雑草と老舗の栗饅頭は一緒!?「植物×企業 生存戦略を考える」
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。
2023年12月4日、11日の放送では、お客様に静岡大学大学院教授の稲垣栄洋さん、一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事の山野千枝さんをお迎えし「植物×企業 生存戦略を考える」をテーマにトークを展開しました。最初は、マスターから雑草に関してこんな質問が…
入山:雑草の生存戦略における大事なポイントって、なんですか?
稲垣:すべての生物にとって大事なのは生き残ることで、それが生き物の勝ちを意味します。「植物たちの不埒なたくらみ」の中に書いたのは、人間に、気に入られること。美味しい、沢山収穫できるなど、人間に気に入られることで残ってきました。一方で、雑草というのは変化していく環境の中でいかに生き延びるか。雑草が得意としているのは、変化に対応することです。
入山:僕もよく言うのは、大企業に勤めて変化しない同じことをやっていれば、安定してキャリアアップする時代が長く続きました。だけど、いまはビジネスも不確実性の時代で、何が起こるかわからない環境で雑草のように柔軟に対応することが重要です。
稲垣:雑草が得意としている変化は、まさに予測不能な変化。誤解されがちなんですが、基本的に雑草は弱い植物で、他の植物と競争すると負けるんです。しかし、予測不能な変化が起こると他の強い植物は強みを発揮できない。その変化さえ乗り越えれば、雑草は成功できます。ポジショニングとして、予測不能な変化に身を置いているのが雑草の戦略の一つです。
入山:ここまでのお話、いかがですか?
山野:中小企業の話をしているのかなと思いました(笑)。風を読むみたいなところは、似ていて長く続いている会社ほど、時代の変化に敏感で、外の英知を取り入れることに抵抗が無かったりします。そうした企業が、一見古臭くて保守的にイメージされがちですが、私の見ている中小企業は違いますね。
入山:老舗で保守的だから、物事を変えていないかと思いきや、意外と時代の流れに結構敏感なんですよね。
山野:例えば創業以来、栗饅頭がずっとウリだったとある和菓子屋さんがあります。ここの栗饅頭を創業以来食べている90歳のおばあちゃんが「ずっと味が変わっていない」と言ってるんですけど、90年前と今の栗饅頭を一緒に食べたら明らかに違うものなんです。時代とともに甘さに対する意識が消費者の中で変わっているんですけど、栗饅頭が変わったらいけない。しかし、まるで変っていないかの如く少しずつ変化を加えて、90年経過したら別物になっているけど、おばあちゃんにとっては同じ味という。
入山:表面上変わってないけど、実はすごい変わっているから、生き残れているということですね。
山野:甘さや和菓子に関しての研究をとてもしているし、トレンドも読んでいるんですよね。
入山:稲垣さん、ここまでのお話いかがでしょうか?
稲垣:僕は、生物の営みと共通しているなと思いますね。長く続いている企業が伝えたいのは、味とか技術ではなく、お客様のための企業理念や家訓で、一本筋の通ったものの中で変化していると思うんです。雑草もまさに同じで…
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本日のお客様
稲垣栄洋さん
大学院修了後、静岡県農林技術研究所などを経て、静岡大学大学院教授に就任。農学研究に携わる傍ら、「みちくさ研究家」として身近な雑草や昆虫に関する著述や講話を行なう。専門は雑草生態学で、これまで植物に関する多数の著書を発売。9月には三笠書房から、見慣れた日常の風景の裏側に迫った
「植物たちの不埒なたくらみ」と小学館から“アンチ雑草魂”のエッセイ「雑草学研究室の踏まれたら立ち上がらない面々」を発売。さらにこれまで、多くの国立・私立中学入試の[国語]の問題にも採用され、3年連続・最頻出の著者とも評されている。
山野千枝さん
大学卒業後、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」などを経て、中小企業の承継予定者を対象に事業開発や業務改善を支援する「一般社団法人ベンチャー型事業承継」を2018年に設立。さらに関西大学で親が商売を営む学生を対象に「アトツギ白熱教室」を主宰。10月には日経BPから「アトツギベンチャー思考社長になるまでにやっておく55のこと」を発売。
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