今シーズン。2日間、10区間合計217…