「野球のボールが消えたんです」徐々に視力をなくしウルトラロービジョン≒全盲に…中学時代の異変を語る

邦丸「神田信さんはご自身も視覚障害者でいらっしゃいます。神田さんの場合は生まれてすぐにということではなく、徐々に視覚が衰えていったということですか。」

神田「はい、そうです。網膜色素変性症という病気で治療法がないんですね。ですから徐々に悪くなっていくのを受け入れていくしかないんですけど、長い期間で悪くなっていくので、そのための準備ができそうだけど、意外と何やっていいかわかんないっていうんですかね。（笑）結構つらいというか、先々見えなくなるっていうのが重くのしかかってきて。今はもうほとんど見えなくて、若干動きとか光がわかるぐらいで、医学的には『ウルトラロービジョン』っていう言葉もあるらしいんですけど、ざっくり言えば全盲です。こうなると人にお願いして手助けを受けなきゃいけないんですけど、それまでの間は、やっぱり目が見えない自分を認めたくないとか、恥ずかしいとか、視覚障害になりたくないとか、見えない状態を隠したいという心理が働いて、それがために誤解を生んだりとか、自分自身もつらい思いしたりしました。」

邦丸「何歳ぐらいですか？神田さんに症状が現れ始めたのは。」

神田「高校生のときにちょっと夜盲を感じて。その前の中学の時に野球の外野を守って、フライが飛んだ時にボールがピッて消えたんですね。それは多分、視野欠損があったんだろうっていま振り返って思うんですけど、ずっと鳥目だと思ってたんです。あるとき、気になるからお医者さんに行ったら、網膜色素変性症っていう聞いたことのない名前を言われて、私は目を直しに行ったんですけど、「治りません」「進行します」「遺伝します」「先々失明する可能性もあります」って言われちゃったんです。でも「定年するまで働いてる人もいっぱいいます」って言われて心の支えになったというか、方法はあるんだなあって、今振り返ればその時言ってもらってよかったかなって思います。」

邦丸「神田さんおっしゃった通り、治療法がない難病で4000人から8000人に1人の割合で発症するということなんです。リスナーさんの中には箱根駅伝のファンもいらっしゃると思いますが、創価大学のメンバーとして箱根駅伝で活躍し、現在はGMOアスリーツに所属されている嶋津雄大選手。メガネをかけながら走ってらっしゃって、実況でも、視覚に症状が表れているランナーですって言って、彼の激走が随分とネットでも話題になりました。」

神田「何年前でしたかね。10区で区間賞を取った時に全国放送のインタビューで、私は網膜色素変性症ですって言って、「みんなの力になりたい。勇気を与えられれば」って言ったのはもうびっくりしましたね。パラリンピックの選手もすごいですけど、一般のスポーツ選手の中で、トップアスリートで、病気を抱えて、それを発表したという。今となっては私もこうやってラジオに出させていただいて、皆さんに知ってもらうことによって、障害理解が進むと思うわけですけど、それをヒーローインタビューで言った人は多分初めてじゃないかなと思うんです。」

邦丸「たまたまこの前の土曜日かな？家で新聞読んでて一面見て2ページ目開いたら知ってるやつが出てるんですよ。このくにまる食堂のプロデューサーの白石くん。彼はロービジョンで白杖を持って歩くことも多いんです。文化放送でも、ロービジョンとは一体何ぞやって言う番組を彼が作って放送してるんですけど、神田さん、改めてこのロービジョンとはなにか教えてもらえますか？」

神田「昔から『弱視』という言い方もあるわけなんですけど、私はロービジョンって言う方が、かっこいいというか、視覚障害というより、カタカナの方がなんとなく受け入れやすいかなと思います。それ故に伝わりにくい部分もあるかもしれませんけど、白い杖を持ってる人はみんな全盲だと思われがちですけど、その間の人がいるんです。」

邦丸「間っていうのはちょっと難しいですね。」

神田「難しいですね。だから、見えてるんだけど、充分に見えてないっていう状態。本当にロービジョンって千差万別で、人によって見え方がまちまちなので、気づいてない人もいるかもしれませんし、見えなさがうまく人に伝わらなくて困っている人もたくさんいるんだと思います。ぜひこういうことは広く皆さんに知ってもらいたいと思っています。」

邦丸「ロービジョン・ブラインド川柳コンクールについてはこの後のコーナーで伺います。」

「くにまる食堂」は平日朝11～13時、文化放送（AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko）で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。