【101回箱根駅伝】「お前は腐っちゃダメだ」帝京大学・藤本雄大を復活させた柴戸遼太の言葉
今季の帝京大学は強い。持ち前のしぶとさ、ロード力に加えて、他校に引けを取らない山中博生キャプテン(4年)のエース力もあり、上位争いに名乗りをあげる準備はできていると言ってよいだろう。チームを支えるのは上級生だ。エントリー16人中4年生が6人、3年生6人、実に12人を占める。このチームにおいて1年生の時に出雲駅伝に出走しながら箱根駅伝初エントリーの選手がいる。藤本雄大(3年、北海道栄)だ。
学年を重ねて力をつける選手が多い帝京大学で、藤本は1年目の出雲駅伝で学生三大駅伝デビューを果たした。帝京が出雲に出場した過去5大会を見てもこれは藤本のほかには遠藤大地しかいない。しかし、11月の10000m記録挑戦会では最終組で先頭から2周近く後れをとって最下位。箱根メンバー入りを逃した。2年目は不調が続き、この時もメンバー入りを逃す。学生三大駅伝出走は結局この1年目の出雲にとどまっている。
復調の兆しが見えたのは2年時の12月。法政大学記録会で29分09秒04をマークし、ここからだ、と手応えを感じた。しかしその矢先、故障。3年生の7月まで、復帰には実に7ヶ月を要する故障だった。
「右のお尻の抜け抜け病みたいになっちゃって。もう焦りしかなかったですね。関カレで山中さんが28分04秒というタイムを出して焦ったし、全日本選考会も自分は経験者なので走らないといけないなと思ってたんですけど、全然貢献できない。どんなにやる気があっても走れない状況だったので、やる気が削がれていく状況でした」
復調のきっかけは意外なところにあった。「柴戸(遼太、3年)が自分を怒ってくれてたんです。『お前は腐っちゃダメだ。今苦しい時間なのはわかるけど、耐えてやれ』って。叱ってくれたことで、順調にできるようになった気がします」。
焦る気持ちはある。練習したい、でもできない。体がついてこない状況でモチベーションを維持することが難しくなった時期もあった。腐りかけたときに柴戸は厳しい言葉をかけたのだった。
1年生からライバルとしてチーム内で競ってきた2人。柴戸はそのときのことをこう話す。
「あれは全日本選考会の前でした。全日本選考会は1年生のとき、自分と藤本が走ったんです。だから、あいつも全日本選考会のきつい部分とか苦しい部分も絶対わかってるはずですし。自分が学年リーダーで、あいつが副学年リーダーというのもあったので、苦しいこともわかって、チームを見る立場のお前がそういう態度とったらチームはどうなるんだって気持ちがあったので、そういう言葉をかけました」
実はその時期柴戸も故障明けで、5月半ばから急ピッチで無理をしながら全日本選考会に合わせているところだった。主力としての自覚を持ち自らを奮い立たせてきた柴戸にとって、同士でありライバルの藤本の姿にもどかしさを感じていた。
藤本はそのときのこと振り返り、「ありがたいですよね」と笑う。「怒ってくれる人って貴重な存在なのでそれが同級生にいてくれたっていうことは、すごく助けになったし、(メンバー入りは)柴戸のおかげかなと思います」、さらに「1年生のときはライバルだったのが、気づくと柴戸がタイムでも上にいってしまった。もう1回張り合う立場に戻らないといけないなって思いました」と、覚悟を口にする。
帝京大学は箱根メンバーに絡む選手は、例年伊豆大島の選抜合宿に参加する。藤本は当初、そのメンバーには入れなかった。“居残り追試組”として臨んだ日体大記録会で自身初の28分台を出して、合宿に合流。「世界一諦めの悪い」姿勢を最後まで見せて、メンバー入りをつかみとったわけだ。
強い4年生も箱根駅伝が終われば卒業を迎える。山中キャプテンのような絶対的な存在には、今すぐにはなれないかもしれない。でも、藤本には柴戸がいるし、柴戸には藤本がいる。2人が箱根路でまとうファイヤーレッドは、帝京大学の未来を照らしていくに違いない。
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Information
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『文化放送新春スポーツスペシャル 第101回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継』
1月2日(木)・3日(金) 7:30~14:30 *全国33局ネット(放送時間は異なる場合があります)
▼1月2日(木) 往路
解説:大志田秀次(中央大学OB、東京国際大学前元監督、Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)
プレーヤーズ解説:伊地知賢造(國學院大學OB、ヤクルト陸上競技部)
移動解説:柏原竜二(東洋大学OB、「2代目・山の神」、『箱根駅伝への道』ナビゲーター)
総合実況:斉藤一美アナウンサー
▼1月3日(水) 復路
解説:大志田秀次(中央大学OB、東京国際大学前元監督、Honda陸上競技部エグゼクティブアドバイザー)
プレーヤーズ解説:花尾恭輔(駒澤大学OB、トヨタ自動車九州陸上競技部)
移動解説:柏原竜二(東洋大学OB、「2代目・山の神」、『箱根駅伝への道』ナビゲーター)
総合実況:寺島啓太アナウンサー
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この記事の番組情報
文化放送新春スポーツスペシャル 第101回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継
2025年1月2日(月)・3日(火) 7時30分~14時30分
青山学院大学の連覇か、駒澤大学の王座奪還か、 それとも國學院大學が初優勝で三冠を手にするのか—— 「3強」の様相を呈する今シーズン。2日間、10区間合計217…