【第100回箱根駅伝】101回大会を見据え「10区の次に11区がいるという思いで」東洋大学・酒井俊幸監督 レース後インタビュー

【第100回箱根駅伝】101回大会を見据え「10区の次に11区がいるという思いで」東洋大学・酒井俊幸監督 レース後インタビュー

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第100回箱根駅伝。総合4位で終え、19年連続でシード権を獲得した東洋大学・酒井俊幸監督のレース後インタビューです。今回のレースの振り返りとこれからのチーム作りについて訊いた。

――レースを終えての感想は?
「本当は往路をあと2分いいタイムで行くことを目指していました。総合3位を目標にしていたのでシード確保でホッとしたというよりも、3位と20秒差で悔しい気持ちです。今回のレースの中で、強いと言われている駒澤大学の背中が見えたら来年以降の学生の気持ちも変わっていくと考えていましたが、そこまでは届きませんでした」

――そのような悔しさの中でも及第点には到達した?
「もちろん、今回に関しては及第点です。来年以降は優勝争いにも加わっていきたいと思っているので、その通過点としては評価できます」

――合宿地である石川県で1月1日に地震があった
「地震があったという報道には驚きました。何不自由なく走れる環境に私たちがいるということは非常にありがたいことだと思う気持ちと、このような時に果たして駅伝に出ていいのかという気持ちの両方がありました。石川県は長距離でも競歩でもお世話になっている場所です。長距離ブロックが去年の9月に合宿を行わせていただいた場所でもありますし、競歩ブロックは大会をしていた場所(輪島市)でもあります。OBの相澤(晃、現旭化成)や西山(和弥、現トヨタ自動車)らが学生時代に合宿を行った宿の近くでも火災があったという報道を聞きました。その宿のご主人から1月2日の朝に『こっちは大丈夫だから心配しないで。大会頑張って』とメールをいただき、より一層頑張らなければ、という想いで臨んだ今回の箱根駅伝でした」

――チームとして今まで足りないものはどんな部分だった? またそれをどう克服した?
「チームを立て直す上では『結束』が必要だと思っていました。ただその部分が崩れてしまっているのを直近のレースなどで感じました。箱根駅伝をはじめとする大会は運営面を含めてチームが出場するのにいろいろな方々の協力がないと成り立ちません。そのような関係者の方々に感謝の気持ちを持つという根本的な部分からチーム内の意識を変えて結束し、結果的に各選手のメンタルの立て直しができたと思っています」

――9区吉田(周、3年)選手と10区岸本(遼太郎、2年)選手の走りをどう評価するか?
「2人とも、いい走りをしてくれました。7区、8区が流れに乗れなかったのもありますが、8区終了時点で城西大学とは3分近い差がありました。ただ、諦めずにいけば届く範囲だと思っていた。攻めた姿勢や結果がないと来年の101回大会に繋がらないので、再建するためにも10区の次に11区がいるという思いで、2人には前半から突っ込む走りをしてもらいました」

――いい選手が残るが来年度の手応えは?
「駒澤大学も青山学院大学もレベルが高いので、そこに挑戦できるようにこれから強化していきたい。そのためにも今回のレースを通して自分たちのチーム内で走力の優劣をつけてしまう、という思い込みの壁を壊すことができたのではないかと思っています。すべてが大切な区間であり、全員がエースになるという自覚を持ってもらうこと。2区ならば66分台、9区、10区であれば68分台で走らないと勝負できないんだ、という意識を各選手が持たないと、駒澤大学や青山学院大学に追いつくことはできないと思っています」

――結束というのは松山(和希、4年)選手を中心に進めたのか?
「松山だけでなく、4年生と距離があったのは事実。だが、そういったところを埋めながら、スタッフ同士、スタッフと選手間、選手同士、やはりチームが1つにならないといけない。個々の力をあげることも大事ですが、まずはチームとして結束していかないと箱根駅伝は戦えない。コロナもあって崩れた部分はあったのでそういった部分を見直した1年でした」

――監督の中で上位2チーム(青山学院大学、駒澤大学)との距離感は感じている?
「距離適性が異なるため出雲、全日本では駒澤大学のように10000mが速いチームが有利ですが、箱根駅伝は特殊な部分(山区間)が入ってくる。青山学院大学は箱根駅伝に合わせている。我々も箱根駅伝に合わせていきたいなと思います」

――12月23日に記録会に参加した意図は?
「2区、9区は強度の高い練習をしないと通用しないと思っていて、自分が実業団時代に10日前に強度の高い練習をしていた経験もあったので、記録会に参加しました。松山はレース勘がなかったのに加え、どこか自信がなさそうだった。記録会に参加して、これだけ他校と勝負できることを感じてもらいたかった。他大学に東洋はできるところをアピールしたかった。他の調整も進めながら記録会にも参加したことで今までよりは攻めた調整をしました」

――気持ちの面でも立て直しをしたのか?
「打倒駒澤大学の目標に近づくためにはそういった調整が必要だろう、と考えました」

――選手たちは驚いていなかった?
「そういうものに対して逃げずに、信じ抜く力をつける。監督の私がメニューを決めていますが、そのメニューを信じないと、いい練習をしていても本番で自信のある走りができない。調整ばかりのメニューでは自信がつかない。あえてどこかで危機感を感じさせることで本当の力にしようとしました。『今までやったことのないことをして、偶然ではない結果を取りに行くぞ』と伝えました。松山を4区で起用して、梅崎(蓮、3年)を2区で使うとはっきり決めていたので、やってよかったと思います」

――世界を目指すという目標と箱根駅伝を目指す目標を並行して行うのは難しいと思うが?
「練習の強度的には箱根の往路、9区で勝負するのは世界を目指すいい土台になると思う。梅崎も今度マラソンに出場する。その中で箱根駅伝の練習が土台になると思う。また、メンタル面で箱根はいい教育の場になる。『走れればいいだろう』というものではなく、時にはサポートに回ることで裏方の気持ちがわかるようになる。誰かのために、という気持ちは代表となった時に視野が広がる。代表になるのがゴールではなく、なった時にかかるプレッシャーに負けないようにしないといけない。その土台となる部分を箱根駅伝で学ぶことが、競技力の向上と合わせて行うべきところだと思う」

――梅崎選手はどこのマラソンに出場する?
「延岡西日本マラソン(2月)に出場させます。まずはマラソンの適性があるかをしっかり判断します。まだ3年生なので、4年生のうちにもう一度狙わせようかな」

――松山選手が抜けたあとのエースの育成をどのようにしていくか?
「確かに松山の穴は大きい。でも、松山がいないからできないというのではなく、誰もが気迫と準備でその穴に向かっていかなくてはならない。エース依存ではなく、自分がエースになるんだという気持ちを持っていくべきで、それを作る良いきっかけになると思います」

――(その気持ちを持っているのは)梅崎選手や緒方選手が該当する?
「今回起用した3年生以下の選手全員がその気持ちを持ってほしいし、2区は俺が走るんだという気持ちでやっていってほしい」

――これからやることの視界が開けたのか?
「そんなに単純じゃないと思いますが、そうですね」

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