海外にない日本の漫画の精神性とは?「ポップカルチャーの魅力を考える」
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。
2024年11月4日,11日の浜松町Innovation Culture Cafeは、「ポップカルチャーの魅力を考える」をテーマに株式会社ファンダム代表取締役会長・保手濱彰人さんと漫画ONE PIECE研究家の神木健児さんをお招きしトークを展開しました。最初にマスターからこの質問が飛び出しました。
入山:シンプルに日本のポップカルチャーの魅力とは何ですか?
保手濱:漫画、アニメに関しては、精神性が深いと感じていて、アメコミやハリウッド映画と違って、相手のことを考えることです。例えば、ドラゴンボールでも絶対的な悪役のピッコロ大魔王を倒したらとどめを刺さず、理解しあって最終的には仲間になります。ベジータとナッパが攻めてきて、これも最終的にはベジータは主人公の悟空が殺されずに「また次回戦えるのを楽しみにしている」と言って生き残るわけです。
入山:ベジータは、気づいたら仲間になってブルマと結婚もしてますからね。
保手濱:そうです。こういった相互理解や相手を尊重する姿勢が素晴らしく、これがさらに平和につながると思っています。僕は、いまの「株式会社ファンダム」を立ち上げるときに、漫画家のちばてつや先生に会って、「日本の漫画は平和につながって良いですよね」とお話をしたら、ちば先生が「それは凄く良い話で、僕が尊敬しているアンパンマンの作者・やなせたかし先生が”日本の漫画が広がった国には戦争が広がらないんだ”」と仰ったのが原点だったんです。それって西洋思想と東洋思想の違いにも表れていて、チェスは敵の駒を倒して終了ですけど、将棋って倒したら仲間になるんです。最近の大ヒット作である「鬼滅の刃」も、怖い鬼に対して主人公の炭治郎が「きっと何かあったに違いない」と言って最後の最後まで気に掛けるんです。そういうのが良い部分だなと思ってます。
入山:神木さん、今のお話いかがですか?
神木:仰る通りで、ワンピースもそうなんですけど、作者の尾田先生が「人と人との関係」を大事にしていて、悪魔の実という不思議なものはあるけど、些細な人との関係は大事に描いていきたいと仰っていて、それが端々にあるんです。「麦わらの一味」もたくさん仲間がいますけど、昔は、そんなに仲良くなくて、最初は「ナミ」の呼び名も「航海士さん」だったんです。ちょっと距離があるけど、冒険を繰り返す中でいつの間にか「ナミ」になるんです。尾田先生も、計算して描いたというよりは、そういう心情描写を大事に描いている部分だなと。これが先ほどの保手濱さんのお話につながってくるんじゃないかなと。
入山:保手濱さん、どうですか?このお話。
保手濱:そうですね、僕はよく聞くお話として、「漫画づくりで大事なのはキャラクターだ」っていうお話で、物語が面白いのは良いんですけど、それだけだと2回目に読んだ時にあんまり面白くないんです。でも、キャラクターが深堀されるとそのキャラクターは何度見ても面白い。例えば、自分の子供の動画や写真は何度見ても面白いですよね。そのキャラクターに愛着があると、そのキャラクターを何度見ても面白いんです。僕の場合、「鬼滅の刃」は1回目読んでもそんなにハマんなかったんですけど、2回目・3回目読んだら「煉獄さあああんん!!!」ってなったので、キャラを愛しているから何度見ても面白いんです。
入山:僕が、昔読んでいたジャンプで「ゴッドサイダー」の作者の巻来功士先生が、「なんで自分は漫画家としてイマイチだったか?」という漫画があるんです。巻来功士先生が、当時のジャンプの編集の人に会いに行って「なんで、僕の漫画はドラゴンボールや北斗の拳のようになれなかったんですか?」と聞いたら、「巻来くんの漫画は話は面白いけどキャラの個性が弱いから」というお話があるんです。まさにそれなんです。
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保手濱彰人さん
東京大学在学中に「東大起業サークルTNK」を設立し、経産省支援のビジネスコンテストにおける最優秀賞獲得の経験などを経て、在学中に起業。その後、複数の事業の立ち上げやバイアウトなどを経て、2014年に株式会社ダブルエルを創業。現在は会社名をファンダム!と変更し、日本のポップカルチャーコンテンツの国際展開を図ることに注力。
神木健児さん
13歳のとき、週刊少年ジャンプで連載中の漫画「ONE PIECE」に出会い、これまでONE PIECEに膨大な時間と愛を注ぐ。現在は、漫画「ONE PIECE」研究家として様々なメディアでも活躍される一方、「ONE PIECE」連載20周年を記念して発行された「ワンピースマガジン」では、私生活を漫画化されたり、ワンピースマニアとしてフィギュア制作に携わるなど公式と関わる活動も行う。また、Youtubeチャンネルの「スーパーカミキカンデ【ONE PIECEが大好きな神木】」では、定期的にONE PIECEの魅力を発信し続ける。
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