第100回箱根駅伝 区間エントリーから有力大学の思惑を読み解く~文化放送 第100回東京箱根間往復大学駅伝競走 実況中継
駒澤大学の史上初!2年連続学生駅伝三冠か?
阻止するのは2年ぶりのタイトルを狙う青山学院大学か、史上最多97回目の出場・中央大学か、駅伝巧者・國學院大學か——
まさに「駒澤一強」の様相を呈する今シーズン。10区間合計217.1kmに渡る襷のドラマ、第100回の記念大会を制するのはどの大学か!?
第100回箱根駅伝の区間エントリーが12月29日に発表されました。
当日変更があるためまだ確定ではないが、各校の陣容がひとまずは見えてきた。
今季1強と目される駒澤大学と、それを追う3大学のオーダーを読み解きます。
第100回箱根駅伝区間エントリー(12月29日発表)
※当日変更は往路復路とも4名、合計6名可能
学生三大駅伝を全て実況中継する文化放送は、新春1月2日、3日に第100回東京箱根間往復大学駅伝競走を実況中継致します。
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盤石に映るのは、やはり前回王者の駒澤大学だ。
注目の2区には、トリプルエースのうち、主将の鈴木芽吹(4年)が入った。2年時の箱根ではケガで悔しい思いを味わったが、「迷惑をかけた分、恩返しをしたい」と強い責任感を持ってチームを引っ張ってきた。2区は「エースが走らなければならない」と言っていた区間。満を持して登場する。1区からの勢いをさらに加速させるに違いない。
また、事前に「1区を走りたい」と話していた佐藤圭汰(2年)は、結局3区に登録された。もっとも決して意外だったわけではなく、佐藤の持ち味のスピードを如何なく発揮できる区間といえる。トラックでは5000mや1500mを主戦場としていたが、今季はスタミナも強化し、11月に初めて臨んだ1万mではU20日本記録を樹立した。前回は直前に胃腸炎になり欠場した分、今回は鮮烈な箱根デビューを見せてくれそうだ。
三本柱の1人、ハーフマラソンの日本人学生最高記録を持つ篠原倖太朗(3年)は補員に登録。当日変更での登場となる。起伏も苦にしない器用な選手だけに、どの区間でも役割を全うするだろう。セオリー通りなら4区。もしくは、出雲で見事なスターターぶりを見せたように、1区に登場する可能性もある。指揮官が1区を高速レースと踏めば、1区か。前回4区でトップに立ってから、今季の出雲駅伝、全日本大学駅伝と21区間連続で全中継所、フィニッシュで先頭を明け渡していない。篠原が1区なら、31区間連続トップもあるかもしれない。
注目は山。5区には経験者の金子伊吹(4年)、6区には5000m13分37秒のスピードを持つ帰山侑大(2年)が登録され、前回5区で好走した山川拓馬、6区区間賞の伊藤蒼唯(ともに2年)がリザーブに回った。山川と伊藤は山で大きなアドバンテージをもたらすことができる2人だが、いずれも今季は平地区間を担える走力が付けている(他校ならエース級だろう)。もともと候補選手の金子と帰山が確実に山をこなし、山川、伊藤を他に回すことができるのなら、いっそう強力なオーダーとなる。
今季安定感抜群でワールドユニバーシティゲームズで5000m銀メダルの安原太陽(4年)も控えに回った。どの区間でも堅実な走りを見せてくれるはずだ。
篠原1区山川4区
中央大学は1区・溜池一太(2年)、2区・吉居大和(4年)、3区・中野翔太(4年)と、序盤は前回と同じオーダーとなった。
前回は3区を終えた時点で先頭を走っている。今回もここで先頭に立つのが狙いだろう。駒澤大学は、今季の駅伝では後手に回るレースをしていない。序盤でリードを奪い、王者を慌てふためさせることができれば、勝機が見えてくる。
2区の吉居大和は、11月の八王子ロングディスタンスで1万mで28分01秒02の自己ベスト。同じレースでは駒澤大の三本柱が圧巻の走りを見せたが、吉居はあえて付いていくことはしなかった。夏に新型コロナに感染した影響もあって出雲は不出場、全日本は3区11位と振るわなかったが、調子を上げてきている。八王子のレースを走り終えた吉居の笑顔からもそれは明らかだ。
中大も山が大きなポイントとなる。2年連続5区で好走している阿部陽樹(3年)を8区に登録し、5区には1年生の山﨑草太を抜擢した。明らかに、片道の勝利ではなく、総合優勝を狙ったオーダーだ。山﨑は12月頭の奥多摩駅伝で、距離は短いものの上り基調の3区で区間新記録を打ち立て、上りの適性があることを証明している。20km超は未知数だが、思わぬ快走を見せるかもしれない。また、阿部が配された8区もストロングポイントとなりそうだ。
ロードに強い主将の湯浅仁(4年)、スピード自慢の吉居兄弟の弟・駿恭(2年)が控えに回っているが、重要な場面に登場するだろう。
湯浅4区
青山学院大学は、2区隠しの戦法に出た(1年生の平松享祐を登録しているが、当日変更が濃厚だろう)。おそらくは、今季絶好調の黒田朝日(2年)、もしくは、前回、前々回と箱根で見事な走りを見せている太田蒼生(3年)のいずれかが起用されるのではないだろうか。
黒田は初の箱根駅伝となるが、出雲で2区区間賞(駒澤大学の佐藤圭汰と分け合った)、全日本は2区2位(区間新)と快走を見せた。いずれもゲームチェンジャーとして、1区の出遅れを取り戻す活躍だった。太田は、前回の4区で駒澤大学の鈴木芽吹とデッドヒートを繰り広げた。
記録と実績では、駒澤・鈴木芽吹、中大・吉居大和が格上に映るが、十分に対応しうるポテンシャルを秘めている。
また、4区には佐藤一世(4年)が入った。16人にエントリーされた5人の4年生のうち、箱根出場経験があるのは佐藤だけ。今季は納得のいかない駅伝が続いているが、11月のMARCH対抗戦で1万mの自己ベストを出しており、調子を上げてきた。往路のキーマンになりそうだ。
前回は山で遅れをとり、優勝争いから後退した。今回は5区に、前々回好走した若林宏樹(3年)が入っており計算が立つ。また、前回区間20位と苦戦した6区には、現時点で野村昭夢(3年)が登録されている。前回と同じ轍を踏まないだろう。
個人的に注目したいのは控えに回っている山内健登(4年)。3年時の関東インカレ(2部)で1500mを制するなどスピードが持ち味。1年時の全日本では6区9位と悔しい走りになり、その後はなかなか駅伝で出番がなかったが、今季は出雲4区で区間賞。全日本も5区4位とまずまずの走りを見せた。最初で最後の箱根駅伝でチームに勢いをもたらす走りを期待したい。
黒田2区太田3区
表彰台を目標に掲げる國學院大學もまた、総合優勝を視野に入れる。
チームの柱となるのは上級生。平林清澄(3年)は2年連続の花の2区を担う。全日本では7区で駒大の鈴木らを破り自身初の区間賞に輝いている。1万mの自己記録も27分台に突入し、前回(区間7位)以上の走りを見せてくれるだろう。
三本柱の伊地知賢造(4年)と山本歩夢(3年)は、ひとまずは控えに回った。当日変更で重要な場面に起用されるだろう。
しかしながら、上位候補のうち、もっとも意外性のあるオーダーだったのが國學院だった。5区は、前回も走った伊地知や佐藤快成(3年)が候補と思われていたが、今季好調の上原琉翔が登録された。密かに準備を進めてきたのか、それとも、アクシデントがあっての当て馬としての登録なのか。前者であれば実績ある選手を差し置いての抜擢なのだから相当期待できるが、後者であれば、上位進出に絶対に欠かせない戦力を1枚失うことになる。
同じく佐藤が3区に登録されたのも意外だった。過去2回好走した山本が今回も3区を走ると予想していただけに、佐藤は当日変更となるのかそのまま走るのか、読み解くのが難しい。トラブルがなかったことを祈るのみだが……。
その他にも、前回1区の青木瑠郁、前回8区の高山豪起、全日本6区5位の嘉数純平(以上2年)が控えに回っており、順当なら当日変更での出場が濃厚だ。
予想外のオーダーに加え、未知数の部分もある。だが、下級生の戦力が充実しているだけに、勢いに乗れば思わぬ番狂わせを見せるかもしれない。
伊地知1区青木3区
そのほか今回、台風の目となりそうな創価大学は2区に留学生のスティーブン・ムチーニ(1年)が20km超の距離では未知数だ。
1区に10000mの創価大日本人記録(28分11秒08)を持つ桑田大輔(4年)、3区に出雲4区区間賞の山森龍暁(4年)と4年生を序盤に配しているだけに、ムチーニの走りが往路の流れを左右する。4区の野沢悠真(2年)は高校時代に宮城県内で中大の吉居駿恭に土を付けたこともあり、前回は5区を担っている。その5区には、今季編入してきた吉田響(3年)が登場。東海大時代に5区を好走している上に、今季は、出雲5区区間賞、全日本5区区間新・区間賞と駅伝で絶好調だ。
6区の川上翔太(1年)は、東海大OBの兄・勇士が山下りの名手だった。往路の勢いを加速させたい。7区に出雲1区5位の石丸惇那(2年)、8区に勢いのある小池莉希(1年)、9区に今季好調の吉田凌(3年)と、現状のオーダーのままで臨んでも強そうだ。
創価大学が区間エントリーで手の内を隠そうとしない一方で、もう1校のダークホース、城西大学は、10000m27分台をもつヴィクター・キムタイ、斎藤将也(ともに2年)を控えに回した。いずれかが2区、もう一方が3区を担うことになるだろう。
5区には区間記録保持者の“山の妖精”こと山本唯翔(4年)が控える。4区の山中秀真(4年)も力があり、2年連続1区の野村颯斗(4年)が好位置に付けることができれば、往路をかき回す存在になりそうだ。
斎藤2区キムタイ3区
区間エントリーを見ても“駒澤強し”と言えそうだが、1区間でもミスがあれば、何が起きるか分からないのが箱根駅伝でもある。
10区間トータルで見た時には、中大、青山学院、國學院、創価にもチャンスはありそうだ。
またしても、駒澤の独走となるのか、それとも阻止するチームは現れるのか、第100回大会も目の離せないレースが繰り広げられそうだ。
TEXT&PHOTO
和田悟志(Wada satoshi)
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この記事の番組情報
文化放送新春スポーツスペシャル 第100回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継
2024年1月2日(月)・3日(火) 7時30分~14時30分
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