経済学者金子氏が語る不景気なのに日経平均株価最高値更新の理由「金融緩和と中国のバブル崩壊」
2月23日の大竹まことゴールデンラジオは大竹と室井が祝日でお休みのため、青木理と金子勝がオープニングから日経平均株価最高値更新についてのニュースについて語り合った。
青木「金子教授に今日まさに聞くべきニュースが今日新聞各紙朝刊一面トップでしょ」
金子「ニュースが僕を呼んでるんだね」
青木「いきなりですけど、日経平均株価が昨日バブル経済期の1989年12月29日につけた終値の最高値を、34年ぶりに上回って、史上最高値、初の3万9千円台を付けたと。これだけ見てると日本経済が大分元気になってきたんじゃないの?とか、日本調子いいんじゃないの?みたいな感じをする人も、ほんの一部いるのかもしれないです」
金子「いや、大体の新聞の一面がほとんど実感がないとかそういう感じで、バブルあおるのは経済史関係だけで、普通の新聞はみんなちょっと待てよ?という感じですよね」
青木「そうですね。東京新聞で言えば、もちろん一面トップは東証市場最高値なんですけれど、大きな見出しは「家計株高の恩恵乏しく」とか、あるいは毎日新聞も一面トップは史上最高値初の3万9千円台って書いてあるけれども、その下の解説記事が「世界での存在感は低下」とか、各紙見てると浮かれてるというよりは…」
金子「警戒心がある」
青木「そうですね」
金子「朝日も二期連続でGDPがマイナスで、普通だったら不況入りするのになんで株だけ上がるんだみたいな見出しが中の紙面では書いてあって、ちょっと危ないなって。34年前を思い起こすと、1989年の12月で3万9千円ついたんだけど、その時は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なんだよ」
青木「そうですね。だって世界の株式の時価総額のトップ10に日本企業が6社とか7社とか」
金子「そうそう。バブルっぽい銀行が多かったけど、その前でも製造業でパナソニックとか日立とかそういう企業も入ってたんで、この34年前の日本経済というのは、そこそこ成長してたんですよ」
青木「だから実体経済と株価が、バブルではあったけど、一応それなりには合っていたんですね」
金子「そう。それから1985年にプラザ合意ってのがあって」
青木「バブル崩壊の引き金と言われてますね」
金子「1ドル230円ぐらいだったのが、あっという間に半値になっちゃったんですよ。130円ぐらいかな。この頃は」
青木「だから急激な円高が進行していったと」
金子「で1995年に向かって100円割れになる。今と全然違うじゃん。今は日本経済実力がなくて、100円が150円になってく。だから全く様相が逆」
青木「僕もそうなんだけど、ちょっと経済音痴なところがあって、じゃあなんでこんなに実体経済が伴ってないのに株価だけバンバン上がってるんだと。不動産もそうですけど、現象面だけはバブルの状況と同じような状況になってきたわけだけど、危ないという話の前にそもそもなんで株価が上がってるんですか?」
金子「いくつかの条件を丁寧に説明すれば、一つは新型コロナで金融緩和を猛烈にやったでしょ。全世界で。だからお金はもう余ってるわけですよ。どこかに行き場を求めてるわけです。そこで日本の場合だと日銀が金融緩和を続けざるを得ない。ねずみ講状態で金利上げられないわけだ」
青木「いつも金子さんに僕伺ってますけれども、要するに国債をバンバン発行して、1000兆円超えるような借金を抱えてて、そのうち半分ぐらいを日銀に買わせてるから、金利を上げたら要するに国債の利回りが高くなっちゃって、国の財政が破綻しかねないから、上げたくても上げられない」
金子「国債の含み損も出てくるし、上げたらひょっとしたらバブルも弾けちゃうかもしれないしという状態なので、外国人投資家も含めてみんな読みやすいんですよ。どうせ日本の政府は大型予算組んで、日銀は金融緩和を続けるだろうと。だったら他の国が利下げをしない限り、金利差はずっと行くから円安になるだろうと。円安になれば企業は非常に収益が膨らむわけだ。確かにコロナで若干自動車は輸出で回復したんだけど、それにしても150円というのは多分自動車会社は125円から128円ぐらいの水準で多分組んでるんだと思うんですよね。収益を。150円っつったら売れて濡れ手で粟で25円儲かるわけだよ」
青木「物価高で例えば食品とかインフレ、値上がりして庶民は生活苦しくなるけど」
金子「輸出企業はぼろ儲けになるから当然株価は上がってくるわけ」
青木「業績は良く見えるというか」
金子「しかも、外国人投資家から見るとすごい円安だから割安なんです。今はインバウンドが大量に来てるのも日本は昼飯500円だぜみたいな。なんて安いんだって他の国行ったら東南アジアだって1000円2000円当たり前なんで安いなというのと同じで、日本の株や不動産は安くてしょうがないわけです。おまけに中国はバブル崩壊で苦しい。中国への投資の流れがないから、その分だけ日本に来るわけ」
青木「つまり中国は中国自体が、不動産バブルが崩壊するんじゃないかとか、米中対立がずっと続く中で、中国に対する緊張感みたいなものもあって中国に投資するよりも世界中で余ってるお金が、日本の株安いじゃんみたいな感じでワーッと来たと」
金子「昔の場合にはバブルなんだけど、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われる状態でアメリカでも東芝のラジカセぶっ壊したりとか、そういうことがニュースになるくらい日本製品がもう世界を席巻してたわけだ」
青木「あの時は日米貿易摩擦もあったし、東京都内の山手線の内側の土地の価格でアメリカが買えるんじゃないかみたいな」
金子「ああいうのに比べると今の状況は非常に不安定なわけです。だからファンダメンタルがよくてこれから伸びるから株高になってるというんじゃなくて今買い時だぜ。いつでも逃げるぜと、こういう感じでみんな買ってきてるわけです」
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