「完全に“想定内”なんですよ」インボイス制度開始から1カ月 企業で混乱続く
11月9日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、インボイス制度に関するニュースについて意見を交わした。
藤井氏「“働き方改革”って言ってるけど“逆改革”ですよ」
取引先に消費税率や税額を正確に伝えるために導入されたインボイス(適格請求書)制度が先月スタートし、1カ月が過ぎた。消費税の転換点ともされる制度によって、日々の会計実務に想定外の影響も出ているという。
都内の医療機器販売会社で経理を担当する男性は、「会社にとって何のプラスにもならないのに、国に『付き合わされている感じ』がすごい」と不満を漏らしている。企業の経理はこれまで必要のなかった作業が増えていて、この男性は「残業までして準備を進めてきたが、それに見合うだけの税収増があるかと言えば疑問だ」と話した。
また、都内のあるIT会社では、社員同士の交流を目的に昼食代を1人あたり1000円まで補助する制度があるが、10月からはインボイスを発行できる店で食事するよう、社員にお願いしているという。ある女性社員は「以前は小さい定食屋にも足を運んで食事を楽しめたけれど、これからは無難にチェーン店を選ぶことになるのかな。忙しい時間に店に電話してインボイスが発行できるか聞くのも気が引けるし」とぼやいている。
寺島アナ「いまこれを聞いただけでも、かなり混乱を呼んでるようですけども、藤井さん、これは『ほら見たことか』って感じですか?」
藤井氏「そうですよ。これ、記事では『日々の会計実務に“想定外”の影響も出ている』って言ってますけど、完全に“想定内”なんですよ。こうなるってわかっててね。この記事の最初の医療機器販売会社の経理の男性が言ってるように『何のプラスもないのに、なんちゅう無駄なことさせられてんねん!』と。『こんな無駄な労力を僕だけじゃなくて全部の会社でやってるわけなんだろう?』と。『これを国民全員にやらせて、それで“税収増”言うたら、ちょろっとだけなんだろう?』と。『何してんねんこれ!政府は何を考えてるんだ?』と仰ってるわけでね、まったく僕もそう思いますよね。だからこれで大きな経済損失ですよ。“働き方改革”って言ってるけど、これは“逆改革”ですよ」
寺島アナ「そうですよね。忙しくさせてね? 複雑にさせてね?」
藤井氏「しかも、もう一つの例のほうは『インボイスの出せるお店に行ってくれ』と会社が言うのはなんでかっていったら、たとえば1000円の昼食代がかかったとして、会社の経理からしたら『社員が何か言ってきよった』と。『領収書もらった』と。これインボイス付いてなかったら『付いてへんやないか』と。『91円損するねん、うち』と。これ9%損するんですよ、会社は」
寺島アナ「自分のところは出さなきゃいけないっていうことですもんね?」
藤井氏「そうそう。経理やってる人はすぐわかるとは思いますけども、インボイス番号付き領収書とそれ以外の領収書、インボイス番号付き領収書が来たら“アタリ”な感じがするんですよ。で、番号が付いてなかったら“ハズレ”って感じがするんですよ。
これ、なんでかっていったらインボイス番号付き領収書だったら消費税を財務省に支払うときに控除できる。番号付いてなかったら控除できないので、1万円だったら900円損するんですよ。インボイス番号が付いてるか付いてないかだけで。会社なんかだったら10万とか使ってるんだとしたら、インボイス番号が付いてる10万と付いてない10万だったら、付いてなかったら9100円損するんですよ。厳密に言うと9099円ですね。だから会社は『インボイス番号付きを集めてこい』って言うんですよ。
ってことは、インボイス番号を発行できない普通の小っちゃな定食屋とかは客減るということなんですよ。めちゃくちゃいじめてるわけですよ、財務省は。大企業の経理の人たちには無駄な仕事させて、小っちゃな定食屋さんたちはお客さんがどんどん減っていくと。それで、しょうがないからインボイス入ったら『はい、入ったから売上の9%を出せ』と言われるわけですよ。最悪ですね」
寺島アナ「そうですね。あと、もう一つは『なんでこの時期やったんだ?』『決まってたから』って、この時期じゃないですよね?」
藤井氏「そうですよぉ。『増税メガネじゃない、減税メガネだ、俺は!』って言いたいんやったら、インボイスやめとけよっていうことですよ」
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