「修復するより、優しくとどめる」。ロバート キャンベルが感銘を受けた異色のアート
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。7月30日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、水戸市で開催された現代アーティストの個展で感銘を受けたお話など、この一週間の話題について語った。
ロバート キャンベル「先週の土曜日に、茨城県水戸市の水戸芸術館現代美術ギャラリーで初日を迎えた竹村京(けい)さんという女性アーティストの個展に出かけてきたんです。
ひらがなで『うごくせかい』というタイトルの個展ですけど、この竹村さんは日本の絹の生糸を使って刺繍をする、刺繍でいろんなことを表現するかなり異色の現代アーティストなんです。
彼女はですね、折々に壊れたり欠けたり、あるいは一度なくしてしまってまた見つけた、普段は遠くに追いやられたり捨てられていくものを手元に置いて、修復はしないんです。
『修復シリーズ』というタイトルで作品をずっと作っているんですが、絹のこの半透明な生地、布を、例えば壊れて欠けた茶碗があるとするとそれをくるんで、その上にすごく綺麗な刺繍をして、割れてしまって普通は捨てるんだけれども、誰かの記憶とか、誰かの思いっていうものがそこにあるっていうことを、見ている私たちはそれぞれ共通の記憶は無いんですけど、何か寄り添えるような作品をずっと作っているんですね」
武田砂鉄「はい」
キャンベル「彼女は昔ベルリンに十数年暮らしていて、そこにいた時から日本の京都のすごく綺麗な絹糸を取り寄せて、自分のアパートの中で壊れたものだとか、友達から譲り受けたものを『修復する』と言って、作品をずっと作っているんですね。
近年非常に世界で評価が高い日本の現代アーティストですけれども、今回の『うごくせかい』では、例えば修復された湯呑みですとか、コーヒーカップですとか、眼鏡ですとか、二羽の鶴が描かれた朝鮮の茶碗ですとか、あとオールドバカラですね、すごく高価なガラス品が神戸の地震の時にちょっと欠けたり壊れたりしたものを譲り受けて、優しく絹の布にくるんで、刺繍を施して、『それがある』っていう。
『とどめる』っていうか、『仮留め』をするっていうことを彼女はおっしゃってるわけですけれど、大変興味深いんです。
そしてやっぱり今の時代、いろんなものが戦争や、一昨日の熊本の地震もそうですけど、壊れてしまってそれが瓦礫となって捨てられていくと。
何があってどういう人たちの命がそこに込められてるかっていうことを結構ないがしろにしたり、前に進むためにはそれはしょうがないっていう部分もあるんですが、そういうメモリアルのようなものを、とっても綺麗に作っていくっていうことをやっておられるわけですね」
武田「壊れたものを直すっていうことも大事ですけど、壊れたものをそのままにとどめておく、優しく包んでそのままにしておくっていう……」
キャンベル「そうなんです。で、それが一つ一つ、一個だけ見ると説明があって文脈が読み取れて『なるほど、こういう志(こころざし)だな』と。今回の個展ではかなりたくさんの作品が展示されていて、部屋から部屋へ歩き回りながら、私の若い時・小さい時におばあさんが使ってたものだとかいろんなものを思い出したりして、大変感動したんです」
ロバート キャンベルさんはこの後も、竹村さんの個展で出会った数々の作品のお話や、奈良県のNPO法人「おてらおやつクラブ」という団体の活動について、詳しく語っています。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。
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